第86話 ストンヒュー上空決戦
ストンヒューの上空。
ロードはアカに乗って、クロドラの体内に潜んだ魔王と対峙していた。
「はぁ、はぁ、、、剣を納めてくれないか?」
アカに言われた通り、ロードは竜殺しの剣を鞘に納めた。
「大丈夫か?」
「余裕はあまりない」
「もう少しだけ頑張ってくれ、アカの力がないとクロドラはどうにもならない」
『雑魚が!!』
クロドラが黒い炎を吐いてくる。
「――魔王はどこだ!」
「たぶんクロドラの中だ! あそこから引きずり出さないといけない!」
(竜殺しの剣で黒い炎は消えた。あの竜にもこの剣は有効なはずだ)
「何とかして近づいてくれ! この剣を突き刺せばクロドラは倒せる!」
「心得た。が、ここぞというときまで剣は抜くな。鞘に納められていてもビリビリと毒のようなものに浸食されていく気分なんだ」
「……わかった」
『ザオオオオオ!!』黒い竜がさらに上空へ飛んでいく。
「しっかり捕まっていろ!」
「――――いっっっ!?」
空を飛び進んでいると空気が顔を叩いてくる。けど我慢。
(離れたか。さっきの効果を見ればこの剣は脅威でしかないからな)
「お、追いつけてないぞ!」
「くっ!!」
(力のほとんどを持っていたクロドラが早いに決まってるか)
(追いつければ剣を刺すだけなんだ!)
クロドラが進んだところにぴったりと合わせて追いかける。
『ザオオオオオオオオオオオオ!!』
唐突に振りむいて黒い炎が吐き出してきた。
「うわああっ!!」
アカは左へ避けてくれた。
そこから上手くクロドラの視界に入らないように移動し、
前の黒い竜はこちらを見失ったようだった。
そうして、何とかクロドラに並ぶことが出来て、
「――行け!!」
アカがロードに合図を送る。
「ぐっ!! おおおおおお!!」
もの凄い空気の壁にぶつかり続けながらも、ロードはクロドラに飛び込んでいった。
空中で竜殺しの剣を引き抜いて、黒い竜に突き立てる。
だが、クロドラは身体を横に滑らせるようにして上に回って行き、剣を回避されてしまった。
そしてロードは何もなくなってしまった空を落ちる。
「うわああああああああああああ!!」
けど、アカが背中で受け止めてくれた。
「――飛び移るのが遅い!」
「あ、あの状況で飛ぶのは難しかったんだ!」
また、竜殺しの剣から逃げていくクロドラを追いかける。
「もう飛び移らない方がいい! 簡単に避けられたうえタイミングも計られたはずだ!」
「次やれば、アイツは助けに来るアカを抑えてオレは真っ逆さまに落ちるわけか。そんなの御免だ」
クロドラが大通りに向かおうとしていた。
『ザオオオオオオ!!』
そうさせないためにアカが炎を放って誘導した。
すると、クロドラは背中から大量の棘が噴出させ襲い掛からせた。
それをアカは、上に逸れて躱していった。
次に、クロドラは真っ黒い翼をどこまでも広げていくと、後ろから追いすがるこちらを包み込んでくる。
覆い被さって来たのは、きっと翼ではなく真っ黒い布だろう。
(何も見え――なんか熱いぞ!?)
おそらくクロドラが黒い布ごと、こちらを焼き尽くそうとしている。
けれど、黒い布も黒い炎も竜殺しの剣で消し去って脱出した。
「どこ行った!?」
「夜空が――暗すぎてわからない!!」
だが、真下で微かな風を切る音がした。
「――下!!」
ロードの言う直後、アカは思いっきりクロドラの突撃を受けた。
「グオオッ!!」
さらに尻尾が打ちつけられた。
(ここで反撃!? くっ、竜殺しの剣に安心しきっていた)
反撃はまだ続く。クロドラは持っていた大きな家を投げつけて来た。
アカは素早く下を潜り大きな家を避けた。
そこに、クロドラは口から無数の黒い棘を発射させる。
アカは何とか上に避ける。
クロドラから大きな黒い炎弾が吐き出された。
「――左から来る!」
移動したクロドラに、アカは気づいていないようだったの知らせてやる。
「グヌウッ!!」
身体は避けられたものの、左の翼に黒い炎弾が直撃してしまった。
「大丈夫か!? 飛べるか!?」
「もう持たない、次で賭ける! 準備しろ!」
「わ、わかった!」
(だいぶ、疲れが出ているみたいだ。それはそうか、ずっとあんなのと戦っていたんだから……)
逃げるクロドラに、アカは何とか追いすがっていく。




