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第93話 それがここでの……最後の日

 ~~タイトル考え中~~

 

 ここからは最後の七日間。

 皆の強さが魔王から王国を取り戻した後の事。

 人と動物の民たちは以前と変わらない日々を送っている。

 

 1日目。

 青年は友達の後輩の使用人と昼食を一緒にする。

 そこはいつもの来る食堂。

 青年が話を進める度に、後輩の使用人は大袈裟な反応を見せる。

 後輩の隣には全く話の内容についていけていない女性の使用人長がいる。

 ただ黙って話を聞く彼女は、ときおり隣の使用人の反応に驚いて目をパチパチと瞬きさせていた。

 青年はその時の日常がかけがえのない物に思えた。

 

 

 二日目。

 この日、魔王に荒らされた宮殿を綺麗に戻す作業にひと段落付いた。

 夜が訪れると、宮殿で盛大なパーティが開かれた。

 ストンヒュー宮殿を開放し、国中の民も集まってきた。

 レオリカンの王様や兵士たちもこのパーティを楽しんでいた。

 魔王を倒した青年は誰も彼もが話しかけてきたので顔には見せないが少し困っていた。

 数日間、色々なことがあったので疲れていたんだ。

 

 もてはやされるのはイヤじゃなかったけど……。

 

 そこで青年は皆にこれからのことを話した。

 

 冒険の旅に出発すると。

 

 

 3日目。

 疲れの反動が出た。

 朝から晩まで寝ていた。

 起きたのは日付が変わる前。

 

 えっっっっ?

 

 

 4日目。

 青年は浜辺にいるカメのお爺さんに会いに行く。

 魔王に勝ったことを伝えると喜んでくれた。

 けれど、秘宝玉が偽物だったことと壊れてしまったことを伝えると、

 騙されたことに深く悲しんで、失ってしまったことについては怒られた。

 去り際にお世話になったお礼を言う。

 

 

 5日目。

 朝起きて久しぶりにジョギングをした。

 部屋に戻って使用人の服を着がえる。

 青年の本来の仕事だ。

 宮殿内の広間や階段の掃除をして、後輩たちに礼儀作法や挨拶の仕方を指導する。

 ときには宮殿内に暮らす大臣たちの子供たちの勉強も見てあげる。

 

 王子様の要望で兵士たちに稽古をつけてあげる。

 前は誰にも勝つことは出来なかったが、もう誰にも負けることはなかった。

 ときに戦うことも必要だと知ったからだ。

 自分の強さを教えてあげることで、皆はもっと強くなることを目指してくれる。

 

 これで青年がいなくなっても世界は大丈夫だ。

 

 使用人としての最後の日もかけがえのない思い出になった。

 

 

 6日目。

 朝から街に出かける。

 普通に天気のいい日だった。

 見知った人たちと何の変哲もない会話をする。

 いつか竜の事件のとき支援活動をしていた。

 その時の被害者たちが会いに来てくれお礼を言ってくれた。

 

 夜は街の広場で皆が計画していたお別れ会を開いてくれた。

 宮殿の王子様や兵士たち、使用人たちも皆来てた。

 とても騒がしく楽しい一日になる。

 その日のことを忘れないように胸に刻んだ。

 

 

 

 

 7日目。

 

 最後の日……。

 

 ………………………………。

 

 ………………………………。

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 ストンヒュー宮殿・自分の部屋。

 

「うう~~ううん……」

 

 ロードは眠りから目を覚ました。

 

「あれ…………?」

 

 朝の光が部屋に差し込んでいた。

 

「机……」

 

 気づくと机にもたれ掛かって眠っていたようだった

 

(あっ……そうか……書いてる途中で……寝たのか)

 

 机の上には、きのう夜遅くまで書いていた筆記長と、明かりのついたランタンが、

 

(――ランタンついたままだ! 危ない危ない!)

 

 ランタンのスイッチを切る。

 

「ふ~~~~」

 

 椅子にもたれ掛かって、窓の外を見る。

 

(今日だよな……)

(とうとうこの日が来たか)

 

「行かないとな……」

 

 椅子から立ち上がった。

 

 コンコンと扉からノックの音が聞こえて来た。

 

『ロードくん……お目覚めでしょうか?』

 

 扉の向こうから子供の頃からよく知っているビッシィさんの声がした。

 

「――はい!」

 

『仕立て屋さんがいらっしゃいました。支度の方はよろしいでしょうか?』

 

 部屋を見渡すと、少し部屋が乱れているような気がした。

 

「えっと……すみませんまだです。少し待ってください」

 

『はい、わかりました。待ちますね』

 

 部屋の整理整頓を少しだけすることにした。

 

 ふと、時計を確認すると針が10時過ぎを示していた。

 

(もうこんな時間だったのか)

(最後の最後で……寝坊したな)

(いつもだったらあいつらが……)

(いや、もう子供の頃じゃないか)

 

(けど……)

 

「何も……こんな時だけ一人にすることないだろう」

 

 いつもなら、その寝床で寝ているはずの友達たち。

 けど、今はそこには居なかった。

 

 箒で軽く床を掃き、乾拭きで窓を軽く磨いていく。

 

(よし、あとは………………)

(あっ……これ書いておかないとな)

 

 夜遅くまで書いていた筆記長は、まだ書きかけだった。

 

(最後の日……か)

(と言っても、今日だからな~~なにを書こう)

(まぁ……ストレートに行こう)

 

(今日やることを書けばいいんだ)

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 七日目。

 

 最後の日。

 

 

 青年は夢にまで見た冒険の旅に出た。

 

 


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