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第91話 これがオレの教えたかった強さ

「これが……」

 

 両手を開くと、宝石よりもの美しい光り輝く玉があった。

 

「これがオレの磨き上げた強さ……秘宝玉。綺麗だ……」

 

 自分に今まであったものを見て頬に一筋の歓喜の涙が伝っていく。

 

 しかし、魔王の黒い秘宝玉と違う。

 まるで光をそのまま玉の形に整えただけの、とても不安定な魂のような塊だった。

 

(掴んでいる感覚はない、これは一時の力だ。けど)

 

「ひ、秘宝っ!? いや形になっていない。雑魚がっ! 本物の秘宝玉の1%にも達していないぞお!」

 

 大剣を構え飛び出してきた。

 

「今この時だけでいい。道を切り開くために、勇気よ剣に変われ」

 

 両手を大剣に振る。

 

 ガキーーーーン!!

 

 右手に光の剣が出来上がって、大剣を受け止めることが出来た。

 

(それでも、力に押し切られるな)

 

「雑魚は最強の真似しかできんのかああ!」

 

「アカの力を自分のものの様に謳うお前に言われたくはない」

 

 ガキン!! 受け止めていた大剣を左に逸らす。

 

「――!?」

 

「これが最強と謳う強さなのか?」

 

 魔王が飛び下がって距離を取っていく。

 

「オレたちは雑魚じゃなかったのか? どうして下がっていくんだ?」

 

「だ、黙れ!!」

 

 そう言いながら後ろへどんどん下がっていく。

 黒の衣を振って棘を放ってくる。

 雨のような降る棘を剣で弾いていく。

 全て防ぐことは出来ないが、身体に掠らせながら前へ進んでいく。

 走る速度は一歩も落ちない。

 痛みに耐える強さが表情に現れているのがわかる。

 

「最強と雑魚の力の差は絶対的だったはずだ!? どうしてこの雑魚は逃げない!!」

 

 ガクンーーと後ろに下がろうとした魔王の片膝が崩れた。

 

「――くっ!」

 

「あ、悪鬼の夜行ぉ!!」

 

 大剣の先から撃たれた黒い砲撃が、前から迫ってきた。

 

「ぐうああ!!」

 

 剣を持っていた右手に直撃した。

 けど、走っている足は止めずに進んで行く。

 

「その手で剣が振れるか!!」

 

 大剣を振りかぶって迎え撃って来た。

 振られる大剣の剣筋を正確に見切り、こちらは左手を振った。

 

「オレは両利きだ」

 

 左手にもう一つの剣を現わして敵に振った。

 魔王は斬り裂かれ、また離れて行く。

 

「ざ、雑魚があああああああ!!」

 

 魔王の両腕がそれぞれ刀に変わっていく。

 

「オレの真似か……」

 

「剣が2本使えるのがお前の強さならこうするまでだ! 雑魚に出来て、最強のオレに出来ないことなどない!! オレが最強だああ!!」


「人の真似をして最強を謳うのか? 自分の信じていた強さを捨ててしまった時点で身の程が知れるぞ」

 

「ほざけ――斬り捌く!!」

 

 魔王が2本の刀を持って走り出してくる。

 

(それはガラスの強さだよ)

 

 新たに両手で光の剣を構え直し、

 両側から来る剣を、それぞれ受け流してやった。

 

「ぐっ!?」

 

 ――手首を素早く返し両側から斬り結ぶ。

 斬った後、魔王の背後に通り過ぎても歩き続け前を見る。

 

(オレの教えたかった強さ)

(どんな道が待っていようとも振り返らずに真っ直ぐ前へ突き進む心の強さ)

(いかなる道をも切り拓く勇ましい強さ)

 

 ――後ろから振り返った魔王が襲い掛かろうとする。

 

「それが絵本から学んだオレだけの強さだ」

 

 夜空を見上げて歩みを止める。

 ――斬られた魔王から黒い靄が噴き出した。

 

「ぐおおおおおおおおお!!」

 

 麻鬼刀を取り出して投げ放つ。

 

「ち、力をよこせえええええ!」

 

 振り向きざまに剣で弾くと、麻鬼刀が宙を回っていく。

 

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