表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/939

第60話 そんな世界が面白いわけがない

「ま、魔王が、な、何しに、ここへ、竜に乗ってきた!!」

 

「雑魚に雑魚だと教えに来てやったのだ」

 

『 ? 』

 

 全員その場で確かに聞いたのに何どうゆう意味か理解できなった。

 

「無限大世界には争いのない平和な世界がいくつかあると聞いた。ここがそうだろう……気味の悪い世界だ!! 平和だ、幸せだ、などと、のたうちほざく雑魚共が! そんな雑魚共の世界でオレの力を振るえば、さぞ、面白い世界にできるだろう!」

 

「……面白い世界?(アカに壊された。あの街や村のことか……?)ふ、ふざけるな! あれの何が面白いんだ!」

 

「当たり前だ。面白くはない。竜の破壊する世界など面白いわけがない!! やはりこの手で!! この世界の住民を捌かねば面白くない」

 

「――っ!?」

 

 ロードは背筋に悪寒が走り抜けた。

 

「さ、捌くってなんだ?」

 

「物知らずが!! 雑魚をこの刀で処理することすることに決まっているわ!!」

 

(な、なんだって!?)

 

「なんと恐ろしいことを……考えるんだ」


 パレロットが口にする。

 

「お前たちなど相手にならん。もはや竜も倒され、邪魔になる者はいない。今ここで一番強いのはオレだ!! この世界で最強なのはオレだ! 魔王アグロ―ニだ!!」

 

 

『アオーーーーーーーーン!!』

 

 

 外からルロウの遠吠えが聞こえて来た。

 それから何度か遠吠えが続いていく。

 

「そ、そんな世界――――面白いわけがないだろ!!」

 

 魔王に向かって飛び出して剣を振るった。だが、易々と受け止められた。

 


「軽っ――」「――ッ!?」

 

 そのとき、麻鬼刀に受け止められていた竜殺しの剣が通り過ぎていくように刀を斬っていく。

 それを見た魔王は、頭に剣が触れる直前に後ろにさがって避けていった。

 

「――なんだその剣は?」

 

(何で、剣が通ったんだ?)

 

「ふん、やはりただの人間に竜など倒せるはずもなかったか。。。驚かせおって、その剣が竜に対して有効だったわけか――」

 

(なっ!? 何でバレてるんだ!? 今斬ったのは剣だぞ!)

 

 一瞬で竜殺しの剣の性質を見抜かれてしまった。

 

「ならば、恐れるに足らん!!」

 

 麻鬼刀を腰の鞘に納めた魔王が、両手を合わせると黒い靄が渦巻いていく。

 

「麻黒の大剣で叩き捌く!!」

 

 靄の渦は両手から背丈の倍ほどまで伸びて、大きな剣の形になっていった。

 ダン!! と片足を踏み込んでブン!! と両腕で作られた“麻黒の大剣”を振り下ろしてきた。

 

「――――――」

 

 ロードは目にした瞬間、後ろに下がって反射的に下がって回避した。

 魔王の攻撃は前髪を掠める程度で済ますことが出来た。

 

(危な!――)

 

 大剣がさっきまで立っていた床を割りバガン!! という音が響いた。

 

(あ、あんなの受け止められないぞ)

 

『アオーーーーーーン!!』と外でまだルロウが遠吠えをしている。

 

(この剣は厄介だ。こんなに大きいと周りが巻き込まれる可能性が高い)

(とりあえず、皆から離れてこいつを誘導しないと)

 

 魔王が3メートルもの大剣を振り回し続けるが、ロードは上手く避けて皆の居る位置から少しづつ誘い出していく。

 

(けど、誘い出して……その後はどうする。何をしたら止められる)

 

 

 ――――トンと背中に何か固い物がぶつかった。

 

「!!!?」

 

 見なくてもわかる。それは玉座の間に建てられている柱だ。

 後ろに下がろうとしてそれ以上動けなかった。

 

 魔王が不敵な笑みを浮かべた。

 

(――誘導されてたのはオレも同じか!!)

 

 麻黒の大剣というものを真横から柱ごとを薙ぎ払ってきた。

 

 ゴゴゴゴン!! と大剣が柱を壊し進む。

 

 後ろに下がって避けられないので、両膝をガクンと落とすことで下に回避する。

 頭を通過する大剣を髪に掠れる程度で済ますことが出来た。

 

(――今だ!!)

