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ギャラリー  作者: 抹茶
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接吻

ちゃんとした作品は今回が初めてです。

接吻と言えばどのようなものを想像しますか?

甘酸っぱい青春、ねっとりとした大人の雰囲気、たくさんの意見があるでしょう。

今回は河沼凛かわぬまりん藍島怜あいじまれいの二人の接吻までの物語を凛の視点で語っていきます。

ぜひ楽しんでもらえると幸いです。


私の趣味はインターネットに自分の絵を乗せることだった。

自由時間はなるべく絵に費やして絵を描いてきた。

その成果がでたのかフォロワーもいいねも増えていった。

学校でも絵を描くことがあり、いろいろな人が私の絵を見てすごいと言ってくれた。

今日も家に帰り絵を描く予定だ。


昨日投稿した絵を見に行くとそこには1件のコメントが送られていた。

そこにはただ一言

「絵、下手だね」

そう書かれていた。

ある程度うまくなってきたころにその言葉は少し刺さった。

まあ、批判のコメントが1,2件あったところで人気になったらよくあることと思い絵を描き続けた。


しかし、批判的なコメントはこの一回では終わらなかった。

次の投稿した絵にも次の次に投稿した絵にもただただ一言

「絵、下手だね」

そう書かれていた。

悪質な嫌がらせがあるもんだなと思いながらも、ひたすら絵を投稿していった。


ある日、コメントでの嫌がらせが途端にやんだ。

それと同時に10数人フォロワーが一気に増えた。

私のフォロワーはせいぜい100人前後だったからうれしかった。

なぜいきなり10人くらい増えたのかは謎だけどうれしくて疑問すらも飛んだ。


明後日でようやく活動1周年になる。

私はその日のために全力で1周年記念の絵を描いていた。

悪質な嫌がらせも途中あったけれどそんなものどうってことなかった。

とにかく1周年を楽しみにただただ筆を動かし続けた。


ついにその日が来た。

私は渾身の絵を投稿した。

1年の集大成だ、投稿するときは緊張だってしたし、なんなら少しの不安だってあった。

しかし1周年は最悪の終わり方をする。


投稿して1時間くらいたってからの話だ。

突如知らないアカウントから、たくさんの誹謗中傷コメントが書き込まれていた。

「下手なのに1年も続けてたんだね、見苦しい」

「みっともない絵を描いてる暇があるんだったら、もっと違うことできるよね?」

「二度と絵描きとか言わないでください。絵描いてないんだから」

などといったコメントが複数のアカウントから送られてきた。

開示請求しようか迷っていたけどめんどくさい。

そしてその必要もすぐになくなった。


帰りに教室に忘れ物をしたことに気づき、走って教室に戻るとそこには仲のいい、よく絵を見てもらっていた人と複数の女子が話していた。

教室の前についたとき私は耳を疑った。

目の前にいる数人のクラスメイトが今までのインターネット上での嫌がらせをしていた犯人だったなんて。

自分のアカウントを見たら、以前いきなりフォローしてくれたアカウント10個くらいからはすでにフォローを外されていた。

私は仲がいいと思っていた人たちがあんなことを言ってきたショックと、1年間が無駄になった気がしてきたことが相まってすぐに教室の前から立ち去り、それ以降その人たちとしゃべれなくなった。


