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第596話 スワンとミハニーツの言い合い

 ガークスボッテンでロードが眠りについてる頃、ミハニーツ達もロード救出の会議をしていた。


 何もない丘。


「ロードを見捨てる気!」


 ミハニーツが怒鳴る。


「そうは言ってない。もしあの魔王の言う通りロードの妹なら殺されはしないはずだ! もしあんた一人が言ってもあの魔王には敵わないだろ!」


 ハズレが抗議する。


「私の心配よりロードの心配して!」


 ミハニーツが更に顔を真っ赤にする。


「冷静になってください。あなたが傷一つ、どころか汚れ一つ付けられない相手ですよ。簡単にロードさんは奪還できません」


 ドノミが穏やかな声で言う。


「何ソレ――――助けに行かないの!? それでも仲間!?」


「行きたきゃひとりで行け」


 グラスが話をこじらせる。


「分かってる! どうせあなたたちじゃ何の役にも立たない! 弱者だものここでじっと――――!」


 バチンとミハニーツの頬がビンタされた音が響いた。


「わかってない!」


 ビンタの手はスワンのものだった。


「何するの!?」


 ミハニーツは本気でスワンをバチンとビンタした。


「ロードは私たちを危険な目に合わせないようにわざと一人で連れてかれた! そのロードの好意を無駄にしてあなたは今命を無駄にしようとしている! ロードの代わりに私があなたを止める!」


 スワンはミハニーツの本気のビンタを食らっても全く引けを取らなかった。


「保護者面しないで!」


「違う! あなたがロードが好きで好きでたまらないのを知ってるから言うの! ロードの家族なんでしょ! そのあなたがあの魔王と刺し違える覚悟で倒せたとして誰が喜ぶの! その後泣くのは誰なの! 家族を失ったロードなんだよ!」



「――――――!?」


 ミハニーツは黙り込んだ。スワンの言い分に感情論だが、まったくその通りだったからだ。


 この時、

(この子、良くロードを見てる)

 ミハニーツはビンタされた頬を触って思った。


「う……うん……」


 その時倒れていたシルベが目を覚ました。


「目をお覚ましになられたのですね」


 シスター・クレアがそう言う。


「おい、シルベが目を覚ましたぞ」


 ブケンが報告する。


「いたた、首回りが痛いんだけど寝違えたかなって皆なんて辛気臭い顔してるのさ」


 シルベがのんきに訊いてきた。


「ロードが大魔王にさらわれたんだ」


 ハズレが報告する。


「えっ? 大魔王は倒し――――ああ! あの朱色の光を放った魔王か!? 思い出した!」


 シルベが首元の調子を確かめながら言う。


「シルベ、今すぐ秘宝玉を使えるようになりたい、キミの召喚で秘宝玉所有者の沢山いそうなところへ行けないか?」


 ハズレが自分の秘宝玉を見て言う。


「秘宝玉所有者になりたいってそんな簡単になれるものなら、ボランデスカールと戦う前に教えていたさ」


「話しにならない、あなたたちの力を借りなくても私がアイツを倒す」


 ミハニーツが拳を握る。


「だから、ロードはそんなこと望まない」


 スワンが意見する。


「あなたに何がわかるの!? あなたはロードの何なわけ!?」


「わ、私はロードの……な、仲間……」


 この時、

(仲間なら今すぐ助けに行くべき、でもあの殺気今度は確実に殺される)

 スワンは思っていた。


「おおかた、あの魔王の殺気に当てられて怯えてるだけでしょ? もういい、議論なんて無駄、私一人でもロードを助けに行く」


「ダメ! ロードの家族ならなおさら行かせられない」


 スワンがミハニーツにしがみ付く。


「離して!」


「嫌!」


「あの~~~~要するにあの魔王を倒せる人がいればいいんですよね?」


 シスター・クレアが口を挟んだ。


「さっきからその話してんだが聞いてねーのかよ」


「いえ、シルベさんが起きるのを待っていたんです」


「私を待ってた?」


「ほら、いるじゃないですかもう一人この異世界に残ってくれている秘宝玉所有者が……」


「………………あっ、ランラ・ロベーロさんか! 確かにあの人ならあの魔王も何とかできるかも」


「どうにかできる? 何者なんだその人は?」


 ブケンが訊く。


「忘れたのか? この異世界で最後の砦ホーウッドに日の光を作って、空間を維持していた人。そして結界の秘宝玉を持つ大英雄の一人だよ」


 スワンとミハニーツ達に確かな希望が見えてくる。

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