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食品の正体

気になった言葉の意味を聞いただけなのに先輩2人はなんだか怪訝な顔をしている。野生のアイスクリームってそんなにありきたりな存在なの?


実はあの姿で生きてるとか考えたけど、まさか、ほんとにあの目玉アイスクリーム姿で生存してるのか?


目玉アイスクリームがうようよと群れをなして生活している姿を想像してちょっと気分が悪くなる。ベルトコンベアの先で綺麗に箱に並べられたアイスクリームや他の食品たちを見るのもなかなかだが、実はそれらに家族が居たかもしれないと思うとゾッとする。

「野生のアイスクリームを知らないの?子供でも知ってると思うけど」

ベスが怪訝そうな顔をしている。子供でも知ってる常識なのか。

「そもそも学園でならいますわ。あなた、授業中寝ていらしたの?」

メアリーの方も眉をひそめている。このままでは物凄い不真面目なやつだと思われてしまう。

「あ、えっと、あの、じ、事故で記憶喪失になっちゃいまして。あんまり物事を知らないんです」

焦りながら言い訳をする。

実際、そういう事になっているのだから問題は無いはずだ。しかし、今更ながらに常識を学ばなかった事に後悔が浮かんでくる。

「……事故?」

「あっ、そういえば母から聞いた事ありますわ。プライド家のリリムという方が事故で記憶喪失になったとか。貴方のことでしたのね」

いまいちピンときてないベスに可哀想にと目を伏せるメアリー。

「そうそう、そのリリムです。記憶喪失の後、しばらく引きこもってたんですが、ようやく自立しよと思い立って働き始めたんです」

あははっと笑いながら頭をかくと彼女たちなら非難めいた声が上がる。

「こんな、何も知らない状態で?」

「あまりにも無責任すぎませんこと?」

世界の常識すら知らない状態で放り出された可哀想な私に同情しているぽい。

が、べつに追い出された訳ではなく勝手にいたたまれなくなっただけだし、時間があったのに学ばなかったのは自分なので何とも言えない気分だ。

「あ、いや、別に追い出された訳では……」

訂正しようとするけれど、突然手をぎゅっと握られ思わず黙ってしまう。

「可哀想に。心細いでしょう?わたくしがしっかり貴方をフォロー致しますわ!」

……なんか勘違いされている。

家族とは次女以外とは仲良しだし、父親に至っては娘に甘々だ。記憶喪失の事は本当に心配していたし自立すると言った時もだいぶ反対され、父親の用意した家で暮らし、生活のサポートをする通いのお手伝いさんを雇うことで何とか一人暮らしを勝ち取ったくらいには激甘というか、過保護だ。父親に聞いたらいくらだって教えてくれた筈だし、なんなら家庭教師くらい雇ってくれたかもしれない。それでも、それを選択出来なかったのは罪悪感だ。自分は父の最愛の娘ではないのだ。

「……そんなに悲しそうなオーラを出して、とても辛かったのね」

どうも暗い考えが盛れ出ていたようで更なる誤解が深まっていく。

「大丈夫。これから、知っていけば良いのよ。とりあえず、野生のアイスクリームについて説明してあげるわ」

メアリーは一人で盛り上がっている。どうもこちらの話を聞く気は無さそうである。とりあえず、ここで何か言ってもどうしようも無さそうなのでそのままにする事にする。どうせ、父親と彼女が出会うことなんて無いだろう。

「野生のアイスクリームというのは、この工場から逃げ出して野生化したアイスクリームの事よ。他の食品も逃げ出したものはもれなく野生と言われるわ」

「逃げ出した食品?」

「そうよ。基本的には食品たちは自我が弱く逃げ出すという発想を持たないわ。けれど、たまに自我が強い個体が居て食品センターなどに配送中に逃げ出してしまう場合があるの」

この工場から逃げ出したのが野生化と言われる?なら、食品は自然に発生しない?養殖されてる?いまいち分からない。

「あー、もしかして食品がなにか分かってない感じ?」

ベスが呆れた顔で言うのを頷く。そう、食品という存在がなんなのか私は知らない。

「食品は魂とベルゼブブ様の魔力を融合したものよ。」

もともとはこんな形をしていないものを魔力を加えることで食品にしてるっていうこと?

ベルゼブブはたしか、この世界の七大貴族の1人だったはず。


んー、一気に情報が多すぎるな。


今度、妹の使っていた教科書でも読んでみよう。たしか、倉庫に仕舞われていたはず。


とりあえず今は食品についてだ。


「えっと、魂ってなんのですか?」


「決まってるでしょ。人よ」

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