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秋の章・4話


翌日、予定通り領主会議は開催された


広い会議専用の部屋に、長机が置かれ、黄龍、緑龍、国府官1人、更に12人の領主と次代領主であるレインとサラが席に着き、各領主の後ろに1人ずつ護衛役が起立して待機する


長机の直ぐ横に、短い机があり、そこには2人の国府官が座った


定刻になり、長机に着いていた国府官が立ち上がり、一礼する


「それではこれより、領主会議を始めます。


司会進行役は、わたくし、国府長官アロウェナが勤めさせて頂きます」


そう言うと、焦げ茶の髪を一纏めにポニーテールにした細身の男がもう一度頭を下げた


「記録係の国府長官付き秘書官のオウルと申します」


「同じく国府官のシリウスと申します」


続いて、短い机に着いていたオウルが頭を下げ、短い銀髪の一見して武官にも見えるガタイの良い男、シリウスが頭を下げた



領主に治領を任せているエーティスでも、国府は存在する


各領地から上がってきた税を国庫に納めたり、資料の保管や国法の制定、国同士の外交で八龍の補助にまわったり、儀式儀礼祭典などや年に四回行われるパーティを黄龍指揮のもと準備を行ったりと、直接政治に関わるのではなく、裏方作業が中心だ



それでも、国府官は国中から厳正な試験と審査のもと選ばれる所謂エリート集団である


「では、初めに年が明けると同時に領主の交代が2組ありますのでそれぞ

れ、挨拶を願います」


アロウェナの言葉に隣り合っていたサラとレインが立ち上がる


「年明けと共に領主に就任いたします、サラ・クレマと申します。


若輩故至らぬ点も多々あるとは思いますが、以後宜しくお願いいたします」


流石に、公の場では領地の訛りは隠しているサラに緊張は見られず、目には光が強く宿っており先が楽しみだと黄龍は内心で笑う


サラが挨拶を終えて座ると次はレインの番だ

室内の目が、サラ以上に集まった


「(この方が、レイン。


リオルと停戦に持ち込んだ次代シュレイア家領主ですか・・・)」


アロウェナは、すっと目を細める


国府でも随分話題に上ったが、珍しい事にシュレイア出の官がいない為詳しいことは分からないままだった


「(調べれば調べるほど、謎は深まる不思議な領地とは・・・


一度、私自身、調べに行きたいものですね)」


アロウェナがツラツラと考えている間にレインは口を開く


「レイン・シュレイアと申します。


セルゲイに代わり、領主に就任いたします。どうぞよろしく、お願いいたします」


一礼して正面を向いた顔に、室内の何人かの目が釘付けになった


「(容姿は平凡ですが、随分良い顔付きですね。


静かな水面のように穏やかな瞳も、目を惹く・・・どうやら数人、彼女の目を見て興味を深く覚えたようですし・・・


物怖じもしていませんし、サラ・クレマ同様、意志の強そうな方だ・・・


新たな領主二人の先が楽しみですね)


挨拶ありがとう御座います」


レインが着席すると、それを確認して、アロウェナは口を開いた


「では、早速ですが、皆さんご存知の通り、ヴォルケは現在壊滅的ダメージをおっております。


これに関し、複数の領主からヴォルケ領主の交代の声が上がっておりますが・・・ヴォルケ領主、何かありますか?」


アロウェナの言葉にレインに集まっていた視線が立ち上がったヴォルケ領主、トレーネ・ヴォルケに向かった


「はい。


この度は黄龍様並びに八龍様には大変ご迷惑を御掛けしましたこと深くお詫び申し上げます」 


云十年昔は社交界の華と言われたろう老婦人は謝っているとは思えない程、堂々とした悪びれていないもので、レインやサラも含め領主達は一部を除き眉間に皺を寄せる 


「さて、皆さん何か御座いますか?」


「発言させて頂く」


アロウェナの言葉に手を挙げ、立ち上がったのはゼウスだ


50を過ぎた年の割に、筋骨隆々とした武人でもあるゼウスはギラギラとした目でヴォルケ領主を睨む


「この度の被害がこれほどまでに広がった、全てはヴォルケの行動や領制で後手に回ったせいだろう!


