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秋の章・18話(閑話・クラウスとツユリの精霊師退治)

非常に残酷(私が書ける最大限)な表現があります。

見なくても、問題はありません。


苦情は受け付けかねます。



大陸の中央に、大樹を中心とした大きな森がある


ただの森なら何も珍しくは無いが、その森には通常よりも遥かに多くの精霊が棲み、流れる川は透明度が高く、木の1本1本が太く大きい


・・・・・・・故に、そこは精霊の森と呼ばれていた



大樹は精霊を生み、豊かな森は精霊を育んだ


精霊の森には、精霊と共存する者達が集まり、やがて集落を作った


集落に住むエルフや巫女は、静かな、何者にも脅かされる事の無い生活を送れるようにと精霊と協力し、森を隠す巨大なドーム型の結界を張っていた


何年も何代も、年数を重ねるごとに強化されていく結界は、決して破られる事は無いと言われていた・・・そう、思い込んでいたのだ


それが、驕りだと知った時にはすでに遅い




「ああ、漸くこの時が来た」


結界を破壊することなく、静かに現れたその一団に精霊の森の住民達は固まった


現れた一団が何者なのか、住民達はよく知っていた・・・だからこそ、驚きに動きを止めたのだ


沈黙を破ったのは、誰だったか・・・・・・・・


「アベルの、魔王・・・!」


その声に、はじかれたように動き出したのはエルフの戦士達だ


戦闘経験から、脳が警鐘を鳴らしたと同時に女子供老人を素早く結界で囲むと、息つく間もなく結界の外に風の精霊の力を借りて移動させた


「構えろ!!!!」



静かだった森は、あっという間に騒がしくなった




「どうやって、この森に!!」


「うん?ああ確かに結界は厄介であったがなぁ・・・


空間移動は儂等の十八番じゃぞ。


場所の見当さえ付けば、空間を歪ませ結界を越えることなど造作も無い事」


弓矢を構えた壮年のエルフに、クラウスは笑って答えた


「お前達は儂等の周りには現れぬからな。


用心を重ねておったようじゃが・・・。


用心を重ねるならば、完全に情報屋の仕事も絶てばよかったのだ。


・・・・・自分達が姿を見せなければ精霊は不可視のものじゃ、精霊が捕らえられる事など、もっと言えば、棲みすみかの居所がバレる事はないと思ったか?


・・・残念ながら、シュレイアをこそこそ嗅ぎまわっていた事を気付かれた段階でこの未来は確定しておったのだよ」


「シュレイア・・・!!」


目をむくエルフに、クラウスはお喋りは終いじゃ、とエルフに察される事無く握っていた妖しく光る美しい剣でその首を飛ばした


「シュレイアには感謝せねばなるまい。のぅ?ツユリ殿。


シュレイアが目立ち始めた、故にその情報に大きな価値が生まれ、シュレイアのガードが固いからこそ通常手段では情報を得る事ができなかった。


欲を出した精霊師が情報を集める為に不可視の精霊を放ったからこそ、その精霊を捕らえ、この場所を知る事ができたのじゃ


また、当代の蓮の皇帝が仙術を得手えてとする劉殿だったからこそ・・・じゃな」


血飛沫の中クツリと笑ったクラウスは、倒れ伏した2つに分かれたエルフを邪魔だと、魔術で骨も残さず血液ごと燃やした


「クラウス殿の言う通り、だねぇ・・・シュレイアには借りをまた作ってしもうたかぇ」


クラウスの問いかけに頷いたツユリは、細身の水で出来た剣で背を向けたエルフの足を突き刺した


絶叫が森に木霊する


「さあ、逃げるな・・・向って来やれ・・・。


・・・・その覚悟は、出来ているだろう?


因果応報・・・やられればやり返すのがこの世の常だぇ?」


ツユリはそう言って、背筋が凍るほど美しい冷たい微笑みを精霊師達に向けたのだった






ツユリにとって精霊師は、ツユリにとって特別な存在である人魚族乱獲の原因であり憎い存在だった


クラウスにとって、精霊と精霊師は相容れない水と油のような関係であった上に、友人を切欠に自身も大切にしている、シュレイアにちょっかいを出した生かしておけない存在だった



「水精よ!!万物を貫く千の矢となり射殺せ!!」


若いエルフの戦士が力強い声と共に放った千本もの水の矢に、対峙していたクラウスたちの間から動じることなくツユリが一歩前に出る


「ワタクシが居ると認識していながら、水を向けるか。


それでも情報を売る生業のものか」


鼻で笑ったツユリは、向ってくる水の矢を腕を突き出すことで霧散させると、すぐに霧散させた水を集めて作り出した水で鋭く巨大な槍を作り出す


鮮やかに、笑った


「己が放った力で貫かれるがイイ」


ツユリによって返された水の槍は、盾を貫きそのまま矢を放った戦士の、隣の女エルフを貫いた


・・・その余りの鋭さと速さに、腹に大きな風穴を開けた女は、悲鳴を上げることなく絶命し吹き飛ばされ地に転がった


「ユリア!!!」


「ワタクシの大切な子を下衆に売ったのだ。相応に報いを受けてもらうぇ?


