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役立たずスキル【ログインボーナス】で捨てられた令嬢が、本当の幸せをつかむまで【11月 コミックス2巻発売】  作者: 碧井ウタ
本編(完結済)

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28:それから

 皆が落ち着いてから、ヴィンセントはジョアンナに声をかけた。


「ジョアンナ嬢、聖水を何本かもらえるかな?」

 

 ヴィンセントは、ポーションのように聖水も飲む量を増やせば早く治るのではないかと考えたらしい。


 彼の説明によると、身体中に多くの怪我をした場合などに複数本のポーションを飲むことはよくあるそうだ。


 例えば……初級ポーション1本では全ての怪我が治らなかった場合は、初級ポーションを数本飲んで怪我を治したりするらしい。ただ、初級ポーションで治せるのは切り傷や打撲までだ。骨折や深い傷などの大怪我の場合は、初級ポーションをどんなに飲んでも効果は無く、中級以上のポーションを飲まなければ治らないそうだ。


 ジョアンナは数本の聖水を取り出して、ダニーへ手渡した。

 

 ヴィンセントは明るい笑顔でジョアンナにお礼を言うと、すぐに聖水を1本飲んだ。続けてダニーが2本目の聖水の蓋を開けてヴィンセントに手渡すと……不思議なことに、ヴィンセントが手に持った瞬間、瓶の中の聖水から光が失われてしまった。


 皆が困惑した表情で光を失った聖水を見つめている。


 ディーノは少し考えてから口を開いた。


「祖父の手記に書かれている通り、光が失われている聖水に効果は無いと思います。もしかすると、聖水は1日に1本までしか飲めないのではないでしょうか。もしくは、薬のように時間を空けなくてはならない可能性もありますので、夜にもう一度試してみましょう」


 念のため、ジョアンナが【鑑定】で調べてみると……


────────────────────

 ◼︎水

 飲用可能な清潔な水

────────────────────


 光の失われた液体は、聖水から水に変わっていた。



 その夜、眠る前にヴィンセントは聖水を飲めるかを試してみた。しかし、2本目の聖水を飲むことはできなかった。朝と同じように蓋の開いた聖水がヴィンセントの手に移った瞬間に、聖水からは光が失われてしまったのだ。

 

 そして翌朝、ヴィンセントはいつもより少し早くに目覚めると、すぐにダニーに聖水の蓋を開けてもらい手に持った。


 聖水からは光は失われず、キラキラと輝いている。ヴィンセントはホッとしつつも、緊張しながら瓶を口に近づけていく。聖水の光は失われることがないまま彼の口へ入っていった。

 

 恐らく、ディーノの言う「1日1本まで」というのが正しいのだろう。


 それから、ヴィンセントは毎日寝る前に聖水を飲むようになった。

 彼が眠りに落ちる時には、いつも不思議な光に包まれる夢を見る。そして、翌朝目覚めると少しずつ身体に変化が起こった。


 まずは(うろこ)のようになっていた部分が少しずつ無くなっていった。そして、(うろこ)状の部分が全て無くなると、ヴィンセントを苦しめていた激痛が襲ってくることも無くなった。


 続いて、黒くなっていた皮膚が足の先や顔から少しずつ元に戻っていく。ただ、身体の(しび)れだけは一向に良くならずに残ったままだった。


 そんな中、ジョアンナとヴィンセントにはある変化が起きていた。

 

 昼食後に2人で[ガチャ]を回す日課は変わらないが、[ガチャ]で聖水が出ると2人は大喜びするようになったのだ。これまでハズレ扱いしていたのに現金なものである。

 

 こうしてヴィンセントは毎日聖水を飲み続け、少しずつ回復していった。

 

 

 

 時が流れて、新しい年の初めの朝が来た。

 

 年末に降り積もった雪が残り、窓の外は真っ白な景色が広がっている。

 最近は暖炉(だんろ)に火を入れていても、リネハンの冬に慣れていないジョアンナには少し肌寒く感じてしまう。

 

 ジョアンナ達が暮らすエビロギア王国では、新しい年の最初の食事は家族で食べる風習がある。

 

 いつもは朝食はそれぞれ自分の部屋で食べているが、今朝は食堂に集まり全員で食べることになっている。もちろん、ヴィンセントや屋敷に滞在中のディーノも一緒だ。


 ジョアンナは布団の中でモゾモゾと動きながら、いつも通りに【ログインボーナス】の画面を開く。

 そして[ログイン]を押すと、こんな画面が出てきた。


──────────────────────

 新年おめでとうございます!

 「お年玉プレゼント」が届きました!

 

 ① ガチャチケット:10枚を手に入れました(有効期限:本日中)

 ② コイン:100枚を手に入れました(有効期限:本日中)

 ③ 本日の[ガチャ]は、SSRのカードが確定で出ます(最初の1回のみ)

──────────────────────


 新年早々から、なんだか大変な1日になりそうだと、ジョアンナは溜め息をついた。

 そして上着を羽織って少し震えながら机まで歩き、慣れた手つきで画面を書き写すのであった……。

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