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第68話 秘宝玉というモノ

 浜辺・小屋。

 

 カメのお爺さんの小屋で話を聞くことになった。

 床もないので砂浜に一同が直に座る。

 小屋の中には色々と難しいことが書かれている張り紙があって、たくさんの分厚い本が積み上げられていた。

 

(砂埃が凄いなここ、まるで倉庫だ)

 

「お前さんたちの知りたがっていたのはこの秘宝玉で間違いないな?」

 

 木箱に保管されていた透明な丸い玉を見せながら言っていた。

 

(あっ)

 

 魔王に見せられたものとほとんど同じものだった。

 違うのはあっちは黒かったのに対し、こちらは透明だったということ。

 

「(透明だけど同じか)……は、はい、これです」

 

「爺さん実物を持ってたのか?」

 

「どこでこれを手に入れたんですか……」

 

「大昔に旅人が持ってきて『これは自分には使えないから』と言ってな、高値たかねで譲ってもらったんだガメ。これについてはどこまで知っているガメ」

 

「ほとんど何も知りません」

 

「まぁそうガメな、秘宝玉についての文献ぶんけんはわしも見たことがないガメ。旅人が持ってくるまでは存在も知らなかった……」

 

「爺さん勿体ぶるチュウな」「早く教えてくれチー」「チャア」

 

「ゲンウさん、単刀直入に聞いて秘宝玉とは何です……?」

 

「簡単にいうと特殊な能力を使うための源になっている玉のことガメ」

 

「特殊な能力の源……?」

 

「お前さんたちが秘宝玉を見たというのは誰かが持っていたからガメ?」

 

「はい、オレは見ました」

 

「その持っていた者は何か不思議なことはしなかったガメ?」

 

(不思議なこと……刀でアカを暴れさせて、力を奪って、配下を作り出したり、黒い靄が伸びたり、剣になったり……)

「……は、はい。不思議なことばかりしてました」

 

「その不思議なことを起こせるのがこの玉なんだガメ」

 

(じゃあ、これが……全部の原因なのか?)

 

 木箱の中の秘宝玉を見つめる。

 

「だいぶ昔に聞いた古い話ガメ」

「秘宝玉とは宝石のように美しい輝きを放ち特殊な能力を秘めた丸い玉のことだガメ」

「それを持つ者には神秘の力が備わって普通では考えられない魔法のような力が手に入るガメ」

「秘宝玉の力を使えば、ある者は火を自在に操ったり、ある者は自在に水を操ったりするガメ」

「これがだいたいの説明ガメ」

 

 

「質問チュウ。その力で誰かを操ったりもできるチュウ?」

 

「当然、出来るガメ」

 

「質問チー。その力で誰かの力を自分のものに出来たりするチー?」

 

「もちろん出来るガメ」

 

「質問チャア。その力で一万体の自分の手下たちは作れたりするチャア?」

 

「出来ないこともないガメ」

 

「この秘宝玉がアイツのおかしな力の源だったってわけか」

 

「爺さん、もし、今のような話にあった力が実際に起きちまったらどうすりゃいい? 何か弱点はないのか?」


「弱点? 思い当たらんガメ」

 

「秘宝玉を奪えばいいんだチュウ」「そうだそれチー、天才チー」「奪えればこっちが使えるチャア」

 

「それは出来んガメ」

 

(えっ……出来ないのか?)

 

「秘宝玉を持っている者からそれを奪っても力を使うことは出来ないガメ。弱点という意味でも奪われたことで力が使えなくなるということもないガメ」

 

「相手が使えているのにこっちが使えないのは何故です」

 

「残念だが説明出来んガメ。人の持つ秘宝玉は他の誰にも使えないとしか言えないガメ」

 

(魔王があれだけ自身満々に語ったのは、そういうことをしても何にもならないとわかっていたから?)

(やっぱり、誰も持っていないということ自体が、オレたちに勝ち目がないっていうことなのか)

(でも、それならこれを使えれば……)

 

 目の前の秘宝玉を見て思い切って頼んでみる。

 

「あの、ゲンウさん。この秘宝玉だったら俺たちにも使えるでしょうか」


「!? い、いかんガメ。これはわしの家宝かほうガメ。誰にも渡せんガメ」

 

「オレたちにはそれがどうしても必要なんです」

 

 

「何に使うつもりか知らないガメが、これはお前さんたちが考えてるような便利な代物ではないガメ。神秘の力はときに世界すら歪めてしまう誰かがこの力を使えば取り返しがつかなくなることもある」

 

「実は……その秘宝玉を持った者が、この世界で暴れているんです」

 

「どういうことガメ?」

 

(もう、魔王のことを話すしかないなぁ)

 

「……無用の混乱を避けるつもりで黙っていたんですが、今ストンヒュー王国は、いえ、世界は危機的状況に陥っています」

 

「……なんの冗談、ではなさそうな顔つきガメな。話してみるガメ」

 

「実は……………………。

 

 ◆ ◆ ◆ ◆

 

 」

 

 レオリカンで起きたこと、ストンヒューで起きたことの説明を終えた。

 

「なるほど、別の世界から魔王が……言ってくれればあのような無駄話もせんかったガメ」

 

「こんな話信じてくれるんですか?」

 

「何百年も生きてたら、誰と会話をしても話の内容が真実か嘘かくらい見抜くことは造作もなくなったガメ。噂話ならいざ知らず、お前さんの体験を話した言葉には真実味しかなかったガメ」

 

「……年の功ってやつか?」

 

「ゲンウさんは魔王が何なのかご存じですか?」

 

「知らないこともないガメ。無限大にある世界というのはわしも聞いたことがあるガメ。ここのように元々は平和で争いのない世界のようなところもあれば、こことは違う別の世界では毎日のように誰かが命を落とすような場所もあるガメ。今わしらがこうして話している間にも、どこか別の世界では悲しいことが起きているガメ。その原因はほとんどが魔物によって起こされるものらしいガメ」

 

 

「世界の敵なんですよね。そいつらは様々な世界にいて悪行と非道の限りをつくし世界を壊しているって聞きました」

 

「そうガメ。魔王とはその魔物たちを束ねる王様のことガメ」

 

(魔物の王様……)

 

「わしは魔物を見たことはないからはっきりと言えんが、魔王の強さは並みの魔物の比ではないらしいガメ。戦うなら油断してはいかんガメ」

 

「……奴は一体何なんです。どうして命を奪うなんて恐ろしいことが出来るんですか?」

 

「命を何とも思ってないんだガメ」

 

「何とも思わない? か、彼らも生き物なんですよね? 同じ生き物の命を奪っても何も思わないんですか?」

 

「そう思わんからこそ魔物と呼ばれているガメ。魔物でなければそのような恐ろしい行動は出来ないガメ」

 

「……その奴らの恐ろしい行動を止める方法はないんですか? 例えば話し合いで解決するとか」

 

「止めるなら倒すしかないガメ」

 

(倒すしか……ない)

(でも、出来るのか? オレが倒すなんてことを……)

 

「ロードお前さんが戦うというのならこの秘宝玉を授けるガメ」

 

 秘宝玉が差し出されたが、ロードはソレを受け取ることが出来なかった。

 

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