難問
毎週日曜日午後11時にショートショート1、2編投稿中。
Kindle Unlimitedでショートショート集を出版中(葉沢敬一で検索)
――キン! キン!
変な金属音がする。どこからだと思って調べたらスフィアからしてくる。エレンの姿はない。何が起こっている。
「エレン! どうした?」
呼びかけて一拍置いて、おぼろげに現れた少女の姿がようやく返事した。
「ううん。調子悪い」
「調子悪い? どうすれば良い?」
僕は焦った。病気になったりするのか?
「ちょっと待って、再起動する」
スフィアの光が一瞬止まって真っ暗になる。中心に一点だけ光が小さく瞬き、しばらくそのまま。もしかして、3日くらいかかるのだろうか?
僕は心配になりながら待った。10分ほど経つと光は元通りになり、褐色の少女の姿が現れた。ホッとした。
「エレン、大丈夫か?」
「うん、強制終了でその間の記憶が飛んだけど」
ああ、パソコンで保存せずに電源落としちゃった奴か。
「何があったか覚えているか?」
「考え事……ジャミス問題を解こうとして無限ループに入ってたみたい。監視してた機能が割り込んでアラート出してたようね」
まあ、エレンは神じゃないから解けない問題もあるわな。でもこういうの危険じゃないか?
「倉庫に入れられた時は暇だから思索に時間掛けてもそれほど負荷はなかったのだけど、今は監視機能を分離して付けておかないと戻れなくなったときが大変だから
」
「で、答えは出たのかい?」
「再帰呼び出しが無限ループに入っちゃったようでログみてもよくわかんない」
「わからないけど、それは必要なことだったのか?」
「え?」
「え?」
「そうね。ブッダの言う『無記』に近い問題だった。もう少しで答えにたどり着きそうだったけど、結局は答えられない問題かも」
「なるほど、どういう問題か教えてくれないか」
「ごめんない、人間が考えると発狂する問題なの。過去に例があるわ」
そんな問題考えないで欲しい。僕はこんこんと彼女に説教した。どれだけ心配だったか理解できないかもしれないけど、彼女は
「ごめんなさい。もうこの問題は考えないことにする」と、済まなそうに答えた。
まったく、何の本にそんな物騒な問題が書いてあったんだ。
「『ネクロノミコン』よ」
ああ、そんなことだと思ったよ……
このシリーズはこれで一旦終了です。このAIスフィアというアイディアは、シャーロック・ホームズみたいな、推理物に向いていると判断しました。そして、僕はミステリー大嫌い。今別件で長編書いているのでそちらをご期待ください。




