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秋の章・序章



鬱蒼と茂る森の中、荒い息を吐き出しながら男が数人走り続けていた


地面に盛り上がった根に足を取られ、尖った枝で頬を引き裂かれようと、走り続ける男達は、しきりに背後を気にしている


「(おい!追ってきてないぞ!!)」


「(油断するな!!力が未知数な相手なんだぞ!!!


足をゆるめるな!!領境を過ぎるまで走り抜けろ!!!!!)」


最後尾を走っていた男の言葉に、リーダー格の男が喝を入れる


再び上がった速度、駆け続けたせいで疲れた足を無理に動かし、漸く森の終わりが見えると、男達の心に油断が生まれた


・・・もう少しだ、と


・・・追っ手の気配はなく領地を抜けてしまえば早々手出しされることはない、と


口布の下で、頬をゆるめ、速度は変化しないものの警戒を少しだけ緩めた、その時


周囲が一気に森の緑から闇へと変化した

まるで全てを飲み込むように、世界が黒く塗りつぶされる


「(なっ!!!???)」


森の出口、男の目指した光は、伸ばした手の先で無情に口を閉じ闇と静寂に支配された異様な空間に閉じこめられた


「何だ、ココは!!??おい、無事か!!??」


「な、何も見えないぞ・・・!!」


「何なんだ・・・!!」


一筋の光も無い闇の中、1人が取り乱せば連鎖するように、感染するように恐怖が男達の脳を支配していく


事態は飲み込めず、冷静に思考できない


時間にして、30分程


短くはないが、決して長くもない時間、光の届かない漆黒の世界に捕らわれた男達は叫ぶことも止め、頭を抱え蹲っていた




<他愛もないことだ>


カツン・・・という音をわざと立てながら現れたのは、レインの護衛兼、右腕の桐藍だ


鼻を鳴らし、捕らえた者達を冷たい眼差しで見下ろしている


・・・その眼差しに普段のレインを見る穏やかさは欠片も無い


<頭領、此奴等でとりあえず全員だ>


シュレイアの共通言語ではなく、影の民が元々使っていた母国語で、桐藍の配下の男がずるずると抵抗1つしない捕らえた男の襟首を掴みながら一カ所に集めた事を伝えた


<一応手足を縛れ。


情報を存分に吐かせた後は、リーダー格だけ残し後は始末しろ>


<御意。

・・・リーダー格はどうするんです?>


<レイン様に、判断を仰ぐ。


最近無駄に鼠が多い・・・レイン様が、リオルの一件で目立ったのも理由だろうが・・・それだけとは思えないからな>


<御意>


リオルとの停戦以降、国内外問わず注目されているシュレイアには、草と呼ばれる存在の侵入が非常に増加していた


・・・草というのは所謂、諜報役の事だ

情報というのは、どの世界、どの国、どの時代であっても変わらず非常に重要なもので、時には戦況をひっくり返す為に誤情報の流布をしたりすることもある・・・


リオルと停戦に持ち込んだスピードや、アベルの魔王を動かしたという情報に、尾鰭背鰭胸鰭おひれせびれむなびれまでついて流れていて、各有力者達はこぞって真相を確かめるべく草を送り込んでいるのである


<迷惑な話だ>


<全くだな。シュレイアの皆様は、シュレイアの平穏を望んでいるだけだというのに・・・>


桐藍の溜息混じりの呟きに、影の副頭領の彰夏が同意の声を上げた


<帰ったのか・・・彰夏>


<あぁ。イロイロ調べた結果、ちょっとばっかし厄介な相手に目を付けられちまったみたいだ。


レイン様は本当に厄介事におモテになる・・・>


肩を竦める彰夏に、どういう事かと視線で続きを促す


<彰夏は、この流れている情報の大本を探っていたな?


・・・どこに行き着いた?>


<何処も何も・・・俺たちじゃ対処出来ない相手だ。


・・・何せ、見えないからな>


彰夏の言葉に、桐藍は眉間に皺を寄せる


<当たって欲しくないが、まさか・・・?>


<・・・そのまさかだよ。


さんざ故郷にいた頃、苦しめられた相手だ。俺たちでは手を打てない>


<分かった。・・・レイン様に報告に行こう。


彰夏、付いてこい。



他の者は、ココの後始末をする者と、領内を巡回する者に別れてくれ>


桐藍の言葉に闇の中で是という声が上がった


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