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第713話 道々巡りで助けに来た

 民と魔物の集まる場所を青い剣で飛び、広場に着地するロード。


「勇者様!」


 開けた窓越しにフローランが叫ぶ。


「助けに来たぞフローラン」


 ロードがフローランの目を見る。


 そして、一歩踏み出すと、大きな王宮の門が開いた。


 衛兵がゾロゾロとロードを取り囲む。


「待ちなさい! その人に手出しは――――!」


 フローランは窓から飛び出す人物を見た。


 それは界王陛下アンバーサイダーという距離の秘宝玉の使い手だった。その腕に女王陛下を抱えて下へ飛び出す。


 15メートル下まで普通の人なら転落死してもおかしくないが、彼らは違う。


 距離の秘宝玉を使い、一瞬にして地上へと着地した。実質高低差は0メートル。


「パパ上様! ママ上様! そのお方をどうするおつもりです!」


 フローランが窓から叫ぶ。


「決まっている狼藉者は牢屋に入れる」


「戴冠式には足を踏み込ませない」


「なんだ。フローランが正式に女王になるための戴冠式だったのか……ってきっり魔物たちを使って民を皆殺しにでもするのかと思っていた」


 ロードは苦笑する。安堵も混じっていた。


「そのような考えがフローランには悪影響!」


「ここで確実に捕らえさせていただきます!」


 アンバーサイダーとアリザべモンドが言う。


 ロードが鞘から双剣を引き抜く。両手に赤い剣と青い剣が握りこまれる。


「来い」


「100メートル先まで吹っ飛べ!」


 アンバーサイダーが秘宝玉の力でロードを吹き飛ばそうとした。


「道よ開かれろ!」


 ロードは距離の秘宝玉の力そのものを双剣で振り斬った。


 この時、

(パパ上様の距離の力そのものを斬った)

(これが道を切り開く力)

 フローランは驚愕していた。


 ロードは青い剣でフローランの元に飛ぼうとする。


 その時、


「認名の秘宝玉発動! フローランとロードの接触を禁じる!」


「行け!」


 青い剣で飛ぶロードは、フローランから遠ざかられた、


 だが、行けと同時に赤い剣が竜の姿に変貌、フローランに背中に乗るよう促す。


「――――――なっ!!!?」


「――――――これはっ!!?」



 この時、

(以前勇者様の言っていた赤い竜ですか?)

(だったら乗るしかありません)

 フローランは窓から飛び出し、竜の背中に乗る。


「よし」


 ロードは広場の地面に着地した。


 アカは上空を飛びまわっている。


「貴様!」


 憎々しげに言うアンバーサイダー。


「あの竜の名前を教えなさい」


 焦るアリザべモンド。


(思惑通りだ)

(距離の秘宝玉はその力を道の力で切り裂いてしまえば、道は開き前へ進むことが出来る)

(認名の秘宝玉は名前の知らないものは指定できないんだ)


「衛兵! 捕らえ――――」


「お待ちください」


 アンバーサイダーの命令を遮ったのは大魔王ジュウカイダンだった。


(出てきたな、本当の敵)


 ロードの顔が凛々しく輝く。


「わたくしの力であの者を沈没させればよいだけのこと、そしてまた取引をすればよいこと」


 黒いタキシード姿の鋭い目がロードを睨む。


「そう、あなたの命と引き換えに今度こそ姫のお心までも返してもらいます」


(そう、こいつはオレと一対一になるしかない)

(アカの方に沈没を使えばフローランの身が危ないからだ)

(まずい状況だとわかってこいつが出て来た)

(確実に勝てる自分ならとフローランに悪影響となる衛兵との戦いも避けた)

(こいつはフローランのことしか頭にない)

(それが隙になる)


「沈没しなさ――――」


「極体速!」


 ロードは液状になりかけた地面を蹴った。そして走る。まるで水走をする忍者のようだった。


「――――――!!!?」


 あまりの速さに大魔王ジュウカイダンは驚いた。


(これで決める!)


 ロードの速攻がジュウカイダンに剣を振りきる。


 その時、

(伊達に大魔王を名乗ってはいません!)

 ジュウカイダンは思った。


 そして、ロードの来る手前に、自分の正面に沈没の効果を発動させた。


 ロードの速さがあだとなった。もう道を引き返すことも、それることも出来ない。沈没する。


 それでも、


(道は開かれる! 道々巡り!)


 ロードは前へ進み、沈没の効果範囲を斬って前へ進み、液状の地面でさえ沈む前に前へ進んだ。


 そして届いた。


 ロードの青い剣が大魔王ジュウカイダンの右腕を斬り落とした。


「ぐ、ぐあああああああああああああああ!!」


 大魔王ジュウカイダンの右腕が霧散化していく。


 そしてロードは続けて攻撃しようとしたが、ジュウカイダンは自ら沈没して、剣の一振りを回避した。


「や、やった」


 フローランが頬を赤く染める。


 そして、


「このどちくしょうが! 死んで身の程をわきまえろ! わたくしは大魔王だぞ! こんなことが許されてたまるものか!!」


「いいぞ、どこからでもかかって来い」


 ロードは足を止めずに大魔王ジュウカイダンを挑発していた。


「オレは勇者ロード、フローランを魔から救いに来た!」


 その挑発が長期戦をやめさせたのか、大魔王ジュウカイダンの本当の姿が地面から現れた。


 その姿はまさに正三角形型の連結をしたムカデのような魔物だった。足にも見えるその腕は百もある巨大な魔物、そして腕の一つ一つがドリルになっていた。


「遊びは終わりです。ここで姫の為、少々早すぎるかもしれませんが公開処刑というものをお見せしましょう」


 目は魔物の目のままロードを睨んでいた。

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