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役立たずスキル【ログインボーナス】で捨てられた令嬢が、本当の幸せをつかむまで【11月 コミックス2巻発売】  作者: 碧井ウタ
本編(完結済)

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14/46

14:10連ガチャ

 夕食を食べ終わり、セリーナと共にヴィンセントの部屋に向かっている。


 食事の席で、セリーナにまた手を(わずら)わせてしまうことを詫びると、「気にしなくていい」「色々な事が起こって楽しいくらい」と明るく笑って言ってくれた。

 

 セリーナは、ヴィンセントと一緒に初めての[10連ガチャ]を見られることを、とても楽しみにしているそうだ。

 

 ヴィンセントが1人で歩けなくなり、1日のほとんどをベッドの上で過ごすようになってから、1年半。

 ヴィンセントは療養に専念し、セリーナ達は治療法を探すことに奔走(ほんそう)する日々だった。この1年半、セリーナはヴィンセントと一緒に新しいことをする機会が全く無かったらしい。


 食事も彼がマナーを気にして1人で食べるようになってからは、新しい料理を一緒に食べて「美味しいね」と笑い合うことも少なくなってしまった。


「ジョアンナさんのおかげで、息子と久しぶりに一緒に何かができることが本当に嬉しいのよ」


 そう言って、少し泣き出しそうな顔で微笑んだセリーナ。そんな彼女を見て、ジョアンナの胸はギュッと締め付けられた。

 

 ジョアンナの少し前を歩くセリーナ。彼女の歩みはいつもより少しだけ早かった。




 ヴィンセントは夕食を早めにとり、ベッドの上でソワソワしながら聖水を眺めていた。その瞳は優しい色をしている。

 

 この聖水は、初めてジョアンナから貰ったものだ。いつもベッドの傍に置いている。聖水はビンを振ると中の水がキラキラと光り綺麗なので、横になりながらよく眺めているのだ。


 ドアを叩く音が聞こえ、ダニーと訪ねてきた使いの者が話している声が(かす)かに聞こえてきた。

 どうやら2人も食事を終えたらしく、そろそろ部屋に来るようだ。

 

 ダニーにソファーまで移動するのを手伝ってもらい、左手に手袋をしていることを確認した。

 そして、マスクや服がズレて醜い肌が出ていないかを、ダニーに確認してもらう。


 ヴィンセントが手で髪を軽く整えていると、ドアが叩かれた。




 ヴィンセントの部屋に行くと、彼はすでに席に着いていた。

 テーブルの上には焼き菓子が並び、紙や筆記用具も用意されている。


 いつも通りにヴィンセントの右隣にジョアンナが座り、向かいにはセリーナが座った。

 少しの時間、お茶を飲みながら雑談をして場が和んだところで、[10連ガチャ]の話に移った。


 夕食の前に、セリーナには画面の情報を書いた紙を届けている。

 食事の席でも軽く説明をしていたので、すぐに[10連ガチャ]を回すことになった。

 


 2人は良く似た好奇心に満ちた瞳で、ジョアンナを見つめている。

 ジョアンナはそんな2人の視線を受けて、少し緊張していた。


「それでは、[10連ガチャ]のボタンを押します」


 ジョアンナが少し震えた指でボタンを押すと「10連ガチャ画面」が表示された。画面はこんな感じになっている。

 

 左側には今は何も無いが、[スタート]を押すと10枚のカードが出てくるはずだ。

 

 右側の上部分には四角の枠があり、その中に……

  「ログインチケット:1枚」

  「ガチャチケット:10枚 (うち本日失効:10枚)」

 と、持っているチケットの名前と枚数が書かれている。

 

 そしてその下に、[スタート]のボタンがある。



 ジョアンナは2人に画面を説明しながら、[スタート]を押してみた。


 ボタンを押すとすぐに、左側の何も無かった画面に、左上から1枚ずつ裏返しのカードが出てきた。

 カードが10枚並ぶと、画面がピカッと1回光り、全てのカードが同時にめくられた。

 

 10枚のうち、2枚のカードが光り輝いている。


 手に入ったのは……

 聖水×4

 デスパル草×2

 初級ポーション×1

 ガチャチケット(有効期限:1年間):2枚×1

 中級ポーション×1(R)

 女神の涙×1(SSR)


 光っているカードは「中級ポーション」と「女神の涙」だ。

 

「…………中級ポーションは、ビンの絵の真ん中に『R』の文字。女神の涙は、不思議な色合いの(しずく)の絵の真ん中に『SSR』の文字が書かれています」


 ジョアンナは説明を終えると、画面を見ながら手に入れた物を紙に書いて2人に渡した。

 そして、紙を渡す時に……さっきまでの楽しそうな顔が嘘のように、セリーナの表情が曇っていることに気がつく。

 

 ジョアンナは、彼女に負担をかけている事を自覚していたので、申し訳なくなり(うつむ)いてしまう。

 

 すると、その様子に気がついたヴィンセントがジョアンナの手をそっと握った。驚いて彼を見ると優しい瞳で一つ頷き、優しく微笑んだ。

「大丈夫だよ」と言ってくれているのが言葉はなくても伝わってきて、ジョアンナの視界が少しボヤける。触れている手が温かくて、そこからヴィンセントの優しさが流れ込んでくるようだ。


 ヴィンセントの手の温もりに励まされながらセリーナを見つめていると、彼女はハッとしたように顔を上げて、迷いながら口を開いた。


「この『女神の涙』なんだけど、記憶が定かではないけれど……恐らく伝承に書かれていた伝説の物なの。確か……世界を救うような力が込められた物だった気がするわ……」


 それを聞いてジョアンナもヴィンセントも、言葉が出ないほど驚いた。

 無意識にヴィンセントは手に力が入り、ジョアンナの手をキツく握りしめてしまう。

 ヴィンセントは、それに驚いて自分を見上げたジョアンナに気がつき「ごめん」と言ってパッと手を離す。


 落ち着かない様子で、焼き菓子を頬張るヴィンセント。

 顔を真っ赤に染めて、お茶を飲みはじめたジョアンナ。


 セリーナはそんな2人を微笑ましく思いながら見つめている。セリーナの視線に気がついた2人は、揃って気まずげに俯いてしまった。


 さっきまでの緊迫した空気は霧散(むさん)し、3人はそれぞれお茶や焼き菓子に手をつけて気を紛らせた。


 少しの雑談を交え2人が落ち着いてきた頃、セリーナは真剣な顔でいくつかの指示をジョアンナに出した。

 

 ・ケルヴィンが戻るまで、[10連ガチャ]は回さないこと

 ・女神の涙について、ケルヴィンが戻るまで絶対に口外しないこと

 ・女神の涙は、[アイテムボックス]から取り出さないこと


 ジョアンナはそれを真剣に聞いて、忘れないように頭に刻み込んだ。

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