聞けば自領の民の人数すら正確に知らないというではないか!!


そんなヴォルケに領主を任せて良いのか!」


前半は責めるように、ヴォルケに言って、後半は他の領主達に訴える


ゼウスの力強い言葉に、領主達は思わず隣同士で顔を見合わせざわついた


「ヴォルケ領主は、領主を返上すべきだろう」


アーノルドが静かに言えば更に室内はざわつく


「お待ちください、それは・・・!」


「ヴォルケの領主返上に賛成のものは挙手してくれ!」


ほんの少し顔色を変えたトレーネを一瞥することなく続けたゼウスは室内の領主達を見渡し、アロウェナを見ると視線を受けたアロウェナが引き継いだ


「・・・・では、ひとまず決を取りたいと思います。


意見や反論はそのあとでお願いします。


・・・ヴォルケ領主返上に賛成の方、挙手して下さい」


アロウェナの言葉に、そろそろと、或いはびしっと挙手をしていく領主達


「(手を挙げていないのは、アズナス領主だけとは・・・)」


その様子に、トレーネは驚き、目を見張った


「・・・手を下ろしてください。


では、それぞれの意見を伺いたく思います。


まずは手を挙げなかったアズナス領、何か言いたい事、伝えたい事があればどうぞ」


アロウェナの言葉に、視線が一斉にアズナス領領主、フィオナ・アズナスに向けられた


トレーネより幾らか年の若い老女は、ゆっくりと立ち上がった


「申し上げます


・・・私が思うに、領地の返領は罰が重すぎるのではないでしょうか・・・?


ヴォルケは古参3家の一翼を担い、国でも重要な立場に立つ事も多い。


それらの功績を踏まえますと、重たすぎる罰だと思います」


「・・・では、続いて、領主返領に賛成する方々、何かヴォルケ領主、アズナス領主に対して意見はありますか?」


「では、言わせていただこう」


そう言って手を挙げたのはアーノルドやゼウスではなく、四領の一角、ベルンの領主、<風竜族>竜人のアルバート・ベルンである


・・・ちなみに、<風竜族>というのは、名の通り、風を操る(とはいえ八龍は別格だが)竜族のことで竜人とは、常に人型で居る種族の事だ


四領の領主は何れもこの竜人族である・・・


銀髪の絹糸のような髪を緩く三つ編みにして背に垂らしたアルバートは、紫の瞳を鋭くさせ、トレーネとフィオナを睨む


「アズナス領主よ、貴方は言ったな・・・?罪が重すぎると!!


貴方もヴォルケ領主も領主を何だと思っているのだ!


黄龍様から任じられている任を蔑ろにしておきながら、重い?軽すぎるだろう!!」


「私も申し上げるが・・・」


そう言って手を挙げたのはヨーゼフ・キーマ・・・地竜の竜人である


金髪に褐色の肌のヨーゼフは、眉間に皺を寄せ、老女2人を睨んだ


「領地の被害、人的被害、信用問題、資金問題等々を鑑みても、事態は重く、ヴォルケ領主は重大な過失を招いたとして、領主解任は勿論のこと、連帯責任として領地返上、領主位返上は妥当な罰だろう」


「功績?


