深海クルーズ
掲載日:2026/10/07
深海クルーズに来た家族が、全面が鋼鉄で覆われた潜水艦に乗り込んだ。
「窓はないんですか?」
「ありますよ!」
艦長は胸を張った。
「こちらです!」
潜水艦の壁には、窓そっくりの液晶画面が並んでいる。
「実際の深海の映像を、リアルタイムで映します」
「超高精細です! 網膜レベルの解像度です!」
「窓と同じ視野角ですので、絶対に実物と見分けがつきません!」
潜水艦は、深海一万メートルへ。
窓の外には、見たこともない深海魚。
青白く光る魚。
巨大な魚。
透明な魚。
「わあ!」
家族は歓声を上げた。
「すごい!」
「きれい!」
男は、しばらく窓を眺めていた。
そして、ぽつりと言った。
「これなら、地上で見ればいいじゃん」
その瞬間、画面が消えた。
「……地球に近づきました。コールドスリープ用の人工夢を終了します。」
宇宙船の艦長が言った。
窓の外には、地球が見えた。
「ああ、そういえば……」
この画面も、液晶だった。




