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第75話 戦いのとき

 ストンヒューの森。

 

 待たせていたアカに話がどうまとまったのかを報告しに行った。

 

「オレたちの動きは今言ったとおりだ。この作戦はアカの働きにかかってる。頼んだぞ」

 

「心得た」

 

「ロード!」「準備出来たチー」「さぁ暴れるチャア」

 

 どこへ行っていたネズミたちが、針やら硬貨といった小道具を持って来ていた。

 

「そんなもので何しようっていうんだ?」

 

「「「戦いチュー」」」

 

「……今回は留守番していてくれ」

 

「何でチュウ」「ここまで一緒だったチー」「それはないチャア」

 

「もういいんだ……」

 

「「「!?」」」

 

「お前たちがどうしてオレについてきてくれたかは分かってる」

「オレが心配だったからだろ?」

 

「「「チュー」」」

 

 ネズミたちは力を失くしたかのように下を向いた。

 

「ここで一人前になったオレを見ていてくれ」

 

 また顔を上げて黙って見て来たが、何も言おうとしなかった。

 

「大丈夫、すぐ済ませてくるよ……行こうルロウ」

 

「……ああ」

 

 時間もないのでルロウに乗って、王様たちのところへ急いで戻っていった。

 

 

 ▼ ▼ ▼

 

 

 ストンヒューの丘。

 

 

 丘から見えている奪われた王国を前にストンヒュー兵団が全員揃って並んでいた。

 

「遅れました」

 

 並んで待っている衛兵たちの前、王様と王子の元に近寄っていく。

 

「ロード、アカの返事は?」


 パレロット王が訊いていた。

 

「心得たと言ってました」

 

「心強い。竜が味方についてくれる。これほど頼もしい話はないね」

 

 シャルンス王子がそう言った。


「王様、兵士たちの整列が完了なさいました」


 ハンス衛兵長がやって来た。

 

「うむ、ご苦労」

 

「これで全員ですか? レオリカンの兵士たちは?」

 

「我が国の兵士たちはここにはいない」

 

 カリフ王が残念そうな声を漏らしていた。

 

「やはり到着はしませんか……?」

 

「ああ、それに関しては申し訳ないと思っている」

 

「仕方ない、レオリカンからここへは来るのは、いかに足の速い動物たちと言えども時間が掛かることだろう」

 

 パレロット王が口に出していた。


「残念だ。このようなときに我らの力を貸せないとは……まぁ、微力ながらこの身一つで賄うつもりだ」

 

「えっ?」

 

「王だから下がれというの話だぞ。私はいつも兵士たちの先頭を走ってきたのだ。ここで黙って見ていては世界の大戦にレオリカンは間に合わなかったウスノロと歴史に刻まれる。そうなれば戦いに参加できなかったアイツらに顔向けできん。それに我の武勇伝も聞かせられん」

 

「最後が本音じゃないですか……?」

 

「何を言う、我だけにあるものか、ここにいる者たち全員の本音であろう」

 

「――その通りです」


 シャルンスはその気でいた。

 

「まぁ、、、そっちは頼みましたけど、オレがすぐに魔王を倒して戦いを終わらせます」

 

「言うようになったな……」

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 そして、とうとう戦いに出るときが来た。

 


「整列!!」

 

 総勢千名にも及ぶ、衛兵たちの前にロードたちは並んでいる。そしてパレロットの演説が始まる。

 


「勇敢なるストンヒュー兵士の諸君、戦いのときが来た。敵は異なる世界からやって来た魔王、我々の住むこの世界に悲しみと苦しみをもたらし、ストンヒュー王国までも乗っ取った。そんな魔王の目的はこの世界を力で踏みにじり、我々を弱い者たちだと自覚させることだ!」

 

「我々はこれに抗うことを決めた!」

 

「しかし、敵の数は膨大だ! レオリカンの兵士たちも待っていられないくらい深刻な状況だ。ここに揃った者たちだけで戦わなければならない。だが、決して戦う者は我々だけではない! レオリカン王国からカリフ王がここに来てくださっている。彼自らが直々に先頭に立ち諸君らと共に戦ってくださると言ってくれた。さらに、つい先日とある事情で友になった赤い竜もこの戦いに参加してくれることになった。彼もまた異なる世界からやって来たが、喜ばしいことに魔王打倒のためにその力を貸してくれる心強い味方となってくれた」

 

「そして、この戦いはここにいるロードが魔王を打ち倒せば終わる」

 

「それまで諸君らにはロードが魔王を倒すまでの間、休むことなく戦ってもらう必要がある。一度行けば後には引けない戦いだ。途中で心が折れたり、足がすくんだり、何人か倒れるかもしれない。魔王の言う通り弱い存在だと思い知らされるかもしれない」

 

 兵士たちはただ黙って話を聞いている。

 

「だが、ここにいるロードは言った。ストンヒューの兵士たちにも強さがある、と、その通りだ! 諸君らは日々王国の為に訓練と鍛錬に明け暮れた、その成果は確実に戦う力として身についている。諸君らが長年にわたって培ってきた備えは今日この日のためにある。ならば、あと必要なのは強大な魔王に立ち向かう勇気だけ。見せてやるのだ!  最強を謳う魔王に我々は立ち向かう勇気を! ここにいるストンヒューの兵士たちには強さがある! 人と動物の民の未来のために戦うのだ!」

 

「ストンヒューの兵士諸君! 王国を奪還せよ!!」

 

『『『おおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』』』

 

(皆、頼もしいな)

 

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