そのようなものは所詮、過去のものでしかない。


現状、ヴォルケ領主は領主に相応しくないのだ。その一族も同様に、だ!」


畳み掛けるように、火竜の竜人であるシーザー・シュペルツは橙色の髪と同じ瞳に苛立ちを浮かべながら吐き捨てた


四領最後の1人、シヴァ・ソーレは、眉間に皺を深く刻み、蒼い瞳は苛立ちと怒りを宿しており、緩くウェーブした藍色の髪を掻き上げ指はトントントントンと苛立たし気に机を叩いた






そんな四領の様子を見ながら、サラは唸る


「ヴォルケの襲撃時の対処も問題やけど、何より、遅れすぎている復興が大問題やンなぁ?レイン」


ざわめく室内でこっそりとレインに話しかけるサラに、レインも頷いた


「何時までも復興の目処が立たなければ、エーティスという国の評価に繋がってしまうわね。


ヴォルケは貿易の玄関口だったから、その分、よく外国に見られているし」


「やんねえ


・・・そうなると困った事になるん、ハレイとウチ等ん所以外の領地やん」


「うん、まあ・・・そうなんだけれど。


この現状でどれほどの人が其の事にまで気付いているか・・・」


ヴォルケの処分も重要な事かもしれないが、それに目を向けすぎているような気がするわ・・・とレインは溜息を吐いた


「実際、私が取引している幾つかの国は問い合わせて来たし・・・」


「下手に大きい所やから広まるんも流石に早いわけか・・・」


レインとサラ、2人で唸っているその様子に気付いたのは黄龍だった


他の領主達がトレーネとフィオナを責める中、2人の空間だけ周囲からどこか浮いているのだ


黄龍は首を傾げながら口を開く


「レイン、サラ。2人とも何か別に気になる事が有るようだな・・・?


どうしたのだ?」


黄龍の言葉に部屋のざわめきがピタリと収まり、領主達の視線がレインとサラに集まった


気付かれた事に驚きつつ、顔を見合わせる


「(言ったほうが良いかなぁ)」


「(良いわね。きっと)」


「・・・・では、その、申し上げますが・・・」


そう言ってサラが、躊躇しながら口を開く


「・・ヴォルケの被害の最も酷かった場所をご存知でしょうか?」


「?ライ山の麓だろう?」


そう言って首を傾げたのはレオナードだ


「ええ、まあそうなんですけど・・・


では、ライ山の麓に何が広がっているかはご存知ですか・・・?」


「なにって・・・・・港・・・?」


レオナードが更に首を傾げると、レインが続いて頷きながら口を開いた


「そうです。ライ山の麓にあるのはエーティスでも一番の規模を誇る港町です。


貿易港ですね。


この度のリオルとの戦闘で、ライ山の麓のみならず、大きな建造物というのは軒並み破壊されていますが、その際たるものが港です。


ヴォルケは、海に面していますから、港も多く、また、それぞれが大きかった事からエーティスの玄関口としても有名で、我が国ではハレイ、シュレイア、クレマ以外の領地の貿易の要でもありますよね??


