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第82話 ロードVSアグロ―ニ

 ストンヒュー宮殿・下層。

 

 その頃、ルロウたちは宮殿内をまだ走ていたらしい。

 

「どこに行きやがったんだ? あの嬢ちゃんは……」

 

「休憩室にも食堂にも衣装部屋にもいなかったチュウ」「チーわからないチー」「どこかに移動したんだチャア」

 

「おい!! 誰かいるか!!」

 

 しーーーーんと静かに返事を待って、

 

 部屋とか曲がり角からクロヅノが現れた。

 

「魔物だチュウ!」「チッ!? ルロウ!?」「何考えてるチャア!」

 

『ガル!!』ってクロヅノに飛び掛かって噛み付くと、霧散して倒すことが出来た。

 

「こいつ一体ならオレでもやれ――――」

 

 でも、クロヅノがたくさん出て来た。

 

「いっぱい来たチュウ!」「に、逃げるチー」「早くチャア!」

 

 引き返して逃げるしかなかったらしい。

 

「がぁーーろう! どこに行きゃいいんだ!!」

 

「チュウ……あの娘、一人でこんな宮殿を歩いてるのかチュウ?」「だ、だとしたらもう魔物たちに……」「やめるチャア! 縁起でもないこと言うなチャア!」

 

「あらかた宮殿の下層は探しただろ! 外に出ちまったのかもしれない」

 

「外はもっと魔物がいるチュウ」「魔物に見つかってなければチー」「いや、絶対どこかに隠れているチャア! 諦めちゃダメチャア!!」

 

「だから、どこを探せば……!」

 

 あることに思い至ったようだ。

 

「――おい待て!! 仮に嬢ちゃんが魔物に見つかったらどうなる!!」

 

「どうなるチュウ?」「それは……国をこんな風にした奴らチー」「また何かに利用して――チャア!?」

 

「ヤバいぞ上だ! 上にいる!」

 

 そうして宮殿を登って行った。

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 ストンヒュー宮殿・魔王の間。


「うおおおおおおお!!」

 

 魔王が刀を振り下ろしてくる。

 ロードは左手に持った剣で、うまく受け止めて下へ流す。

 そうして下を向いた剣を、左手から右手に持ち替えて素早く手首を返し、魔王を斬りつけるために振り上げた。

 振り上げられた剣をやり過ごすため、魔王は鎧に包まれた腕を防御の構えにして待ち受けた。

 それを見たので、振り上げた剣をパッと右手から離し、落ちるところをパシッと左手で掴む。

 左手を振る――と同時に飛び込んで、ズバッ!! と魔王を横から斬りつけ背後に通り過ぎていく。

 

「グオオウ!」

 

 互いに背中を向け合った状態から、同時に振り返りながら手に持った刃で薙ぐ。

 キーーンッ! やはり相手の力が強すぎて、右手の剣が弾かれた。

 けどわかっていたから、飛んでいく前に、左手で剣を素早く掴み取れた。

 でも、弾かれた勢いが残っているので、手元で8の字に回して美しく舞わせてあげる。

 8の字に乱れる剣先の移動は、魔王の目に“次はどこから振られてくるのか全く想像さえ出来ない剣の舞”を映していたことだろう。

 そして前へ飛び出す。

 魔王はおおよそ“左手に剣を持っているから自分の右から攻撃が来る”と予想して右側に防御の構えを取って見せた。

 だから、左手の剣を上に投げ飛ばした。

 左から右に半円を描くように投げ飛した。

 それを右手でしっかりと掴んだ。

 

「――!?」

 

 その一瞬の出来事は、

 魔王から見れば、右の防御を無駄にさせられ左からの攻撃を成功された瞬間だった。

 

「――ぐあ!」

 

 斬りつけらたことがたまらいという表情で後ろへ下がっていった。

 

「――何だ!! その、戦い方はああ!! ふざけおって!!」

 

「油断しすぎたな最強……」

 

 遊ぶように右手と左手に剣を移動させる。

 実際には遊んでいる訳ではなく手首の調子を確認しての行動だったが、

 

「雑魚がああああああああ!!」

 

 遊んでいるように見られ怒りを表した。

 背中の揺らめく黒衣のマントに左腕を突っ込んでいた。

 何かを取り出すような仕草をしていた。

 

(もう何もさせない)

「――強さを教えに来たと言っただろ!!」

 

 ロードは決着をつけるために魔王に向かって走り出した。

 魔王が刀を振ってこようとも、防御に徹しようとも、必ずその隙をつくために目を見開いた。

 魔王が何かを掴んで引っ張ったが関係ない。

 決着をつける突きを放つ。

 

「――これが強さだ!」

 

 しかし、決着をつける突きを止めてしまった。

 魔王が掴み引っ張り上げて来たモノに怖気が走ったから。

 その場に居てはいけない友達が目の前に現れたから。

 

(――――――)

 

 一瞬思考が停止したが、魔王が友達の頭を見せつけてきた。

 

(えっっ――)

 

 疲れ切った顔は恐怖を混ぜ込んで、その目からダラダラと大量の涙が流れていた。

 彼女は口元、手首、足首を黒衣の布で縛られ、声も出せず身動きも取れない姿でいた。

 

(ダラネーさん!?)

 

「――ごほっ!!」

 

 そのとき、重い蹴りが腹部に打ち込まれ後ろに吹っ飛ばされた。

 

「――――んんんっ!?」

 

「こんなもので気を乱すから雑魚なのだああ!!」

 

「がはっ!! ごほっ!!」

 

 倒れ伏せた状態から顔を上げて魔王を見ていた。

 

「オレが教えてやる。この世界の雑魚さを!!」

 

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