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第85話 勝つために必要なのは彼女

 ストンヒュー宮殿・魔王の間。

 

「んんんん、んんんーん!!」

 

 捕まった彼女が涙を流しながら僕に向かって何かを訴えていた。

 

「うるさい!!」

 

 魔王が手に力を加え人質の頭を絞めていく。

 

「んんんん!!」

 

「や、やめろ……魔王!」

 

(何を考えているんだ。これでは今までと同じだ)

(関係ない……秘宝玉があろうとなかろうと……)

(むしろなくなってくれてスッキリした)

(手を伸ばすべきは、彼女なんだ)

(最後に必要なのはダラネーさんだけなんだ)

 

 手元にあった石を魔王に投げた。

 

「グッ!!」

 

 顔に石をぶつけると、一瞬だけ魔王がひるんだ。

 

「捌く!」

 

 すぐにダラネーさんを斬ろうとして、右手を刀の形に変えていく。

 

 けど、その顔に上着をバサッと被せた。

 

「――ぬお!!」

 

 さらに魔王の顔に思いっきり飛び蹴りを放ってやった。

 

「グオオッ!」

 

 思いっきり仰け反った魔王は、その手から人質に取っていたダラネーさんを離してくれた。

 宙に放り出された彼女を受け止め、口元の黒い布を破いてあげる。

 

「げぼっ!! おぼっ!! ぜ、ぜんばぁ~~~~い」

 

「遅くなってごめんな……」

 

 直ぐに手足の黒い布も破いて捨てる。

 

 そのとき、魔王の間の扉からオオカミたちが入って来る。

 

「ルロウ!? どうして――ここに」

 

「あの子がいないんだチュウ! あのだらしない顔の……」

 

「――だらしない顔って誰の事お!!」

 

「やっぱりここにいたチー!」「うわっ! 魔王チャア!!」

 

「雑魚が!! やりおったな!!」

 

 魔王が刀を構えて走って来ていた。

 

 

「――」


「ひっっっ!?」

 

 彼女を抱えてその場から下がると、魔王が今まで立っていた場所に刀を空振らせていた。

 

「ルロウ! 彼女を連れていけ!」

 

 ダラネーさんを床に降ろす。

 

「よし! 乗れ!」

 

「うえっっ!? 乗るの怖い!」

 

「大丈夫チュウ」「ここから逃げるんだチー」「ロードの邪魔になるチャア」

 

「う、うん」

 

 ダラネーさんがルロウの背中に跨った。

 

「――行くぞ!」

 

 入って来た扉の方へ走り出す。

 

 

「雑魚が逃がすか!」

 

 魔王の腕が黒い布を纏って大きく伸び、扉のある場所を壊して崩していった。

 

『『『!?』』』

 

「――なっ!」

 

「これが本物の秘宝玉だ!」

 

 足元にあった石を掴んで投げる。

 石は軽く手で払われた。

 けど、その隙に竜殺しの剣までたどり着て拾うことができた。

 そして魔王に向かって走り出していく。

 

「ざっっっこっ!!」

 

 魔王が刀を振ってくる。

 それを、跳んで躱して魔王の頭上を飛び越えていく。

 背後に回って、剣を背中から突き刺した。

 

「グオオオッ!!」

 

 こちらに振り返りながら刀を振ってきたが、難なく躱した。

 

「もう秘宝玉がなくても勝てることは分かっているんだ。ダラネーさんが手に入ればもう負けない」

 

 魔王を前に剣を鋭く構える。

 

「お、の、れ~~~~」

 

「魔王アグロ―ニ、これで最後だ……何か言い残すことはあるか……オレに出来ることなら叶えてやることも――」

 

「最後はお前だあ!! 雑魚があああああ!!」

 

(何をする気だ……?)

 

「避けろ!!」「「「チュー」」」「せんぱい!!」

 

 背後から真っ黒い竜が突撃してきた。

 間一髪、急いで横に飛び込んでこれを避けることができた。

 

「クロドラがどうして……アカは?」

 

「ロード!」「魔王がいないチー」

 

「――――!? (どこに行った?)」

 

 クロドラが過ぎ去ると広間のどこにも魔王が見当たらなかった。

 

「ク、クロドラに乗って逃げたんだチャア」

 

「――魔王!! 逃げるのか!!」

 

 空を飛んでいくクロドラに向かって叫んだ。

 

『雑魚が! 誰が逃げるか! 思い知らせてやる最強の力を!!』

 

 ストンヒューの上空で停止したクロドラは口に黒い炎を溜め込んでいた。

 

「おい、アレはアカと同じヤツじゃないか!」


 ルロウが察した。

 

 そして、溜め込んだ黒い炎を吐きだすと大きな球体となって形を整えていく。

 

「炎の玉チュウ!」「アレを落とす気だチー」「やばいチャア!! 下で皆が戦ってるチャア」

 

「アカアアアアアアアア!!」

 

 力の限り叫んで呼ぶと、

 

「飛べ!!」

 

 全速力で赤い竜が目の前を通り過ぎようとしていたので、

 タッ! とその場で跳んで、上手く乗り込むことに成功した。

 

「すまない。アレを止められなかった……」


 アカが謝る。

 

「道で戦ってる方には?」


 ロードが訊く。

 

「向かわせていない、まだ守りきれている」

 

「それならいい」

 

 上空の黒い炎の球体をアカに乗って目指していく。

 

「――アカ!! 急いでくれ!!」

 

『雑魚共がもう手遅れだ!! オレが最強だあああああ!!』

 

 大きな黒い炎の玉の塊は今にも弾けそうだった。

 猛スピードで飛ぶアカの上で、剣を投げ放つ体勢をとっていく。

 

「外すなよ!!」

 

「外さないさ、こういう時のために訓練して来たんだ……」

 

 誰もがその瞬間、悪いことが起きないように祈っていただろう。

 しっかり狙いを定めて、竜殺しの剣を投げ射った。

 真っ直ぐと流れる星のように黒い炎の玉に向かっていく。

 そうして黒い炎の玉に突き刺さっていった。

 

(黒い炎は竜の炎、つまり竜殺しの剣が効く)

 

 黒い炎が剣の接触したところから広がるように消え去っていく。

 

『――な、なんだと!!!?』

 

 消えたことで誰もが歓喜の声を上げただろう。

 そして剣が落ちてくる。

 アカが危険だというのに向かってくれる。

 それを右手で掴みとる。

 

「お前の思い通りにはならない」

 

 上空でロードがアカに乗って、クロドラの中にいる魔王に宣言した。

 

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