きっと私がその話を聞いたのがばれたのだろう。

すっかり私は教室ではハブになっていた。

聞こえてきた噂では私と仲良くした人もハブになるらしい。

みんなそれを恐れて私に話しかけなくなったのか、、、

それからも陰湿ないじめは続いた。

私の文具やノートが捨てられていたり、無視は日常茶飯事になった。

しかもそれは他クラスにも及んでいた。


ある雨の日、私は傘を盗まれた。

濡れながら歩いているうちに限界が来たのか私の目からは涙があふれた。

いままで強がっていた分の涙、悔しい涙、悲しい涙、寂しい涙、すべてがあふれてきた。

そこにある女が現れた。

隣のクラスの藍島怜だ。

彼女はそっと傘に入れてくれた。

私が「そんなことしてるの見られたらいじめられちゃうよ?」というと

彼女は「別にいいや」といった。

それが彼女との出会いだった。


私と彼女は学校外でみんなから隠れて連絡を取り仲良くなっていった。

映画やショッピング、お泊り会なんかもした。

楽しくて、一人じゃないと気が付いて、私は次第に彼女に好意が湧いてきた。

彼女の家は放任主義でいつも家におらず金だけおいて遊びに行くから家では彼女も一人だった。

私は唯一の友達であり好きな怜に放課後はべったりだった。


今日もまた学校ではいじめがあった。

先生に言ったところで、勘違いと言われておしまいだった。

親に言っても出来損ないの私はさほど大切ではないらしい。

親は妹ばかり気を使って私はほぼいないも同然だった。


心の支えはもう怜しかいなかった。

それでも怜さえそばにいてくれればそれでよかった。


ある日のことだ。

いじめの対象に怜が追加された。

内容はもっとひどかった。

スクールバックは川に投げ捨てられ、髪は無理やり切られていた。

私は放課後怜の家に行きその乱雑に切られた髪を自分のしていた髪ゴムで結んだ。

そして一言、「ほんとにごめん」とだけ言って家を出た。


それ以降、怜は学校に来なくなった。

いつも通りの学校、いじめが私を襲い苦しめるだけの学校。

心の支えの怜も消え今まで通りの、怜と会う前までの学校に戻った。

私も耐えられず学校に行かなくなった。


更新をしていなかった絵のアカウントからはフォロワーは消え失せ私自身には怜以外何も残っていないと悟った。



どれだけの日にちが立っただろう。

私には心の支えであった怜でさえ自分のせいでいじめられてしまったという罪悪感で縛る呪いとなっていた。

私はベッドにくるまりながら、怜との写真をひびの入ったスマホで写しながらごめんなさいと泣きながら言うそんな生活をしていた。

何度も謝って罪悪感が薄れるなら、自分への罪の償いになるのならと思い何度も謝った。

次第に喉はつぶれ声なんてまともに出る状態じゃなくなっていた。


急に一件の通知が来た。

怜からだった。

内容は「家に来て」この一言だけだった。

支度をしていると今度は電話が鳴った。

ビデオ通話だった。

取るとそこには椅子の上に立った怜とぶら下がっている縄が映っていた。

私は一瞬にして理解した。

怜は「いじめはあなたのせいじゃない。好きだよ凛」そう言い首に縄を回し椅子から降りた。

声が出せる状況でもない喉から叫びと悲しみやめてという感情が音としてでた。

急いで家に駆けよった。


すでに怜は死んでいた。


それでも受け入れられず過呼吸の口で怜に人口呼吸をした。

何度も何度も。。

初めての口付けだった。

息なんてしていない、心臓も動いていない。

そんなことわかっていた、それでも、、、、


私は目の前で散っていった彼女の顔を見て、目が腫れていることに気が付いた。

「怜も泣いていたんだな。」そう冷たくなっていく体を抱えながら思った。

ただでさえ枯れた涙を絞り出すかのように泣いた。

無音の鳴き声と嗚咽が部屋に響き渡った。

開かれたスマホのタブにはすべてにいいねが押された私のアカウントがあった。

写真のお気に入りはすべてわたしと怜の写真で埋め尽くされていた。


許してとむせび泣いていたのはすべて意味のなかったことなのだなと思った。

彼女と私は愛し合っていた。

どんなに歪で狂った世界であっても私たちは愛し合えていたのだ。

私は魂の宿っていない怜の塊を抱き上げキスをした。


そして怜の首に巻かれた縄をほどき、自分の首に回した。

私も椅子から落ちた。

意識が遠のく、苦しい、それでも幸せだった。

最後に私は言った。

「怜、私もすきだよ」

初投稿です。書いてて辛くなりました。シリアスな感じの作品はひとまず書きたくない。

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