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第61話 どちらが優勢か……

 ストンヒュー宮殿・玉座の間。

 

 

 アカが天井を崩して宮殿に入って来た。

 

(アカがどうして……)

 

「キャーーーーーー!」


 ビッシィさんの悲鳴。

 

「な、なんだこの化け物は!」「か、怪物だぁ!」「もしや、うっ、噂の竜!」


 狼狽える衛兵たち。

 

「こ、これが竜か……」


 呟くパレロット。


「落ち着け! こ、こいつは我が国の兵士だ!」


 カリフ王がげきを飛ばす。

 

「み、味方!?」「本当ですか!?」「と、とてもそうは見えません」

 

「この者はアカといって、この地よりもはるか遠くから来た異国のトカゲだ! 姿形すがたかたちに揺さぶられるな、我々の仲間だ!」

 

「は、はぁ……」「カリフ王が言うのなら……」「異国のトカゲ?」

 

「ト、トカゲって……」


 シャルンスが苦笑いする。

 

「今は詳しく説明する暇はない、兵士たちに無用な混乱を避けるためにはやむなしだ」


 パレロットが発言する。

 

「何でアカが」「来たんだチー」

 

「オレが遠吠えで呼んできたんだ」

 

 ルロウがいつの間にか外から戻ってきていた。

 

「でかしたチャア!」

 

(そうか、ルロウが……)

 

「なぜ竜が生きている!!」


 魔王が驚いていた。

 

「誰も倒してきたなんて言っていない……」

 

「なっ!? 竜に対抗できる剣を持ちながら、麻鬼刀を抜いて来たとでもぬかす気か! そんな手間がかかることなど誰がする!!」

 

「そうだ! 我が腹に真っ黒い剣を突き立てたのはお前だ! 思い出したぞ、魔王アグロ―ニ! 我が敵よ!!」

 

「くっ!! お前の役目はオレがこの世界へ来た時点で終わった。とっととどこへでも行くがいい!!」

 

「そうはいかん! またあのような悲劇を起こすわけには行かないからな! お前はここで消し炭にする」

 

「アカ! まさか命を奪う気か!」

 

「案ずるなロード! この魔王は異なる世界においては、駆逐すべき対象だ。こいつらを放っておけば、我が話した通り世界は悲しみと苦しみに染まる。これまでも、このアグロ―ニは山ほどの命を奪ってきた。ここでほうむらねばならない!」

 

 アカが口に炎をた溜め込んでいっている。

 

「――ダメだ! こ、この世界では命を奪わないでくれ!」

 

「何!?」

 

「たしかにアカの言う通り、こいつはここに何人もの命を奪いに来たんだ。でも、例え倒すしかない奴でも、皆のいるこの世界でそれをやるのはやめてくれ! そうしてしまったら、この世界の平和がきっとおかしくなる」

 

「……ではどうするのだ!」

 

 歩みだして、魔王の正面に堂々と立つ。

 

「魔王……この世界から立ち去れ……お前には竜を操る刀があるみたいだが、もうアカを刺すことは出来ない」

 

 麻鬼刀という刀は、竜殺しの剣に刀身を切られてしまったからだ。

 

「……来たときと同じように、竜の世渡りで帰ってくれ……アカと一緒にこの世界から立ち去ればお前はここに2度と戻ってこられない。そして連れていかれた先でアカと一対一で決闘して、倒されるんだ。念のためその使い物にならない刀は置いて行ってもらう……」

 

「ここでは、オレを捌けないからか? それを知って立ち去るわけはないだろう」

 

「どうしても聞かないというのなら、ここで倒すしかない。あとはアカに任せる」

 

「ぐぬうう…………」

 

 魔王が大剣の形にしていた手を戻す。悔しそうに拳を握りしめる。

 

「――ここで倒されるか、向こうで倒されるかだ。アカに連れて行ってもらうなら、できるだけその命が続くように頼んでみる」

 

「……ロード」

 

(魔王をどうするか……)

(こんなことしか思いつかない……)

(でも、命を奪ってきたというのならこうするしかない)

(せめて、最後は願いを聞き入れてほしい)

(この世界を平和のままにしておきたいんだ)

(ここで戦わせないでくれ)

(お前にも生き物としての倫理があるのなら……お願いだ)

(この世界からは出て行ってくれ、アグロ―ニ)

 

 目に涙が溜まっていく、とても酷い決断をしたからだ。

 

(――この両手だけは使わせないでくれ)

 

 そう子供のように願っていた。

 

「クッ――」

 

 ――――だが、

 

「ク―ハッハッハッハッハッハッハ」

 

 願ったことが笑らわれた。

 

「――? 何が可笑しいんだ魔王……」

 

「可笑しいな――その提案の前提はオレがお前たちよりも雑魚でなければならんだろう」

 

「そうだ。お前の負けはもう決まってる。ここに来たとき、アカの暴走を抑えるどころか逃げることしかできなかったんだろ……?」

 

「いいや、今この世界で最強なのはオレだ!!」

 

「……お前では我には勝てない」


 アカが堂々と宣言する。

 

「自分の弱さにも気づかないのが雑魚の証だ」

 

「ここで命を終わらせると受け取ったぞ……」

 

 再び口に炎を溜め込んで、吐き出す体勢を取っていく。

 

「待てアカ、まだだ!」

 

 手で静止させる。

 

「分からんのか? もうお前にも用はないのだ」

 

「………………」

 

(……?)

 

 アカの表情から余裕が消えた。

 

「お前に力はほとんど無いはずだ」

 

「――この宮殿から全員を避難させろ!!」

 

 突然の発言だったが誰も動こうとはしなかった。する必要が無いように感じたからだ。

 

「動け!!――言う通りにしろ!! ここにいると命を落とすぞ!!」

 

 そう言われてやっと皆は身体を動かして、

 

「ひ、退くのだ!」「皆!宮殿の外へ」「は、はっ!」「け、ケガ人を外へ運ぶぞ」「おう」「大丈夫ですド? カリフ王」

 

 アカとロード以外の全員が、急いで玉座の間から出て行った。

 


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