・・・大切なものを己の放った力のせいで惨く殺される気分は、どうだ?」


「っ貴様よくも!!!!」


「一匹死んだところで、激情していてはこの先すぐ壊れる事になるぞ?


のぅ?クラウス殿」


「全くじゃ。これからが本番じゃろ?


・・・ウェルチ、フェルト」


ころころと、愉快だと笑うツユリにクラウスもニカリと笑って、あるモノを取りに行かせ戻ってきた部下2人を呼び寄せる


「なっ!!!??」


精霊師たちは、驚き、目を見張った


ウェルチとフェルトが運んで来た魔力で出来た球体に押し込められているのは、紛れも無く逃がしたはずの女子供だった


「老人は邪魔だったので、とりあえず殺してそこに転がしましたが・・・?」


軽い口調で報告したウェルチが指差す方向には、バラバラになったイキモノだったものが赤黒い水の上に重なっていた


「きったないのぅ・・・」


「灰すら残さず消してしまおうかとも思ったのですが、それでは意味が無いかと思いまして」


「うむ。まあ効果は抜群かのぅ?」


絶句し顔色を紙のように白くした戦士たちを見て、クラウスは満足そうに笑った


「っ貴様らよくも翁達を!!!!!」


「わめくだけは、1人前かぇ?ワタクシ達はずっとこの機会を待っていた。


楽に死ねると思わないことだ」


場違いなほど美しい微笑をしたツユリは、そのまま球体の中の子供を1人掴み取り出す


魔力にてられぐったりとする子供は、次の瞬間赤に染まった





「っあ、あぁあああああ!!!」


戦士の絶叫が響く中、一歩離れて立っていたホズミが、歌を歌った


それは、人魚の唯一の攻撃である声による滅びの歌と呼ばれている死を呼ぶ歌だった


絶叫に負けぬよう大きく響き渡る声で、滅びを招く


樹木は徐々に枯れていき、空気も淀み川は濁る


・・・同胞の為にホズミは歌った


「(屈辱と苦痛の中死んだ同胞よ、安らかに眠りなさいな。


・・・我らが父であり王が敵を取ってくれたわよぅ)」


ホズミの頬を幾筋もの涙が流れたが、関係ないとばかりに歌声を響かせた







「呆気ないのぅ」


結局騒々しかったのも僅かの間だけだった・・・大方の戦闘が終わってクラウス達アベルの面々は手を完全に止めていた


「魔王陛下とカラクサ国王が共闘したのです。それも当然でしょう」


「しかし・・・よくまあ、この程度で喧嘩を売ったものです」


クラウスの溜息交じりの呟きにフェルトが仕方ないと苦笑し、ウェルチが嘲る


「己を知らぬというのはイタイものじゃな。しかし、ツユリ殿たちは未だ思いっきりやってるのぅ」


「相当、鬱憤を溜め込んでいたのですね」


離れた場所で、未だに精霊師を嬲っているカラクサの面々にクラウスは苦笑する


「レイン達には見せれんナァ」


「其れを言うなら、先ほどまでの魔王陛下もですね」


「・・・余り親しい者に戦闘は見られたくないな」


「左様で御座いますね」


「・・・さて、これでシュレイアも少しは落ち着くじゃろう。


・・・可視できるものが奪える情報など高が知れている」


「そうですね・・・・・・そろそろ撤収なさいますか?」


「うむ・・・フェルト、生き残りがいないか結界内を確認してこい。


残っていたら面倒じゃ。


逃げた気配は無かったが、万が一逃げていても困るのでウェルチは結界の外を探って来い。


儂はツユリ殿に声を掛けてくる」


「承知いたしました」


「御意に」


掻き消えた2人を見送って、クラウスはツユリの元に向ったのだった







冬の近づいたとある日、大きな森が一夜にして全焼した


焼け跡からは何一つ発見されなかったという

2015.1.17にツユリにとって精霊士~の文の句点の位置を変えました!


2015.1.23にタイトル変更。対峙→退治

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