ですから、ヴォルケの復興が遅れる・・・ひいては港の修繕が遅れますと、国の殆どの地域で貿易が止まってしまう事になるんじゃないかな・・・と」


「それは・・・!」


声を上げたのは、誰だったか・・・ざわめきの中、セルゲイが静かに、けれど存在感を持って話出した


「・・・・・・・そもそも領制と言うのは非常に慎重に決めなければならないものです。


拘束力が強く、領主や八龍様といえども撤回は容易く出来ない・・・


それなのに、此処数年、余りにも簡単に、ヴォルケの領制は増えていきました。


元々国法によって、領と言うのは良くも悪くも確立されていますからね。


領制、国法により、港の修繕などはヴォルケがヴォルケである限り、ヴォルケ自身が行わなければなりません。


果たして、今のヴォルケにその力がありますか?」


セルゲイの、穏やかな、けれどまっすぐな瞳がトレーネを貫いた


「・・・仮に、すぐに領地を返領させたとして港の復旧にどれ程掛かる」


「イチからの作り直しとなるとして、早くて3年、長くて5年でしょうか」


「そんなに待っていられるわけが無いぞ」


ゼウスの言葉に、ヴォルケの港を利用していた領主達は渋い顔をする


「選択肢は、3つですね


1つ、ヴォルケの自力復興を待つ


2つ、ヴォルケ領地返上の後、各領地から資金を共同出資し港を作ること


3つ、それぞれ独自に新たな貿易ルートを確立させる事


1も2も時間が掛かりますから、3がベストでしょうか」


サラが指折り案を上げていくが領主達の表情は渋いままだ


特に、山と他領に囲まれた領地は3の案すら厳しいのである



「陸路で貿易が可能なら、良いのですが、中には貿易ルートを他に持たない領地だってあると思うのです。


ですから、ヴォルケの処分も勿論考えなければならないと思いますが、平行してこういった問題も解決策を見つけなければならないのではないでしょうか?」


レインとサラの言葉に、再び室内はざわめきで溢れる


黄龍はその様子をじっと見つめた後、レインとサラに向って再び口を開いた


「1つ聞くが、例えば、港の修繕の間、ハレイかクレマ、シュレイアの港を他の領主達が借りる事は出来ないのだろうか?」


「・・・恐れながら、あの内海から近隣諸国のすぐ側を通って外海に出る事が許されているのはシュレイアとクレマの領旗が掲げられた船のみです。


何年もかけて近隣諸国と友好関係を築いてきたからこそなのです。


勿論、領旗を貸す事は出来ませんし、一朝一夕で新たに関係が築けるとも思えません」


首を振るレインにサラも同意を示す


安易に此処で頷けば、全領地が共倒れになる可能性が出てくるのだ・・・


そこまで危険を冒す事は出来ないし、其の余裕も無い


「ウチは確かに港はありますが、小さいですし、何よりハレイに一度運び込む為にはかなりの労力が必要です。


一番近い領地はバルクスですが、バルクスは海側には高い山々と崖がありますから余計ですね。


海路を暫く閉じ、陸路で貿易をして、その間に港の修繕をするしかないでしょう」


レオナードの言葉に、黄龍はそうか・・・と頷いた


「コレに関する対策も可及的速やかに取らなければならないだろう。


ヴォルケの処遇を含め、明日、決と意見を聞きたいと思うがどうだろうか?」



室内に差し込む日差しが何時の間にか西日となっており、思うより長い時間ヴォルケの処遇に付いて話していたのだと領主達は驚きながら頷いた


全てを急いで決めるのでは、どうしても決めた内容に粗が出てしまう為、猶予は必要な事だと納得したのだった


次々と領主達が席を立つ中、レインとサラも立ち上がった


「レイン、ちょっと聞きたいンやけどえぇかな?」


「ん?なぁに??」


「んー・・・レインやったら、港どうするか聞きたくてなぁ」


「良いけど、そんな大層な事は考えてないわよ?」


お願い!と掌を合わせ拝むサラに苦笑交じりにレインは頷いた


「たいした事は考えていないけど。だから拝むのは止して頂戴」


「ありがと!!」


へらっと笑うサラに、レインも微笑む


そんな2人に、すみません、と、アロウェナが声を掛けた


「「?」」


「いえ、その・・・もし宜しければ私も同席させて頂きたいのです・・・」


おずおずと言うアロウェナに、レインとサラはぱちぱちと目を瞬かせた


「いいですよ。そんな大層な話はしませんが」


「ウチも構わへん」


「宜しいのですか?」


即答にきょとんとした顔をするアロウェナに、レインとサラは揃って頷き微笑んだ





「んで?レインやったらどないするん?」


サラは首を傾げながら口を開いた


