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第80話 別々の行動

 宮殿に続く道を行くと前から沢山のクロヅノたちが現れる。

 

「ぜ、前方に敵がいます!」

 

 200名ほどの兵士たちがそれぞれ構える。

 人は各々剣を抜き、イヌは唸って、サルは槍を構え、キジが嘴を鳴らせ、サイやゾウが突撃のため足を鳴らせている。

 

「切り開け!!」


 ハンスの声を聞いて、

 

『『『おおおおおおおおおおお!!』』』

 

 一斉に魔物に戦いを挑んで行った。

 

 ▼ ▼ ▼

 

「――王子! ロード! 我々は極力後ろについて魔王と戦うための力を温存し……」

 

「うわっ!!」「おうぅ!!」「えああ゛!!」

 

 その時、前で戦っていた衛兵たちが吹き飛ばされた。

 

「衛兵長! これ以上進めません!」

 

 彼らを吹き飛ばしたのは大きな黒い鬼だった。

 

(カリフ王の言っていたオオクロヅノか……)

 

「私が前に出る! お前たちは左右から攻撃を仕掛けろ!」


 ハンスが合図を送る。


「は、はい!!」「では、右はオレが」

 

 複数人でオオクロヅノに掛かっていった。

 

「はああああ!!」

 

 真正面からオオクロヅノに切りかかり、

 その後に続く形で左右から兵士たちが切りかかる。

 三方から切りかかることに成功したがオオクロヅノは倒せない。

 オオクロヅノが兵士長に向かって、長い棍棒を振りかぶって走ってくる。

 

「――くっ!!」

 

「肩借ります!!」

 

 ロードは兵士長の肩を足場にして跳ぶと、オオクロヅノの首を綺麗な剣筋で横から線を引いた。

 

「オガァーーーーーー!!」

 

 オオクロヅノは切り裂かれると霧散して消えた。

 

「まだだ!!」「まだいるぞ!!」

 

 また前方にオオクロヅノが現れた。

 なのでロードは走り出した。

 敵が横に振るった棍棒を跳んで避ける。

 棍棒が足の下を通り過ぎる寸前に足場にして蹴り、さらなる加速をつけ、オオクロヅノの首に到達した。

 また首に綺麗な剣筋で横から線を引く。

 だが倒せなかった、さらに頭突きをしてきた。

 

「――!!」

 

 だから背後へ飛び込むように前へ出て紙一重で回避した。

 通り過ぎる寸前で振り返って、素早く剣でオオクロヅノの背中を上から下に斬る。

 そうしてようやく魔物は霧散した。

 

「王子! オレは先に行きます!!」

 

「ロード言い忘れていたことがある! キミは強くなった!」

 

(ふふっ)

 

 先へ進む。

 進む途中でクロヅノやオオクロヅノが現れれば斬り払う。

 ルロウとその背中に乗るネズミたちもついて来ている。

 ようやく宮殿の到着した。

 扉を開けて中に乗り込んでいく。

 

 

 ▼ ▼ ▼

 

 

 ストンヒュー宮殿・玄関ホール。

 

 中に入ると宮殿の内装はいつもと変わらないエントランスのままだった。

 

「ルロウたちはダラネーさんを探してくれ!!」

 

「おう!!」

 

「別行動チュウ?」


「オレに宮殿の中はよくわからん。お前たちが案内してくれ」

 

「チー」

 

「ダラネーさんが見つかったら、すぐにここを脱出して大通りから戻るんだぞ!!」


「ロードはどうするチャア! ここで一人になるチャア!」

 

「大丈夫だって言ってるだろ……」

 

 心配性なネズミたちに言い聞かせる。

 

「わかったチュウ」「負けたら怒ってやるチー」

 

「3匹とも心配してくれて……嬉しかったよ」

 

「……もういいか? 急いでるんだ……あの娘はどこだ……?」


ルロウがネズミたちに訊いてみる。

 

「どこだチュウ?」「えっとえっとチー」「寝てるならきっと使用人の休憩室チャア!」

 

「じゃあ、あの向こうチュウ!」

 

「わかった! お前ら落ちるなよ!」

 

 ハチュが行き先を教えるとルロウが駆け出した。

 

「「「チューーーーーー!!」」」

 

 直ぐにその場から走り去っていった。

 

(――急ごう)

 

 魔王へ続く階段を急いで駆け上がる。

 段々顔つきが凛々しいものになっていくとわかる。

 また別の階段を登り、一段一段上がるごとに緊張感が増していく。

 

 廊下を走っているとクロヅノに出くわした。

 竜殺しの剣を鞘から素早く引き抜く。

 すれ違いざまにクロヅノを切りつけて倒し霧散させる。

 それからもクロヅノは何体も現れて進行を妨害してきた。

 そのたびに竜殺しの剣を振るって斬り倒し霧散させていく。

 真っ暗な中で、窓から差す僅かな光を頼りに、見にくいはずの敵を的確に倒していく。

 暗く長い廊下を走り、夜風が吹き抜ける回廊を渡り、何度も階段を駆け上がり、ひたすら魔王のいる上を目指していく。

 魔物が目の前に現れれば斬り、魔物に追われれば振りきって見失わせる。

 

 そうして最初に魔王が現れた、玉座の間の扉に辿り着いた。

 その扉は開かれたままだった。

 入ってみても玉座の間に魔王はいなかった。

 けれど、そこはいつもの玉座の間とは違って、真っ黒だった。

 奥に続いていた光景は人の目には見えづらかった。でも見えた。

 揺らめく真っ黒に靄の道がその奥にある。

 

(外から見た宮殿はいつもより高かったから、もっと上があるのは当然か)

(魔王は、この黒い道の向こうか……)

 

 不気味な感覚に足がすくみ、冷や汗が顔に伝う。

 

(皆の強さのおかげでここまで来れたんだ。こんな道を渡ることに恐怖するわけにはいかない)

 

 胸に手を当てて感じるわずかな恐れも押しとどめる。

 

(大丈夫。オレは強くなったんだ……)

(――走ろう)

 

 揺らめく真っ黒い道の中を走っていく。

 

 こうして僕は魔王の元へ行く。

 

 ルロウとハチュ、チッカ、ツア達は置き去りにされていたダラネーさんを探し、

 シャルンス王子とハンス兵士長たちは宮殿に突入するため魔物たちを排除して、

 カリフ王たちは全ての決着がつくまで大通りを守り通すために、

 アカは他の誰にも任せられない自分よりも強い黒い竜の相手を引き受けて、

 パレロット王は戦う者たちの強さを目に焼き付けるためにきっと丘から国を見守って、

 ストンヒューの民たちは平和な世界に戻ることを願って手と手を合わせ祈り続けていて、

 

 それぞれが、それぞれの場所で自分に出来ることを全力で果たしているに違いなかっただろう。

 

 

 ▼ ▼ ▼

 

 

 長い長い階段の道をずっとずっと走っていると、

 ようやく黒い大きな扉が前にたどり着いた。

 扉を開き奥へと進む。

 

 目の前に二本の角を持つ鎧武者の鬼がいた。

 

「魔王、この世界の強さを教えに来た……」

 

 赤い剣を黒い魔王に突き付けて宣言した。

 

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