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第761話 いい運転手に恵まれた

 レースは終盤に差し掛かっていた。


 1位はチーム・ウォーズサイクル。以前変わりなく二輪車の秘宝玉の効果でまるで流れ星のごとく速かった。


 そして2位のチーム・カーズアンドロードはスロプの切り札が目を覚ました。


 それは今までの自動車の姿よりスリムでスマートで、速さに特化したスーパースポーツバイクだった。


 ロードは突然の景色の代わりように驚いていたが、


「前見てロード! 安全運転するんでしょ!?」


 姿を変えたスロプがロードに喝を入れる。


「あ、ああ、うん、急ごう! どうやって運転すればいい?」


「運転は自転車と同じ要領でハンドルを握って、そして足元のトランスミッションでギアの回転数で速度を上げるんだ。ブレーキは前輪についてるよ! 各部は違うけど乗り物としては自転車と同じだからすぐ慣れるよ!」


(自転車とは言ったものの、オレはその自転車を運転したことがないんだが……)


 ロードは慣れない手つきでハンドルであるステアリングを左右に動かしてみる。


 スーパースポーツバイクがロードの意思に従って左右に動く。


 ロードはもう少し練習していた。ステアリングの掴み心地や性能を理解し、改めて手で握りなおす。


(よし、行けそうだ)


 しかし、そう思った矢先、火山地帯のデコボコ感によってバイク自体が飛び跳ねた。


「「――――!!!?」」


 ロードとスロプは突然のアクシデントに驚いた。


 スピードを出しすぎていた為にこのままでは転倒してしまいそうだったが、ロードは馬でも乗りこなすかのようにバイクの運転を支配していた。


「よっくやったね~~ロード~~もうダメかと思ったよ」


 びっくりしたスロプがロードを褒める。


「少し口を閉じてくれ、運転に集中する」


 ロードはやはりスピードの出しすぎのせいでステアリングが左右に揺れるのを何とかしようと必死だった。


 そしてどこかぎこちない運転がスマートに変わっていく。ロードはバイクと一体になるように背中を丸め頭を下げた。


 この時、

(イチかバチかの賭けだったこのバイクモード)

(ロードは期待通りの運転をしてくれている)

(凄いよ、この土壇場でアドリブで運転しているんだもん)

(僕が初めてこのスーパースポーツバイクになった時、速すぎて事故に合いそうだから)

(2度とつかわないと誓っていたけど)

(ロードは事故なんて起こさないんだ)

(僕もいつか自分の力で運転できるかな……?)

 スロプは車体の安定感に感動を覚えていた。


 ロードは決してここでスピードを緩めない。


(ここで1位を逃せば、亡くなった相手チームを前に一生後悔する。だったら持てる才能すべてを使って本気で走ってやる)


 ロードの目に覚悟と決意が宿る。


 そしてついに――――


 チーム・カーズアンドロードがチーム・ウォーズサイクルに並んだ。


「どうだ! 追いついたぞ!」


 クダリに話しかけたのはロードだった。


「お前、バイクに乗って何年目だ?」


「驚くなよ。今さっきが初めてだ」


「はぁ!?」


 クダリの目はヘルメット越しでも目を見開いてるのがわかる声だった。


「クダリ……約束通り1位争いをしに来たよ!」


「ふ、ふん――――まだ本気にもなっていないくせに――いい運転手に恵まれただけじゃないか――オレはお前自身と1位争いがしたいんだよ!」


 クダリはスロプ最後の切り札を前にしても悠然とバイクを運転していた。


 そしてギアチェンジして加速していく。


「あっ――――!!」


 1秒ごとに1ミリ1ミリ、じわじわと追い上げていくチーム・ウォーズサイクル。


(まだ加速するのか? こっちはもうこれ以上加速できないぞ)


 それは二輪車の秘宝玉の効果だったが、


「はぁ――はぁ――はぁ――はぁ――」


 微かな息切れが聞こえてくる。それはクダリの口から聞こえてきた。


(クダリの疲れが見え始めてる。そうか二輪車の秘宝玉だったな。その効果でこんなにも早く運転しているんだな)


 ロードは理解した。


「(このままスピードを出し続ければ、クダリは体力切れになって減速しそうだ。それにもう妨害アイテムも出し尽くしたみたいだ。このままいければまくれる)――スロプまだ体力は残っているか!?」


「うん、大丈夫! ゴールまでこのスピードを維持できるよ!」


 スロプは返事をした。


「ちっ――」


 舌打ちをするクダリはこの火山コースの中での熱波にもやられているせいか、汗がだらだらと出ていた。


(この火山コースの暑さにも助けられたな)


 ロードは勝利の方程式を頭の中で描いていた。


「クダリ! 頑張って!」


 その時、スロプはクダリを応援していた。


「やっとだよ! やっと僕らは1位争いをしているんだ! 約束の時が来たんだ! だから最後まで頑張って1位を目指して!」


「はっ! 末期だな! 未だに本気を出していないお前に応援されるなんてオレはこんな形の約束を望んでいない」


「じゃあ、どんな決着の仕方がお望みなんだ?」


 ロードが訊いてみた。


「オレはスロプ自身が運転することを望んでいるんだよ!」


 その時、チーム・ウォーズサイクルが速度を上げてぶっ飛んでいく。


「そうか、運転手のいない状態のスロプと決着をつけたいわけか」


「……………………クダリ」


 チーム・カーズアンドロードは勝負の見えたクダリの後姿を見ていた。


「オレが勝つ! こんな根性なしに負けてたまるか! 兄貴の無念の1位はオレが取るんだ!」


 クダリは無我夢中に走り続けていた。


 そんな時、


「お、追いつくわよおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


「「「――――!!!?」」」


 ロード、スロプ、クダリは後ろから聞こえてくる声に反応した。


 それは大魔王シーアースカイのものだった。


 バイクのスピードにも負けない速度で爆進してくる。


 ロードたちは最大の敵に背後を取られていた。

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