第601話 神様の乗るおみこし
出見世界・東風赤明・人ごみの多い大通り。
年に一度の夏祭りが開催されていた。大通りは人で埋め尽くされていた。
何件も並ぶ出店、様々な物を売ったり、催したりしている大通り。
ロードたちもその人ごみの中を掻き分けて、祭りの気分を思いっきり堪能していた。
「皆! はぐれるなよ! もしはぐれたら迷子センターだ!」
ロードが先陣を切って歩いていく。
「迷子センター? そんなの必要ないね。私の召喚の秘宝玉で召喚するだけだよ」
後方を歩くシルベが大きな声で言う。
「それよりグラス、秘宝玉なんてチラつかせるなよ! ここでスリにでもあったら持って行かれるぞ」
「わーってるっつーの。って言うか大声で言うな! どこの誰が聞いてるか分かんねーぞ!」
ハズレとグラスが警告し合う。
「アップちゃん。お姉さんと一緒に手を繋ごう?」
スワンがアップに提案する。
「そんなの必要ない飛べば済むんだから……」
「何を言ってるの。ここであなたが大魔王だってバレたらお祭り状態じゃなくなるのが分からない?」
ミハニーツの棘のある声がアップを刺す。
「うぅ~~~~」
アップがスワンの手を取るか迷う。
「お兄ちゃんと手を繋ごうか……」
「うん。兄さんいい?」
「ああ、いいぞ」
「皆さんはぐれない為に、私の用意した鉄棒の赤旗について来てください!」
ドノミが自分の背丈の倍以上の赤旗を掲げる。
「まったくなんて人の数なの」
ミハニーツが文句を言いながら進んで行く。
「おい、こっちの大通りには誰も居ないぞ!」
ブケンがトラロープを跳び越えて大通りに出るが、
「あっ! ダメですブケンさん!」
ドノミが止める。
「えっ何――――」
その時、
「こらこら君、ここから先は立ち入り禁止だよ」「ダメじゃないかロープを越えてきたら」
警備の人たちに注意された。
「ここで何かあるんですか?」
「ん? キミたちこの夏祭りは初めてかい?」「これからおみこしが始まるのさ」
「おみこし」
「ロードさんパレードって知っていますか?」
ドノミが訊いてくる。
「オレの動物たちの暮らす故郷で大通りを紙吹雪を巻きながら移動するアレか?」
「ほとんど同じです。違うのは神様を運んで行くというところですね」
「さぁ、さぁ、下がって……」「ここから先は立ち入り禁止だよ」
警備員に言われてさがるロードたち。
「せっかくですから見て行きませんか?」
「兄さん? 見たい?」
「ああ、出来ればこのお祭りを思う存分楽しみたい」
「じゃあ見よう」
アップは賛成してくれた。
そして数十秒後、炎の隊列がこっちに向かってやって来る。トーチを持った百人の男たちが歩いて来ていた。
「おお、いい具合に燃えてるじゃないか。しかもキレイだ」
ハズレが賞賛する。
炎の隊列がロードたちの目の前を通り過ぎていく。
次にやって来たのは不思議な見た目をした生き物たちの提灯だった。
「アレは百鬼夜行ですね。見てください先頭を陣取っているのは妖怪たちのリーダーぬらりひょんです」
ドノミが説明する。
「アレ、何か見たことのある女性が混ざっていないか?」
ブケンが目を凝らして見る。
「ユキメさんに似てるかも、彼女妖怪だって言ってたし」
スワンが確認して言う。
「確か、雪女だったか?」
グラスが覚えていた情報を言う。
妖怪たちの行列は過ぎ去っていく。そして次に通って来たのは鬼とも神様とも見える異形の形をした提灯だった。
「今度は何だ?」
シルベが訊いていた。
「アレは神様です。先頭から緑色の風神、黄色の雷神、青色の水神、赤色の炎神、茶色の土神ですね」
「あなた詳しいのね」
ミハニーツが褒める。
「これでも観光ツアー関係の仕事をしていまして……」
「あの蛇のような青い提灯は何だ?」
今度通りかかって来たのは青い蛇のような巨大な提灯だった。荷車に乗せられて移動して来る。
「アレは龍です。アカさんとは種別が違いますけどね」
ドノミが説明する。
「アカと違うリュウ」
そしてパレードの目玉、おみこしがやって来る。
「「「わっしょい! わっしょい! わっしょい!」」」
喉太い男たちの声が聞こえてくる。はっぴを着た男たちが神輿を担いで移動して来る。
周りからパシャパシャと音が聞こえてくる。
「何だ? 何だ?」
ロードが周りの人たちの行動に疑問がる。
「カメラのシャッター音です。写真に残しておきたいんでしょう」
「カメラ?」
「それより見てください。あの神輿の中に神様がいて敬意をもって担ぎ上げられているんです」
「神様が乗ってるの?」
アップが訊いてくる。
「そうですよ」
笑顔のドノミが答える。
やがて、神輿も通り過ぎ、大通りは人々の雑多音で満たされた。
「兄さん楽しかった?」
「ああ、いいものが見れて楽しかったよ」
ロードたちのお祭りはまだ始まったばかりだった。




