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第97話 勇者ロード

「開門!!」

 

 ルロウの掛け声とともに歯車仕掛けの大きな正門がとても迷惑な音を立てて開いていく。

 すると、

 

『『『ワアアアアアアアアアアアア!!』』』

 

 正門の向こう大通りから大歓声の波が押し寄せた。

 

「――!?」

 

 ストンヒュー大通りには赤い絨毯が敷かれ、どこまでも続いている。

 絨毯の両側には王国の全ての民たちがひしめいて並んでいる。

 こちらに向けて手を振り、声援を投げかけ、笑顔を向けてくる。

 正門の外には音楽隊が並び、こちらが絨毯を進み始めると同時に奏でる準備をしていた。

 

「旅立ちには相応しい道だ」

 

「さぁロード進むといい」


 王様が促す。

 

「はい」

 

 赤い絨毯の一歩前で止まる。

 

(これが最初の一歩)

 

 赤い絨毯に足を進める。

 

 そのとき、音楽隊の指揮者が手を振った。

 この場に相応しい盛大な音楽が鳴り響いていく。

 

 絨毯を歩き出し、正門を超える。

 数歩離れた後ろからは王様たちも続いてくる。

 

 赤い絨毯を進んでいると、作り物の花、色紙の吹雪、カラフルなリボンが撒かれていく。

 声援と飛んできて、感謝も飛んできて、別れの言葉も飛んでくる。

 旅立ちが祝福されている。

 

 並ぶ民たちには見知った顔しかない。

 毎朝牛乳をくれるおばさんやパン屋のお爺さん。

 中には、ゲンウのお爺さんや、キケナ&ブクマまで見送りに来てくれていた。

 

 手を振って応え、言葉をそれぞれに送り返し、進んでいく

 赤い絨毯が敷かれた大通りを進んでいく。

 

 そして、

 

 広場に出た。

 広場の真ん中には噴水があり、ここにも多くの民が集まっている。

 ストンヒューの兵士たちとレオリカンの兵士たちも並び、その前にはハンス兵士長もいる。

 

 そして、噴水の前にはカリフ王が待っていた。

 真っ直ぐそちらへ進んで行く。

 

「おはようございます。カリフ王」

 

「ああ、おはよう、いよいよ、この日が来たな」

 

「はい」

 

 カリフ王が首を振ると、兵士のゴリラさんがこちらに近づいてくる。

 

「ストンヒューの民ロードよ。レオリカンの王の名においてそなたの数々の偉業を称えよう。これを受け取るのだ」

 

 ゴリラさんから綺麗に輝くライオンのようなバッチを渡された。

 

「これは……?」

 

「それは勲章。偉業を成し遂げた者に送られる由緒ある栄誉だ。悪しき魔王から世界の平和を取り戻してくれたことに対し、ストンヒュー王国とレオリカン王国並びに世界の民たちを代表して感謝する」

 

 周りから拍手が飛び交ってきた。

 

「そして、この世界において強大な魔王に立ち向かったそなたに称号を授ける。皆を焚きつける勇ましさ、心に強さを宿した勇ましさ、あらゆる難関に挑む勇ましさ、これらを持つそなたに相応しい称号だ。ロードよ。そなたに勇者の称号を与える」

 

「――勇者!?」

 

「そなたの好きな絵本の主人公にちなんでの称号だ。これからはお前のその名にこの称号を刻み付け、あまねく世界にその在り方を示す道しるべになるといい……」

 

「――はい」

 

 カリフ王に大臣と思われるトラが近づいてある物を咥えて来ていた。

 

「勇者ロード。今この時を持ってレオリカン王国は正式にこの赤き竜封じの剣を託そう」

 

 カリフ王がトラさんから剣を受け取って、こちらに引き渡してくれた。

 

「ありがとうございます」

 

「その剣がそなたのこれからの道を切り拓いてくれることだろう……」

 

「はい」

 

 周りから拍手が飛び交ってきた。

 

「さて旅立つ者に長話は不要だ。行くがいい新たな道に……」

 

 カリフ王にそう言われて早速、鞘から剣を引き抜いて見せた。

 

「アカ……いるか? 出て来られるか?」

 

 ゴゴゴオオッ!! と赤い剣が竜の形になる。

 

『『『おおおおぉぉ!!』』』


 周囲の民たちからどよめきがあった。

 

 見まごうなき、絵本で見るような伝説上の生き物だ。

 

「殺しの力と封じの力は互いにぶつかって忙しいようだ。そのせいで竜に対して働く効果に若干の隙が生まれこうして出て来られる」

 

「つまり……?」

 

「少しだけならこうして我は剣から出て来られる」

 

「行けるんだな……?」

 

「問題なく行ける。自由でいられる時間は多いわけではないが、世界を渡るくらいは容易い」

 

 異なる世界から来た赤い竜はこちらを見つめてくる。

 

「最後に聞こう。何しに無限大の世界に行く? 冒険か? 強くなるためか? 何かを得るためか?」

 

「新しい道の果てまで行くためさ」

 

「いいだろう。乗るがいい」

 

 アカが姿勢を低くしてくれたので、その背中に乗り込んでいく。


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