マック
おはよう諸君。
今日もいい目覚めだ。
僕はマック9歳だ。この人口約...えーと、いち、にい……60人くらいの村で暮らしている…多分。両親はサリウスとマリンジュで、マリンジュはサリウスの再婚相手だ。家は小さいけれど僕の部屋はちゃんとあってベットも置ける。
村での生活は基本的に日の出から始まり日が暮れて終わる。村の住人たちは辺りが暗くなる夜は人間が活動してはならない時間帯だと認識していて夜は滅多に外に出ることはない。ではなぜ僕が夜に目を覚ましたかというと…
「ハァ、ハァ、やっと着いた…。 わあ…。」
ほのかに明かりの漏れる茂みを抜けた先に広がっていたのは、泉の周りを飛ぶ、きらきらと宝石のように光るヒカリムシだった。ヒカリムシはマックの様子に気づくことなく多様な色に発光し、暑い夜の影を照らしていた。マックにとって初めて見るそれは今までで一番感動した光景だった。
「夢みたいだ。」
ゆっくりと漂うそのムシたちの姿は、水面にも映っているのと相まってとても美しかった。
しばらくその様子を堪能したあと僕はゆっくりと家に戻り始めた。草をかき分け家までの小道に向かう。
まだ夢心地だったせいか途中で何かに足を引っかけた。
「痛ってー!! って、なんだこれ?」
石にしては、大きく、角ばっている。しかしさっきぶつけたせいか微妙に歪んでしまっていた。
ひっこぬこうとしてもびくともしない。気にしないことにした。
家の近くまで戻ると音を立てないようにして裏に回り、小さな窓にみをよじりそのままベッドに飛び込んだ。まだあの光景が頭から離れない。絶対に明日も見に行こう。
月あかりのまぶしい夜のことだった。
「マックー!! マックー!!朝だよ起きなっ!!」
頭を叩かれながら起きる。
「おはよう。おばさん。...あっ」
「お ば さ ん!? あんたねェ…お 母 さ ん でしょ!!だいたい…」
いつもこうだ。普段はちゃんとお母さんと呼ぶことができるのに寝起きはうっかり呼び間違えてしまう。母さんは茶髪で長い髪の美人なひとだった。歳は結構いってそうだけど。
「ごめんなさい。おかあさん。」
いまだ止まぬ説教の中声を振り絞る。
「わかればいいのよ…。ご飯できてるわよ。」
いそいそとテーブルに向かう。父さんはとっくに起きて身支度も整えられていた。筋肉ムキムキでちょっぴり髭を生やしたかっこいい父親だ。
「マック。今朝は目覚めが遅かったな。昨日は眠れなかったのか?」
「うん。ちょっとね。それより今日は僕の畑作る日でしょ?」
「ああそうだ。早く朝食を食べて支度を済ませなさい。」
父さんと一緒に家をでて、井戸に寄り顔を洗いながら家の畑に向かう。
道を歩いていくと村の広場のような場所にいつものあいつらが集まっていた。
「よおーー!マックじゃねえかァーー今日は遊べねェのかあーー?」
「うーんーっ今日は畑作る日だからー!」
「そうかーじゃあしかたないなァー」
グループの代表格のカイマンがそう答えると興味をなくしたかのように全員がまた剣遊びに興じる。
離れていった父さんとの距離を埋めるべく小走りに父さんについていった。
家の畑に到着し、父さんが持ってきた道具を確認している。
すると隣の畑のおじいさんが話しかけてきた。
「おおーサリウスんとこの息子かー顔を見るのは久しぶりじゃのう。」
「え、ごめん覚えてないや。僕たちいつあったの?」
「ふぉーふぉっふぉ。無理もないわ。お前がまだ立って間もないころじゃからのう。」
「へー。」
「久しぶりだな。モルツ。最近は畑にきてなかったが体調がよくないのか?」
おじいさんと話していると父さんが近づいてきた。
「そうじゃな…もう年じゃからな。なかなか体も言うことを聞かなく…な…」
ズシャ
モルツじいさんは勢いよく地面に顔を擦り付けた。
じいさささささぁぁぁん!!!
父さんと母さんはモルツじいさんを家に連れていき看病をした。モルツじいさんは昔に奥さんに旅立たれ今は独り身らしい。ここは小さい村だ。助け合いは当たり前だ。そう父さんも言っていた。
せっかくの予定がおじゃんとなってしまった僕としては少々残念に思う気持ちもあったが、気をとりなおし広場へ向かう。すると思った通りにあいつらがしゃがんでこそこそ何か話し合っていた。
「…から俺たちが弓をもってしとめれば」
「おーい」
「おっ!? おいおいマックかよ驚かせんなよなァーふぅ」
カイマンとエミーとジェイマン、トニーと妹のアニーそれと僕の隣の家のジャムも一斉に僕ををみている。カイマンは大柄で元気な奴だ。エミーはみんなのお姉ちゃんって感じでトニーとアニーは実質双子に近いのでお互いにている優しい奴らだ。一番小柄なジャムは、実は僕の初恋の子だったりする。
「なに話してるの?」
「いいか?いま話すことは秘密にしろよ。」
「うん。」
「俺たちは、冒険者になる!!」
「ボウケンケンシャって何?」
「世界を冒険する奴らのことだ!!ドラゴンだとかサイクロプスとかそんなのと戦うやつらだ!!」
「かっこいい!!」
「私もなりたい!!」
「僕もー」
次々に周りのやつらが同調し始める。
「そもそもドラゴンってなんだよ?」
「これだよこれ!」
カイマンは誇らしげに絵の描かれた本を取り出し広げた。
「え…本…これどこで?」
「えっへん。結構前に商人来ただろー?そのとき親父がちょうど街に狩ったタヌーの毛皮売りにいくっつてついていったの知ってるよなー。そんでかえってきてお土産としてくれたのがこの本ってことよ!」
「すごい。本って高いんでしょ。」
「まあな」
「それでだな、俺たちがドラゴンを倒すにはタヌー程度のちっちゃな魔物におびえるわけにはいかないんだよ。だから俺たちは倒す!!」
「タヌーを?」
「そうだ!」