 

 魔王の懐に潜り込んだ状態になって、即座に竜殺しの剣で攻撃しようとして、

 

(――何してる!? 命を奪う気か!)

「――――っ!?」

 

 魔王を貫く寸前のところで止まってしまう。

 

「雑魚がああ!!」

 

 真横から蹴りを脇腹に入れれて、玉座まで吹っ飛ばされた。

 

「うあっ!!」

 

 激突して、玉座に無理やり座らされる形になった。

 あまりの痛みに力が抜けて、だらりとした格好になって一瞬、意識が遠のいた。

 なんとか意識を保って落としそうになった剣を力強く握り直した。

 

 その時、玉座の間にぞろぞろと兵士たちが入って来た。

 

「み、皆さんをお連れしました!!」


 ビッシィさんが援軍を連れてきていた。


「王様、王子ご無事ですか!!」「こ、この惨状は……」「ぞ、賊とやらはあれか!」「な、なんと異形な――」「よし! かかれ!」「おおおお!!」

 

「――や、やめ!! 来るなぁ!!」


「雑魚がわらわらと!! 近寄るなぁ!!」

 

 魔王が大剣を振り回して衛兵たちを吹き飛ばした。

 

「「「――うおあっ!!」」」

 

「キャーーーーーー!!」


 ビッシィさんが叫ぶ。

 

「だ、大丈夫か!」「あ、ああ」「何とか」「よ、鎧があったおかげで」

 

 

 吹き飛ばされた彼らは鎧を着ていたおかげで大剣が当たってもそれ程の怪我をしなかった。

 

(鎧がなかったら、命はなかった)

「皆逃げろ! こいつはオレが――!!」

 

 急いで魔王の前に戻って対峙する。

 

「粋がるな……お前ではオレには勝てんわ!!」

 

 大剣を振って来たので、ロードは避けようとしたが、蓄積されたダメージのせいで動けなかった。

 仕方なく剣で防御するが、

 

「うああっっ!!」

 

 あまりの力に弾き飛ばされた。

 

「竜を倒したのはその剣のおかげであってお前の力ではない! 竜を倒せる者などやはりいない!」

 

「な、何を分かった風に、お前は何も見てないだろう! オレたちがどんな風に戦ったのか! 竜にどうやって立ち向かったのか!!」

 

 その口にした言葉が力になったようで立つことが出来た。

 

「見なくともオレとお前たち雑魚共には絶対的な力の差があるのだ!!」

 

「はぁ……はぁ……はぁ?」

 

 立つことは出来ても疲れは隠せない。

 

「雑魚共にはこれがないだろう」

 

「――――?」

 

 魔王は首に下げていた物を見せつけて来た。

 それは“宝石のように美しい黒く丸い玉”だった。

 

(な、なんだ……ただの宝石じゃないのか?)

 

「この秘宝玉が、お前たちの手にない限り、この世界ではオレが最強なのだ!!」

 

(ひ、ほうぎょく……?)

 

「ドドオオオオオオ!!」

 

 そのとき、魔王の背後からサイの衛兵が突撃を仕掛けてきた。

 だが魔王は、片手でサイの突撃を角を掴んで止めて、そこから軽く持ち上げて兵士たちの集まりに投げ飛ばした。

 

「「「ドオオオ!!」」」

 

 突撃の準備をしていた他のサイたちは、その場で倒れ込んだ。

 

「あとは竜を倒した雑魚さえ、捌いてしまえば万が一もなく。オレがここで最強となるのだ!!」

 

 魔王がこちらに向かって歩み寄る。

 

「くっ!――うあっ!!」

 

 下がろうとして身体に激痛が走る。

 

(ダメだ。身体が動かせない)

 

 魔王が大剣を構えて近寄ってくる。

 

(――やられる!)

 

 その時――――。

 

 ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴンン!! と大きな振動が宮殿全体を揺らした。

 


『『『――!!!?――』』』

 

 大きな音に誰もが驚いていると、玉座の間の天井が崩れ落ちて来た。

 


「思い出したぞぉぉ!! 我が敵をおおぉぉぉぉ!!」

 

 アカが崩れた天井から宮殿に入り込んできた。

 

「――い、生きているだとぉ!?」

 

 竜を見ると驚いて後ろへと下がっていく魔王。

 

「勘違いしてるぞ……お前の思い通りになんか何一つなってないんだ」

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