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役立たずスキル【ログインボーナス】で捨てられた令嬢が、本当の幸せをつかむまで【11月 コミックス2巻発売】  作者: 碧井ウタ
本編(完結済)

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39:穏やかな日々

 ヴィンセントの呪いが解けてから、2か月が過ぎた。

 若葉が生い茂り、リネハンはすっかり春めいている。


 ひと月ほど屋敷を空けていたケルヴィンは、大量の荷物と一緒に屋敷に戻ってきた。

 

 その荷物は、王都に住んでいるケルヴィンの妹夫婦からのお土産だそうだ。セリーナやヴィンセントにはもちろんのこと、面識のないジョアンナにも驚くほど沢山の贈り物をいただいた。


 

 ケルヴィンが戻ってきてから、ある変化があった。

 ケルヴィンとヴィンセントの2人が、肩を並べて忙しそうに屋敷を歩く姿をよく見かけるようになったのだ。


 ヴィンセントは、すでに剣の訓練もできるほどに回復している。

 そのため、ケルヴィンから当主としての仕事を少しずつ教わるようになった。


 初めて2人が机を並べて働き始めた日。執務室で働く者達が揃って涙していたそうだ。

 


 そして、ジョアンナにもいくつかの変化があった。


 ヴィンセントの呪いが解けた後から、[ガチャ]で聖水が出なくなったのだ。

 そして、[交換]からも聖水が消えてしまっている。

 

 その代わりに、これまでとは違う系統のものが[ガチャ]から出るようになった。

 

 胡椒や砂糖などの調味料

 宝石や鉄鉱石などの鉱物

 薬作りで使う道具

 魔道具…………など

 

 貴重な物から、そうでもない物まで様々なカードが出ている。

 

 【ログインボーナス】の扱いについても、変わったことがある。

 ジョアンナは、ケルヴィンが戻ってきた翌日。ケルヴィンから王宮で決まったことを告げられていた。


 近々、研究所から【ログインボーナス】の再調査をするために研究者がリネハンにやってくるそうだ。

 その調査へ協力するように言われた。


 そしてもうひとつ。

 今後はこれまでのようにスキルについて隠さなくてよくなった。

 [ガチャ]もジョアンナの好きなタイミングで回し、出た物も好きに使って良いらしい。

 

 ただ、貴重な物や何だかわからない物が出た時と新しい能力が増えた時は、ケルヴィンに相談して欲しいそうだ。

 

 どうやら王家と話し合い、ジョアンナの保護を取り付けてくださったらしい。それにより、このスキルを持っていることでのジョアンナの危険性が下がったので、ある程度の自由が生まれた。

 

 本当にケルヴィンやリネハン家の人には感謝しなければならない。

 

 もしもリネハンに来ることがなくマーランドで過ごしていたら、このスキルを父に利用されていたかもしれない。

 リネハン以外の家と婚約していたら、こんな風に守ってもらえなかっただろう。


 【ログインボーナス】に変化があってから、すでに半年以上の月日が過ぎている。

 最初はスキルに慣れる間もなく次々と色んな出来事が起こるので、それについていくので精一杯だった。


 それに加えて何か起こるたびにケルヴィン達に迷惑をかけるのが心苦しくて、スキルを使うことに後ろめたさや怖さも感じていた。

 

 しかし、ケルヴィンの話を聞いてからは、スキルを楽しんで使えるようになった。

 

 [ガチャ]を回したり……

 [交換]でどれにコインを使おうか考えたり……

 手に入れた物を[アイテムボックス]から取り出してみたり……

 

 その全てを、ジョアンナは心から楽しんでいる。


 唯一、残念に思っているのは、ヴィンセントと一緒に[ガチャ]を回す日課が無くなってしまったことだろうか……。彼が忙しくなり屋敷にいない日も増えたので、2人で昼食を食べられなくなってしまったのだ。


 仕方のないことだが、それが少し寂しくもある。

 しかし、ヴィンセントがこうして元気に働いている姿を見れるのは、ジョアンナにとって幸せなことだった。



 

 こうして穏やかな日々を過ごしていたが、ジョアンナにはひとつ気になっていることがあった。


 ──いつ、婚約解消を持ちかけられるのかしら?


 ジョアンナとヴィンセントの婚約は、婚約から1年後の結婚という取り決めになっている。

 昨年の10月に婚約し、今は5月なので、あと5か月で結婚の予定だ。しかし、結婚についての話は全く進んでいなかった。


 ヴィンセントの呪いが解けてから……彼のリハビリやケルヴィンが王都へ行ったりと屋敷もバタバタしていた。しかし、それも落ち着いて、すでに元通りの日常に戻っている。


 ヴィンセントも健康になったので、結婚するのならば結婚式を挙げると思う。


 もし、ジョアンナと予定通りに結婚する場合は、今頃はドレスや式の準備などで忙しくしているはずだ。それなのにドレスの採寸すらしていないということは……恐らくそういうことなのだろう。


 ──やっぱり、あの話は本当みたいね?

 

 少し前にジョアンナが1人で廊下を歩いていた時に、曲がり角の先でメイドが話していたのが聞こえてきてしまったのだ。


「……でも、ジョアンナ様との婚約は、あの事件があったからでしょう?」

 

「うーん、でも……それでプリシラ様に戻るのは、ちょっと違くない?」

 

「でも、2人は幼馴染で小さな頃から仲が良かったし、お似合いだったって噂じゃない? それにプリシラ様はあれから新しい婚約はしていないんでしょう? きっと、今でもヴィンセント様が好きなのよ!」

 

「確かに、まだ婚約はしていないみたいだけど…………」


 ジョアンナはそれ以上は聞きたくなくて、その場から逃げ出してしまった。

 この婚約は、メイドも言っていたようにヴィンセントの呪いがあったから結ばれたものだ。


 それが無くなった今、彼が元の婚約者の所へ戻ってもおかしくないのだ。元の婚約者もまだヴィンセントを想っているのならば、2人が一緖になる可能性は高いのかもしれない。


 最近屋敷を不在にしがちなヴィンセントは、元の婚約者の所へ通っているのではないかという噂もある。


 彼の隣に自分じゃない女性がいることを想像するだけで、ジョアンナの胸は苦しくなる。

 しかし恋をしたこと自体が初めての彼女には、どうしたらよいのかもわからず、胸の奥に感じる痛みから目を背けることしかできなかった。

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