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愛した私が馬鹿だった

作者: ゆい

ミセスの天国という楽曲をイメージして書きました。

お目汚し失礼します。

愛したわたしの白さを憎むの。そんな歌詞が流行っていたな、目の前の光景をぼんやり見つめながらふと思い出した。目の前には8年付き合い結婚の約束をした彼が首を垂れて肩を振るわせながら俯いている、ごめんとときおりしゃくりながら出る謝罪はいったい誰へのものだろう。わたしの耳も目も正常なはずなのに頭だけおかしくなったように目の前の現実をただガラス玉のように見つめることしかできなかった。


 別に大恋愛だったわけではない。学生の頃に好きだと言われ恋人というものに興味があったから付き合っただけ。正直顔もタイプではなかった。

今考えると酷く傲慢であったとおもうが自分とてこんなに長く続くとは思わなかったのだ。存外彼のそばが居心地よく他の相手に巡り合うような機会もなくただひたすらに時が過ぎていた。彼にプロポーズされたとき嬉しい気持ちはあったがついにこの時が来てしまったかと内心ではごくりとつばを飲み込んだのを覚えている。笑顔で頷いたその表情は引き攣っていなかっただろうか。そんな思いも彼は見抜いていたのかもしれない。存外鋭いところもある、所詮わたしは間抜けだったのだ。


彼と別れて半年が経つ。ぼんやりと最近出た流行りの飴を咥えながら眩しすぎる青空を眺める。彼が何をしているかもう分からない。それでよかったのだ。わたしにはきっとまだ未練があるのだろう。やり残した気持ちがあるから、ただそれは本気で彼と向き合っていなかったからの後悔なのだ。結局自分は傷つくのが怖くて相手のことが好きだと思わないようにしていた。ただの臆病者でそのくせこんなに後悔しているのだから本当に馬鹿なやつだと思う。またあの歌詞が頭をよぎる、心に蛆が沸いてもまだ香りはしている。あの日の温もりを醜く愛している。そうだった。その通りの日々だった。もう戻らないあの時間をあの日の温もりを無様に未練がましく醜く愛していた。彼への憎しみが恨みが心に棲みついて蛆が沸いた全てが憎しみに飲み込まれそうな日々もあった。もう戻らないから人は悲しみ恋焦がれるのだ、それが相手からのものであれば尚更、まだ挽回ができた、行動を言動を改めることができたのに、と思う。ただ傲慢なのに。相手はきっとなんどもSOSを信号を機会を与えてくれていた。それに気付けなかったその時点で終わりなのだ。そんなの言わなきゃ分からないとも思うが言われなければ分からないままで相手との関係を続けても先が見えているし、自分の意思を明確に伝えずに分かってもらおうとして分かってもらえなければ失格の烙印を自分勝手に押す。そんな2人の先などわかりきっている。

そういうことなのだ。

ガリっと小さくなった飴を噛み砕く。もう戻らない日々に執着するのはやめよう。時間とは不思議なものでもう絶対に無理だと思った想いも少しずつ薄れている。こうやって人は粉々になった心を集めひび割れた周りに経験という塗装をして成長していくのだろう。

どうやったって人は産まれた瞬間に生きていくしかない定めなのだ。どんなことがあっても生きていくしかない。それなら歌を聞いて共感できる心があることに幸せを感じて生きていきたい。

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