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その殺し屋からは逃げられない

作者: ひろ
掲載日:2026/06/18

 “山猫のぉ。妾だ、邪魔するよ。


 久しいねぇ山猫の。

 アンタ、まだこんな山奥に住んでいるとはねぇ。まあ、達者で何よりさね。


 何しに来たのか? ってツラだね。

 なに、今度の仕事、久しぶりにアンタと組むことになったからさ。アンタが耄碌してないか、確かめに来たのさ。

 人里離れた山に住み、音もなく忍び寄り【獲物】の喉笛を切り裂く。

 【山猫のお銀】の腕が鈍っちゃいないかをね。


 それにしても、布団から出もせずに横着なやつだね。しかもだんまりかい?

 ま、アンタらしいといえばそうだがね。まさか風邪でも引いてるんじゃないだろうね?

 勘弁しとくれよ? 仕事の最中にくしゃみでもされたら堪ったもんじゃない。

 法で裁けぬ悪を断つ。それが妾たちの仕事さ。そんな危ない橋を渡るんだ。腑抜けて貰っちゃあ困るからね。


 ねぇ...なんか言ったらどうなんだい?

 まさか妾の顔、忘れたなんて言わないだろうね?

 この【くれなゐ頭巾のお市】のさ。“









 俺、オオカミ。

 赤ずきんちゃんがヤバい女でした。




 え? なんなん?


 『がお~、食べちゃうぞぉ〜』

 『きゃ〜』 


 みたいなの予定してたんですけど?

 ですけど?



 赤ずきんちゃん? いや赤ずきんちゃんさん?

 お出かけのときに

 『おばあちゃん家に行ってきまぁ〜す。』

 って可愛らしく言ってた君の面影、まったく無いんですけど?

 ですけど?



 お銀? お市? ここヨーロッパだよね?

 童話風味どこ?



 で、さっき簀巻きにして納屋にぶっ込んだ婆さんがお銀...?




 やべぇじゃん。俺やべぇじゃん。

 俺オオカミってバレたら殺される。

 バレなくてもお銀婆さんに殺される。


 この状況からどう抜け出せば良いんだぁっ!!




 “ねぇ、いい加減なんか喋ったらどうなんだい?“



 はいいぃっ!! 今すぐ喋らせていただきますぅっ!!!



 (裏声)「う、打ち合わせでも、しようかねぇ...?」


 “......打ち合わせだってぇ?“



 まちがえたあぁぁ!!?



 “アンタ...そんな殊勝なこと言うタマだったかねぇ?“



 怪しまれてるぅ!!?

 もう駄目かあぁぁ!?



 “......ふふっ。感心感心。

 なんせ今回の仕事はとびきりヤバい。事は慎重に運ばないとねぇ。

 いつもみたいに『段取りなんかまどろっこしいことは無しだ!』なんて言おうものならケツを引っ叩いてたところだよ。“



 合ってたあぁぁ!!!

 助かったあぁぁあっ!!!


 よよよよよしっ。このまま押し切るぜ。

 適当に話を合わせて、納屋の婆さんが目を覚ます前に何とか逃げ出すんだ!!



 “それでアンタ、元締から詳しい話は聞いたかい?“


 (裏声)「うぇっ? あ、いや、お、お市に詳しいことは聞くからって、か、帰って来たんだよ。その時、少し忙しくてねぇ。」


 “ふ~ん、そうかい。じゃあ妾から説明させて貰おうかね。“



 おぉ〜っ! なんか上手く流れてきたぁ。

 ナイス俺! 千両役者! 主演男優賞!!

 行ける! これなら行ける逃げ切れるっ!!

 お銀婆さんが目覚める前に、急げ急げぇ!!



 “今度の【的】はね。そりゃあ狡猾で残忍な奴らしい。まさに『人の生き血を啜る』ってヤツでさ、“


 (裏声)「そ、そういうのはいいからさ。さっさと打ち合わせしちまおうよ。いつ殺すとか、どこで殺すとかさ。」


 “ふっ...『事情などどうでもいい。確実に殺るだけさ』ってかい?

 変わってないね。流石だよ。“



 いい方向に誤解してくれたぁぁ!!

 運が向いてきたあぁぁ!!

 お家が俺を待っているぅぅ!

 アイルビーバックぅぅ!!



 “じゃあ、まずはこいつが今回の【的】が住む屋敷の間取図だ。元締が手に入れた。“



 ハイ見ましょう、すぐ見ましょう。ハイハイハイハイ成る程成る程ぉ。










 ......俺ん家じゃん。





 オオカミの受難は続く。




おしまい

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― 新着の感想 ―
赤ずきんちゃんだと思わなくてびっくりしました笑 すごく必殺仕事人感でてて、笑っちゃいました。
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