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秋の章・15話




クラウス達がシュレイアに訪問した翌朝、仙術によって一時的に降っていた雨もすっかりやみ、秋の青空が広がっていた


そんな天気の良い朝から、クラウスとツユリは非常にご機嫌で、朝食を一緒に摂っていたレインとキリク、アリアは揃って首を傾げる


「何か良いことでも御座いましたか??鼻唄でも歌い出さんばかりの機嫌の良さですわね」


アリアが首を傾げて聞けば、クラウスはにんまりと笑う


「ふふん、よくぞ聞いてくれたアリア!」


言いたくて堪らない!と瞳を輝かせてその場に立ち上がるクラウス


・・・いつもならウェルチやフェルトが食事中ですよ、と諫めるのだがそれも無く、珍しいとレインが二人を見れば、二人ともクラウスと同じく嬉しそうな雰囲気で、あら?とレインは首を傾げる


「コレを見てくれ!!念願叶って捕らえた羽虫じゃ!!」


ジャーン!!とクラウスがどこからともなく鳥籠を出し、レイン達に見えるように高く掲げた


入っていたのは、沢山の1㎝程の金色の蝶のようなイキモノだった


小さな鳥籠に、寿司詰め状態で入れられているそのイキモノに、レイン達は目を見開いた


「・・・それは、一体・・・?」


「ぎゅうぎゅう詰めですわね」


目を瞬かせ、クラウスの掲げた鳥籠の中身を指差したのは、キリクだ


「見た目は、蝶のように見えますが・・・なんだか、違和感が」


鳥籠一杯に入っているイキモノに、アリアも頬を引きつらせる


「金の蝶なら、美しいと思うのかも知れませんが・・・ソレを見てもそんな感慨は浮かばないし。


一杯詰め込まれているからかもしれませんが・・・まさかソレって・・・」


レインが、ふと、クラウス達の機嫌の良さに、イキモノの当たりを付けた


「ご名答、コレは、精霊じゃ。


それも生まれてそんなに時の経っていない、自我の生まれていない赤子のようなモノ。


赤子とは言っても、情報の収集は十二分に出来るがな」


「通常は姿が見えないが・・・劉殿の治める蓮国の仙術は姿の見えない妖を見えるようにする事も出来る。


そして、この鳥籠に視認出来るよう札を貼ってもらい、妖用の結界術を張ってもらった。


劉殿がいてくれて本当に良かったよ」


嬉しそうに、しかしどこか邪悪な笑みに、レインは目を見開いて精霊を見た


「・・・とにかく、捕らえた精霊を使えば、精霊師の身元を割ることが出来る。


住処が分かる。


漸く借りを返せると言うことだぇ・・・。


念願叶うまで、ほんに、後一歩まで来た。


まさか初日に捕らえることが出来るとは、ワタクシ達の運が良いのか、コレ等が阿呆なのか・・・。


ともあれ、嬉しい限りだぇ」


ふっふっふっ、と愉快だと笑うツユリの目に隠しきれない獰猛な光が見えて、レイン達は小さく息を呑んだ


「ワタクシが怖いかぇ?」


「そうですね、多少・・・。皆様の好戦的な鋭い眼差しは見る機会が余りありませんもの。


慣れないから、余計でしょうか?」


「肉食獣のような瞳ですよ」


レインとキリクが苦笑混じりに言えば、アリアも頷き同意を示した


「そうか、すまぬ、すまぬ。漸くか、と思うとついな」


「そう・・・ワタクシにとって待ち望んだその時は近いかと思えば気も逸る。


だが、そうよのぅ・・・まだこれから調査に多少の時間も掛かるであろ。


気持ちは落ち着かせねばな」


笑うクラウス達に、レインはでは、と声を掛けた


「?」


「まだお時間があるのでしたら、せっかくです。


ツユリ様リクエストである塩虫の資料をご覧になりますか?」


「なぬ!それは見たい是非見たい!!」


「儂も気になるのぅ」


「それは俺も気になるな」


レインの提案に、途端に瞳を輝かせるツユリ・・・その瞳にあったギラギラとしたものは好奇心に変わっていた


次いでクラウス、劉も声を上げ興味を示す・・・声に出さないが、従者達も同意見だと瞳に好奇心を宿していた


「ふふ、ではご案内しますわ」


「??此処ではないのかぇ??」


小首を傾げるツユリに、レインは頷いた


「ご案内しますわ。当家の資料庫に」






シュレイア家最深部にあるのは、大部屋2つぶち抜いて作られた巨大な資料庫である


領地の農作物に関する資料から、塩虫のような世界に散らばる虫、獣に関する資料、国土の資料、歴史資料などなど・・・


その数は非常に多く、クラウスは見事だ、と呟き笑った


「これは我々が見ても大丈夫なのか?」


「ええ。機密があるような文書、資料は違う場所に保管してあります。


ここは、大丈夫です。此処にある資料は、大半が写しですしね」


「写し??」


「各国の資料を写させてもらっているんです。勿論、許可を頂いて。


害虫や害獣は、特に気候によって移動ルートが変わったりしますから周辺国と協力して資料を纏めて入るんですよ。


塩虫も、先日来ていた各国と資料を何年も協力して作っているんです。


あとは、伝染病、風土病などもそうですね。情報の共有をしています」


「なるほどのぅ・・・これは??」


ツユリが手近にあった紐で綴じられた古びた本を取り出し首を傾げる


「その棚はシュレイアに関する資料ばかり集めてあった筈ですね。


ああ、家系図ですわ。


開領約300年、シュレイア家がエーティスに来て約500年の歴代の主立ったご先祖様達が載っていますよ」


「ほう!!」


「と言うことは、知った名前もあるねぇ」


「塩虫の資料もだが、ソレも見たいな」


三人共に目を輝かせるので、レインはクスリと笑って奥を示した


「それなら、奥の歴代当首の姿絵も楽しんでいただけるかも知れません。


塩虫の資料も奥にありますし、椅子や机もありますから、奥へ行きましょうか」


「この資料だけでも興味深いが、姿絵もあると!それは是非見たい!!」


レインの案内に、国主達はぞろぞろと足取り軽く移動をしたのだった



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