既に部屋に3人以外の姿は無い・・・夜会までの準備に余念が無いのだろう


「港の修繕・・・正直、このまま行けば、どんなに早くても一年以上掛かるわよね。


人が居ない、物がない、お金が無いのだから、それらを集める事から始めるでしょう?」


「せやね。半壊ならまだ良いけど、全壊やったら余計やわ」


「しかも、海にも相当瓦礫が沈んだでしょうから、それらの撤去も考えると・・・正直気が遠くなるわね」


「・・・レイン殿なら、どうなさいますか?こんな、状況で・・・」


難しい顔をするアロウェナに、レインは少し間をおいて、口を開いた


「私なら、臨時の港を作るわね。


ヴォルケの港から少し離れたところに、幾つかの島があるわ。


一つ一つはそれぞれ人が住むには小さいけれど、荷の積み下ろしなら出来ると思うの。


だから、船を接岸する為のスペース、荷物を置いて置く事の出来る倉庫、船員の休憩施設を造る・・・これだけなら二月あればある程度形になるわ」


「なんで島を使うん?」


「ヴォルケの港から瓦礫を除くだけでも時間が掛かるでしょうし、海の中にも相当沈んでいると考えられるわ。


だからヴォルケの港を整備すると言うのは、無し・・・


それに、島に臨時の港を設置している間ヴォルケは復興にのみ専念できるでしょう?」


レインの言葉に、サラとアロウェナは成る程・・・と頷いた


「もしこの案にするなら、島から各領地などには翼竜たちにお願いして運んでもらえば良いわ・・・


ただ、ヴォルケから領地を返領してもらうとしたら、其の後のヴォルケの土地は国府預かりにするほうがいいでしょうね。


無用な争いは避けたいし・・・」


「良い案だと思います。明日、是非会議で発案してください」


アロウェナの言葉に、じゃあサラと一緒に。とレインは頷いた


「え・・・私も!!?だってレインの案やん?!」


「だって、港の件は2人で指摘した事だし。


それに次代2人が揃って出した案のほうが、認められやすいと思うのよ。


ほら、新人も新人だし、半人前が2人で1人前みたいな感じで・・・ダメ?」


「・・・一理あるわぁ・・・分かった。んじゃ、そうしよか。


・・・って、良い時間やん!着替えな夜会に間に合わんでっ!!」


空のオレンジを見てサラが叫ぶ


「申し訳ありません。私が呼び止めてお話を聞かせていただいたから・・・」


「いえ、アロウェナさんが謝る必要性は皆無ですよ。大丈夫。


そもそも2人で部屋で話していたら夜会には遅れていそうですから。


今気付いたので間に合います。


片付けをして、着替えに帰りましょうか。


そうそう、今日はアロウェナさん達も出席なさるの?」


「い、いえ。私は仕事をしなければなりませんので、この後は国府に参ります」


「あら、では又明日。良い夜を・・・」


「良い夜を、アロウェナさん」


「は、はい。お2人も良い夜をお過ごしください」


テキパキと領主の娘とは思えないほど手馴れた手つきで周囲を片付け挨拶をしたレインとサラに、アロウェナは目を瞬かせながら、挨拶を返した


心なしか早足で部屋を出た2人の後姿に、アロウェナは頬を緩めた


「・・・面白いお2人だ・・・」














レイン達がアロウェナと別れた同じ頃、トレーネは部屋にある全身を映す鏡の前に立っていた


その表情はまさしく無・・・表情が削ぎ落ち、瞳には光が差していない


「・・・領主でなくなったら、帰ってこれないわ・・・」


ポツリとそれだけ零し、トレーネは変わらず鏡の前で佇んでいれば、どろり・・・どろり・・・とした黒いもやが、トレーネを包み込んだ





「トレーネ様??あら??」


「・・・・・・・・・?」


カチッと言う小さな音と共に、暗かった部屋に明りが灯った


「あら?トレーネ様、まだ着替えていらっしゃらないのですか?


もうじき夜会のお時間ですわよ!?」


目を丸くして驚きの声を上げた娘の声に、トレーネは目を瞬かせた


どろりとした靄は明かりが灯った瞬間霧散している


「アリス?」


「ええ、トレーネ様!アリス・ヴォルケですわ!!


それより急いで準備を致しませんと・・・!!」


「準備?」


キョトンとしたトレーネに娘・・・アリスは大きく頷く


「ええ!夜会まで1時間を切っておりますわよ!!」


「まあっもうそんな時間・・・?!


可笑しいわ・・・ぼうっとしていたみたい・・・


アリス、手伝って頂戴な」


慌てたように動き出すトレーネに、アリスは勿論ですわ!と頷き、トレーネの身支度を手伝い始めた



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