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先輩の趣味は野生のアイスクリームハント

何とか4時間の労働が終わり、待望のお昼時間だ。ほぼ引きこもって好きに過ごしていたので4時間立ちっぱなし、しかも作業的にほぼ中腰なので結構しんどい。いや、悪魔になっても人間と変わらなすぎる。腰痛いんだけど?

もっと、こう、不思議パワー的な何か無いんだろうか。

「……なに、もう疲れてんの?」

ため息を付いていると不意に声を掛けられる。目の前にはなんだか不機嫌そうな顔をした女性悪魔がいた。気の強そうな目元には片側だけ赤いタトゥーが刻まれていて、眉下のボディピアスと耳にピアスがいっぱいでなかなか個性的だ。まあ、それ以上に個性的なのはボブカットの黒髪から除く赤い角と視界の端にチラチラ映る黒い尻尾、そして真っ青な肌色だろう。


仕事着が青色だから同化してパッと見裸に見える気がする。


えっちいな。


いや、えっちいか?


いや、そうでもない。


仕事着がダサすぎて見れば見るほどえっちくないという残念な真実にたどり着いてしまった。

なんだか悲しい。

「なに、その顔?喧嘩売ってる?」

そんな表情豊かではないと思うのだが、なんか感じるものがあったのかただでさえ不機嫌そうだったのに目つきの鋭さが増してきて少し慌てる。

「あっ、いや、あの、久しぶりに長時間立っててちょっと疲れちゃて」

「あら、貴方。新人をさっそくいじめているなんて感心しませんわ」

ヘラヘラ笑って言い訳してるとまた誰かに声をかけられる。振り返るとこちらもまた美人だ。ゴージャスな金の縦巻きロールが印象的で知的なお顔をしていて全体的にノーブルな雰囲気だ。ダサい仕事着がとっても似合わない。

いや、この服似合う人いなさそうだけど。


にしても、こちらはカボチャ頭、なんならハロウィンの時に飾るカボチャの飾りをそのまま頭にした見た目なのに、顔面格差が酷くない?


こちらが別の事を考えている間に彼女たちは彼女たちで話を続けている。

「別にいじめてないわよ」

「あら、そうなの?その割に怖いお顔をされてみましたわよ?」


……もしかしてこの2人仲悪い?

初日から喧嘩に巻き込まれるのやだし止めるか。

「まあまあ、落ち着いてください、先輩たち」

たぶん先輩だろう。ベルトコンベアの別レーンで同じように目玉をこねくり回してた人が数人いたのでその中の人だと思う。一応食品扱うので帽子とマスクしててほぼ見えるとこ目だけなので自信ないけど。声を掛けるとハッとしたような顔をして金髪美人がこちらに申し訳なさそうな顔をする。

「そういえば、わたくし名乗っていませんでしたわ!ごめんなさい。わたくしはメアリー・シェイプと申します。趣味は野生のアイスクリームハントですわ」

とても丁寧に、趣味まで付けて自己紹介されてしまった。


……野生のアイスクリーム?


なんだそれ?


よく分からない単語に思わず黙るがこちらに構わずにもう一人、青肌の美人が自己紹介してくる。

「あたしはベス・スックバ。趣味はカラオケ」

あっ、こっちは普通の趣味だ!

なんか、親近感が湧いてしまう。

物凄く気になる単語を聞いたせいで動揺したけどちょっと落ち着いた。

「あっ、私はリリムと言います。趣味は寝る事ですかね…?」

よろしくお願いしますと頭を下げると2人は驚いた顔をする。

「そんな頭下げなくて良くってよ」

「別にそんなかしこまらなくてもとって食べたりしないわよ」

「あっ、すいません。ありがとうございます」

2人ともけっこう良い子たちなのかもしれない。

「わたしくたち、貴方よりも先輩ですもの。なにか聞きたい事があれば仰って下さいね」

先程よりも柔らかな雰囲気になってきたので遠慮なく聞くことにする。


「あの、野生のアイスクリームってなんですか?」

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