宇宙の森
ある宇宙ステーションをN博士が視察していた。世界的にも有名なN博士だが、お供も連れず一人でステーション内を視察していた。
最新型のこのステーションには、リアルな森が設置されている。地球出身のN博士にしても、久しぶりの木々の緑だったので楽しみにしていた。
公園に着いたN博士は、早速森の中に入り森林浴を楽しむことにした。普段はそっけない人口太陽も、木々の中から見ると本物の太陽に見える。しばらくして、久々の森との出会いの興奮も冷めてきた頃、少し変なことに気がついた。
「おや、N博士ですね。さがしましたよ」
後ろから、このステーションの管理人の男がやってくる。
「少しでも早く見たくてね、一人できてしまいました」
「さすが、好奇心が旺盛なお方だ」
管理人としばし談笑した後、N博士は疑問に感じたことを聞いてみることにした。
「そういえば、この森には虫が居ませんね。それに、人以外の動物も見えない」
「それは簡単なことです。虫は、病気の原因になりますし、嫌いな方も多い。他の動物も、ペットや人に危害を加えるかもしれませんから居ません」
「しかし、それでは枯葉や花の受粉はどうするのだ」
「枯葉は等間隔に設置された回収口から回収して、食料に変換します。花は機械が受粉させます。それに、花畑の地区以外は花を咲かせないように遺伝子操作をしています。花粉症の原因にもなりますからね」
N博士はその徹底的な管理を知り、愕然とする。このステーションは、他の開拓惑星への順応訓練のために建設されたものだ。こんな人口の森では訓練にはならない。
「訓練にならないと思いになりましたか?」
「そうだ、これでは訓練にならない」
「大丈夫ですよ。未開の惑星も、この森と同じにすればいいだけです。我々にはその技術がありますから」