初出勤
今日は初めての出勤日だ。
ドキドキして慣れないなんて遠足前の子供かと思うが、ニートで家族としか交流してこなかったのだから仕方ないだろう。(というか、転生後記憶喪失ってことで人と会ってない。)しかも、コネ採用(地位の高い父親に感謝!)で面接すらしてないのだから明日が色んな意味で初デビューだ。
ぶっつけ本番過ぎる。
我ながら行き当たりばったりだが、どうせ考えたところで良い考えなんか浮かばないのだからやってみるだけだ。まあ、ダメでも泣きついたら娘に甘い父親は受け入れてくれるだろう。
……妹に馬鹿にされそうだけど。
いや、たぶん既にされてるから関係ないか。
私には他多数の異母姉妹が居るのだが、次女には一方的に嫌われている。(ちなみに私が長女だ。)そもそも姉妹全員母親が違うのに1つ屋根の下に暮らしていたのがおかしいのであまり気にしないようにしている。
まあ、うちの事はどうでも良いのだ。
「お嬢様、目的地に到着しました」
専属運転手が恭しく声をかけてくるので思考の海から戻ってくる。
「ありがとう!じゃあ行ってきます」
「どうか、お気を付けて」
とても心配そうな顔をした運転手は何度もこちらを振り返りながら(危なすぎる。)名残惜しそうに去っていった。
無駄にメルヘンな色合いをした工場を見上げると私は大きなため息をつく。
今日からまつ毛バシバシのアイスクリームにメンチを切られたり、大きな目玉のハンバーガーに泣きつかれたりするのだ。
嫌だが仕方ない。
私は覚悟を決め工場内へと向かった。




