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第73話 クロヅノとクロドラ

 空が暗闇に染まる時間。

 帰ってくると兵士に王様たちの元へ案内してもらう。

 乗せてもらったアカにはその場に居てもらうことにした。

 

 ストンヒューの丘。

 

 どこまでも草が広がっている場所。

 そこにいた者たちは魔王に奪われたストンヒュー王国を眺めていた。

 

「!? 父上ー! ロードが戻ってまいりました」

 

 シャルンスは近づいていくロードたちにに気づいて知らせていた。

 

 王様や大臣たち、衛兵長たちがこちらを目を向けて来た。

 

(衛兵長がいるということは皆帰って来たんだな)

 

「皆さん、遅くなって申し訳ありません」

 

 ロードが軽く謝罪する。


「いいや、よくぞ! 夜になる前に戻ってきてくれた」


 パレロットが歓迎した。

 

「……王国の方に変わりはありませんか?」

 

「あれを見よ」

 

 指し示された方向はストンヒュー宮殿のある辺り。

 だけど、そこにはいつもの宮殿とは違う《《とても大きな真っ黒い宮殿》》が建っていた

 

「なんだあれ……黒い宮殿……?」

 

「昨夜の内に作られたようだ」

 

(アレも魔王の……いや、アカの残りの力か)

 

「他に魔王に動きはありませんでしたか」

 

「ない。こうして昨晩から見張り続けているが、クロドラもクロヅノたちも一歩も王国の外から出て来ない。魔王は約束の時間まで待っているようだ」

 

「クロドラ? クロヅノ?」

 

「私が名付けた、あの真っ黒い竜と黒い鬼たちのことだ。名前がないと話しにくいからな」

 

「はぁ……」


「王国から出て来ないことを逆手にとれると思って、今朝、偵察を送り込ませ強さを測らせた」


 シャルンスが言う。

 

「強さを? 結果は?」

 

「吉報だ。クロヅノ、一体の強さは訓練の受けていない一般の民レベルだった。万全の衛兵たちならおくれを取ることはまずないだろう。この報告を聞いた衛兵たちの意気込みを高めている。竜の事件に貢献できなかったからここで名をはせると言っていた。あとは私が戦いの命令を出し、共に戦場に赴くだけ」

 

「シャルンスは立派に勤めを果たしたな」

 

「まだです。これから勤めを果たしに行くのです」

 

「ロード。探しに行っていた秘宝玉は手に入ったのか」


 カリフ王が尋ねてくる。

 

「……一応」

 

 ポケットから小さな透明の玉を取り出して見せる。

 

「それが私たちの切り札になる秘宝玉か。立派に役目を果たすことが出来たようだな」

 

「おお」「よくやった」「これで魔王を倒るパン」「早速衛兵たちを並ばせなくては」

 

 その場いた皆が喜んでいたが、

 

「お待ちください。まだ報告があります」

 

 喜ぶのをやめて静まり返る。

 

「この秘宝玉ですが、どうすれば魔王の打倒に活かせるか、色々試し、考えていましたが、見つけることは出来ませんでした」

 

「では、秘宝玉は……」


 パレロットの表情が険しくなる。

 

「使うことが出来ません。期待を裏切ることになってすみません」

 

 皆から先ほどの喜びが消え去っていた。

 

「ロードだけのせいじゃないチュウ」「チー達も見つけられなかったチー」「使えないことを知らせるために帰って来たチャア」

 

「そうか……」

 

「王よ、いかがなさいます? これでは予定が……」

 

 大臣が訊いていた。


「秘宝玉がなければ魔王なる者には勝てないという話でしたが……?」

 

 二人目の大臣も訊いていた。


「勝てる見込みがなければ敵と戦うのは控えた方がよろしいでしょう」

 

 孔雀の大臣が結論を出す。


「ニャが、今夜の内に決着を付けねば奴はクロドラを国外に放つという話だったのではないかニャ?」

 

 ネコの大臣が意見する。


(一先ず魔王の要求を呑んだ方がいいんだろうか……?)

(いや、アカが倒されるんだ。これは渡せない……)

 

「とにかく勝算のない戦いに衛兵は送り込めない。急ぎ次の手を考えなくては……」


 一人目の大臣が言う。

 

「近隣の村や街には避難勧告を発令しているで、いっそクロドラを放たせて、その隙に魔王に奇襲をかけてみては……?」


 二人目の大臣が提案する。

 

「ダメだ……避難が上手くいっている確認が取れない状況で、危ない橋は渡れない」


 パレロットが決断する。

 

(もう、いい方法を考えてる時間はない。今日で決着を付けないといけないんだから)

 

 呼吸を整え、表情を引き締めて皆を動かすことにした。

 

「待ってください。ここは当初の予定通り、中央突破で宮殿へ行き、魔王を倒すしかありません」

 

「ロード。だが秘宝玉は……」

 

「使えません。けど、魔王に勝てないと決まってはいません。オレが魔王を倒します」

 

『『『――!?』』』

 

 力強く言ったことが意外だったのか皆が驚いていた。

 

「――そうです父上、ロードはレオリカン王国で竜の一件を解決しました。秘宝玉に頼らなくても彼の勇気と強さがあればあるいは――!」

 

「お待ちください。確かにロードは素晴らしい働きをしましたが、彼は以前から兵士たちの訓練試合の際は、勝ち星が一度もなかったはずです。竜の一件での活躍は偶然だった可能性があります。彼に全てを懸けての戦いは賛成できません」


 意見を出したのはハンス衛兵長。

 

(言われると思いました)

 


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