夏の章・18話
<お帰りなさい、クラウス、ウェルチ>
闇に包まれた世界を眺めていた男は、そう言って穏やかに微笑み長らく留守にしていた国の主と右腕を迎えた
「ただいま」
「ただいま戻りました
・・・全く、本来ならもう少し早く帰れたはずだったのに、魔王様が寄り道を重ねたせいでこんなにも帰城が遅くなってしまいましたよ」
無表情に溜息を吐くウェルチにクラウスは頬を引きつらせ男は笑った
<どちらに?>
「リオルに行ってきた。
ふっふっふ、また、先が楽しみな人間を見つけてしまったぞ?」
<おや、それは良かったですねぇ>
のほほんと微笑む男に、うむ、と頷いたクラウスは、次いでキラキラとした目を向けた
<?>
「リオルでな、レインに会ったんじゃ」
<それは、また・・・巻き込まれましたか・・・>
苦笑する男に、ウェルチが無表情のまま頷いた
「ありゃ、最早才能じゃろ?巻き込まれるっていう。
主の言うように、カミサマなるものが存在するのだとしたら、特別視されているのは間違いあるまいよ。
行く先々、今回などは領地にいたまま巻き込まれた。
全く、よっぽど面白い人生を歩ませたいらしい」
「彼女も何処か諦めたような表情でしたよ」
クラウスとウェルチの言葉を聞いた男は、確かにそうかも知れないですね、と頷いた
「そうそう、近々、またシュレイアに行くが・・・」
<おや、珍しく時を開けずに行くのですね>
片眉を器用に上げて驚く男に、クラウスはうむ、と返す
「実は、ちいっとばかし、気になる事があってのぅ。
本当はその事を聞くためにシュレイアに行ったようなもんじゃったが、別件が入ったせいですっぽり頭から抜け落ちてな。
カラクサの帰りに気付いたんじゃ」
<それは、一体・・・?>
「まだ、何とも言えぬ。じゃが、またレインは巻き込まれる事になるやもしれぬ」
<それは・・・困った事ですねぇ>
困ったように微笑む男に、心配しないでください、と告げたのはウェルチだ
「彼女の身の安全とシュレイア家とシュレイア領民の命の保証は我々魔族が致しますよ」
安心させるように、微笑を浮かべたウェルチに、男は一瞬目を見開き、そして微笑んだ
「いいとこ取りじゃぞウェルチ!
ちゃんと儂もレインを守るでな。
大船に乗ったつもりで安心しておけ!」
どんと自分の胸を叩いて笑うクラウスに、ウェルチは泥船にならないよう、支えますからご安心を、と付け加えた
<御願いしますね、クラウス、ウェルチ・・・
彼女はとっても無茶をする方ですから>
これにてリオル編、終了




