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役立たずスキル【ログインボーナス】で捨てられた令嬢が、本当の幸せをつかむまで【11月 コミックス2巻発売】  作者: 碧井ウタ
本編(完結済)

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29/46

29:お年玉プレゼント

 ジョアンナが食堂に入ると、ヴィンセントとディーノが席に着いて談笑していた。

 今日の食堂は新年らしく飾り付けられていて、(おごそ)かな雰囲気だ。

 

 2人に新年の挨拶をして、ヴィンセントの隣の席に着くと、彼はジョアンナの今日の装いを誉めてくれた。


「素敵なドレスだね。髪型も似合っていてとても美しいよ」

 

 今日は新年のお祝いということもあり、朝から侍女達が妙に張り切っていた。髪は複雑に結い上げられて、化粧もいつもより少しだけ濃い。ドレスも仕立てたばかりの新しい物を選んだ。

 

 ヴィンセントも今日はタイを締めてエレガントな装いをしている。とても素敵だったので、ジョアンナも照れながらそう伝えると、彼は少し頬を染めて照れくさそうに微笑んだ。


 しばらく3人で話をしていると、ケルヴィンとセリーナが食堂に入ってきた。彼らとも新年の挨拶を交わして食事を始める。


 

 今日はお祝いの為か、貴重な食材がふんだんに使われていて手の込んだ料理ばかりだ。どの皿も盛り付けが華やかで見ているだけでも楽しい。


 隣を見ると、ヴィンセントの皿は片手でも食べやすいように、どの料理もひと口サイズにカットされているようだ。彼も器用にカトラリーを使いながら美味しそうに食べていた。


 昨年の印象深かった出来事や、今年の目標などを語りながら食事を進めていると、あっという間に最後のデザートになった。

 

 デザートは、縁起の良い色とされる赤と白の2色の花を使った、ひと口サイズのケーキだった。ケーキが盛り付けられた皿には小さな花が飾られていて、フルーツのソースや金粉で綺麗に(いろど)られている。あまりにも美しくて食べるのがもったいなく感じるひと皿だ。


 ケーキを食べてお茶を飲み終わると、ディーノは皆に挨拶をして退室していった。彼は今日は何もせずにのんびりと1日を過ごす予定だそうだ。


 

 

 ディーノを見送ると【ログインボーナス】の話をすることになった。


 お茶を入れ替えた後に使用人に退室してもらい、部屋には4人だけが残った。それぞれの手には、ジョアンナが書いて届けた手紙が握られている。


 3人とも、すでに手紙を読み内容は理解していたので、簡単な説明の後にすぐに[ガチャ]を回すことになった。


 今日の[ガチャ]は、最初の1回だけSSRのカードが出るそうだ。

 最初は謎だった光るカードに書いてある「R」などの記号だが、これまでに出たカードから、R→SR→SSRの順番で価値が上がっていることがわかっている。

 

 これから回す[ガチャ]で出るのは最も価値の高いSSRのカードだ。どんな物が手に入るのか楽しみだが、少し怖くもある。


 ジョアンナはゴクリと唾を飲みこむと、[ガチャ]を回した。そして出たのは……なんと、スキルキャンディだ。


 この時点で、部屋はなんとも言えない微妙な空気に包まれた。

 その微妙な空気の中、ジョアンナは続けて[10連ガチャ]も回してみる。


 出た物はこんな感じだ。


 聖水×3

 デスパル草×1

 初級ポーション×1

 初級毒消しポーション×1

 ガチャチケット(有効期限:1年間):2枚×1

 中級ポーション×1(R)

 上級ポーション×1(SR)

 虹色の(しずく)×1(SSR)


 今回は3枚も光るカードが出てきた。お祝いの日だからだろうか……いつもより光るカードが多く出ている気がする。


 ジョアンナから出てきた物を聞いた3人は、上級ポーションが出てきた事にとても興奮していた。


 このポーションは、飲むと複雑な骨折や切断された患部も一瞬で元に戻せるそうだ。ただ、素材の入手が困難なことに加えて、このポーションを作れる者がとても少ないらしい。そのため、手に入れるのがとても難しいそうだ。


 そんなポーションが手に入ってしまったのだ。そしてこの場にいる全員が初めて聞いた「虹色の(しずく)」は、SSRのカードなので上級ポーションよりも貴重な物だ。


 

 それぞれが思考の海に沈み込んでいると、ケルヴィンが何かに気がついたかのように顔を上げた。そしてジョアンナを見て軽く微笑むと口を開いた。


「とりあえず、手に入れたスキルキャンディを見てみようか?」

 

「そうね……私も見てみたいわ!」


 ジョアンナは、恐る恐る[アイテムボックス]からスキルキャンディを取り出した。スキルキャンディは前に食べた物と全く同じ見た目の、金色の小さなキャンディだった。


 【鑑定】してみると弾かれるような感覚があり、どうやら【鑑定】はできない物らしい。

 

 誰よりも興味深そうにスキルキャンディを見つめているセリーナ。ジョアンナはセリーナにスキルキャンディを渡そうとして手を伸ばした。セリーナがそれを手を広げて受け取ろうとすると、不思議なことに彼女の手をすり抜けてスキルキャンディがテーブルに落ちてしまう。


 咄嗟(とっさ)にジョアンナはそれを押さえて、セリーナを見上げると彼女は目を丸くして驚いている。


「今、母様の手をすり抜けたように見えたのですが……」

 

「ああ……私にもそう見えた。セリーナ、何が起こったのだ?」

 

「私にもわからないわ……。ジョアンナからスキルキャンディを受け取ろうとしたら、何の感触も無くすり抜けてしまったとしか…………」


「…………ちょっと、この上に置いてみてくれないかな?」


 ケルヴィンが用意した何も乗っていない取り皿の上に、ジョアンナはスキルキャンディを置いた。


 すると、ケルヴィンがその皿に手を伸ばしてスキルキャンディを(つか)もうするが、指をすり抜けてしまい掴めないようだ。続いて、セリーナ、ヴィンセントも同じように試してみたが、スキルキャンディに触れる者はいなかった。


 ケルヴィンは(あご)に手を当てて、しばらく難しい顔をして考え込んだ後に、ジョアンナを見て静かに問いかけた。


「恐らく……このスキルキャンディは君にしか食べられない物なのだと思う。食べてみるかい?」


 ジョアンナは何故だかわからないが、このスキルキャンディを見た時にジョアンナが食べなければいけないような気がした。それを話して食べてみたいと思っていることを言ってみる。


「それなら、食べてしまおう! これでもリネハン家はそれなりに力のある家だ。大丈夫! 何があっても全力で守ってみせるさ!」


 そう言って笑うケルヴィンは、なんだか本当の父よりもずっと父親らしい優しい目をしていた。


 ジョアンナは少し前にセリーナから聞いた話を思い出し、少し迷って照れながら「ありがとうございます。()()()()()」と言った。

 

 そして、照れ臭さを隠すようにスキルキャンディをパッと手に取り、口に放り込んだ。


 そんなジョアンナをケルヴィンは驚いた様子で呆然と見つめている。その隣ではセリーナが笑いながら2人を優しく見ていた。

 

 そして、そんな両親と顔を赤く染めて視線を彷徨(さまよ)わせている可愛い婚約者を見て、ヴィンセントも幸せそうに笑うのだった。


 


 そうして……ジョアンナが手に入れたスキルは【錬金術】だった。

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