表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/23

賽の河原の子供たち

三途の川のそのほとり、賽の河原と呼ばれる場所。そこで子供たちが石を積み上げている。

親より早く死んだこの子供たちは、その罪を購うために石の塔を完成させなければいけないためだ。しかし、塔が完成間近になると、毎回棍棒を持った鬼がやって来て、石の塔を壊してしまう。

子供たちは壊されないように抵抗するが、鬼は不思議な力があるのか、触れることができない。

泣きじゃくる者や、怒る者、呆然とする者など様々な反応をする子供たち。まだ幼い子が多いのか、その反応はことさら大きく、静かな川辺をざわめかせる。

鬼は塔を壊し終わると、その子供たちをあざ笑うかのような哄笑を残し、霞のように消えさっていく。

鬼が消えた後、子供たちはまた石を積み始める。今度は子供たちなりに頭を使い、複数の塔を同時に建て始め、一つ二つ鬼に壊されてもいいようにした。

しかし、完成間近になったとき、今度は鬼も複数になって現れた。無惨に壊されていく塔たち。それは、鬼が子供の浅知恵を嘲笑っているかのようだった。

毎回、毎回壊される塔。その内、ほとんどの子供が積むことを諦めてしまった。そんな中、一人の少年が、また塔を積み始めた。

回りの子供は、皆諦めた表情でそれを見ていた。案の定、その塔は完成間近で壊されてしまう。

だが、その少年は壊されても、壊されても、塔を積むことをやめようとはしなかった。

そのうち、一人の子がその少年に問いかけた。

「そんなことをしても無駄さ。また、壊されてしまうだけだよ」

「壊されてもいいさ。それよりも、今度は丸い塔ができたよ」

よく見てみると、その塔はたしかに円錐状になっていた。

「前回は四角い塔、その前は三角の塔。塔を作るの、楽しいよ」

少年はその汚れた顔に、あどけない笑顔を浮かべながら、本当に楽しそうに答えた。

塔を作ることを楽しむ。完成させることばかりに気をとられ、他の子供たちはそんな簡単なことを忘れていた。

塔を作る者、見て楽しむ者、次の塔を考える者。それぞれの楽しみ方で、子供たちは塔作りに熱中しつづけた。

鬼は塔を壊すことはできても、子供たちには触れることができない。鬼は楽しそうな子供たちを見て、地団太を踏むことしかできなかった。

ここは地獄の入り口、賽の河原。子供たちの楽園だ。


かなり前の作品。自分の作風じゃないからいれてなかったけど一応入れておこう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