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第585話 色合界での自己紹介

 色合界・ガークスボッテン。


 ロードが魔王の少女に連れてこられたのは、ロード自身の故郷だった。


「到着にてございます」


 ラジルバフアの体内から出てくる魔王の少女とロード。色合界に足をつける。


 目の前には廃墟となった城が植物を茂りながら、芸術作品のように緑で化粧されている。


(…………ここがオレの故郷)

(今ならわかる)

(ここでミハニーツと話し)

(ここでムドウと誓いを立て)

(ここでレールと競い合い)

(ここでカイザルと猛特訓をし)

(ここでダイグランと勝負して)

(ここでサシャープと学び)

(ここでヨルヤと日夜共にして)

(ここでクラッカと食事をして)

(ここでファンタと夢を語り合った)

(ここでガリョウ先生に鍛えられ)

(ここでヴィンセント先生に教えられた)


 ロードは昔の思い出を少しずつ思い出していた。


「行こう……兄さん。ラジルバフアお疲れ様」


「有難きお言葉……」


 魔王の少女が浮遊する。そしてロードもそれに付いていく。


(そしてそんな生活を壊した宿敵がこの大魔王)


 ロードはいつでも戦闘できるように柄に手をそえる。


「そんなに警戒しなくても兄さんには何もしない」


 城は黄金の湖の真ん中にある。五つの橋の内の一本を渡りながら魔王の少女が言う。


「どうしてオレを兄と呼ぶ?」


「どうしてって兄さんは私の兄さんだからでしょう? それ以外に理由はない」


「オレには別に兄妹同然で育った家族がいる。その中にお前の姿はない」


「ラジルバフア」


「はっ! 貴様この方を誰だと心得ている。大魔王の――――ぐはっ!」


 魔王の少女はかつてロードたちに恐怖を植え付けたラジルバフアを腕を振るって消し飛ばした。


「そんな話をして欲しいんじゃない。兄さんに説明して欲しいだけ……」


「わ、わかりました。いいかよく聞け人間。お前はこの方の兄なのだ。これは事実の話だ。決して嘘偽りじゃない」


「兄? オレに妹がいるとは初耳だな。大体どうしてオレが兄だとわかる? オレの記憶には妹の姿が一切出て来ないぞ……?」


「我だってこんな姿になるとは思っても――――いててて!」


「ラージールーバーフーアー」


 ラジルバフアの暗雲の身体をつねる魔王の少女。


「説明ですね――貴様は紛れもなくこの方の兄、別の魔王に魔法で血縁者がいないかどうか調べてもらったのだ。そしたら貴様の姿が出た。そしてこの方は生れてからずっと貴様を探していた」


「オレの血縁者? 魔王と血がつながってるって言いたいのか?」


「その通りだ」


「あり得ない。オレは生まれてすぐここで育って……(アレ? 親、兄弟の話は聞いたことが無かった)」


「どうした何か思い当たる節でもあったか?」


「とにかく魔王の兄であるわけがない。お前はそうやってオレを騙して秘宝玉を奪おうとしているな?」


「何故圧倒的な力を見せつけているのに、この方がお前から秘宝玉を奪わないと思うんだ?」


「油断したところを殺して奪う為だろう」


「殺すのは容易いことだと気が付かないのか?」


「あっ」


「フン、理解したか人間」


 橋を進んで城を目指していく魔王の少女たち。


「兄さんの秘宝玉は何の秘宝玉なの?」


 魔王の少女が世間話に身を投じた。


「道の秘宝玉だ」


「フーン、結構レアそうだね」


 魔王の少女は話せることが嬉しいのかさっきから上機嫌だった。


「それじゃあ、私の秘宝玉は何の秘宝玉でしょう?」


 問いを投げかけられる。


「炎に包まれていたから炎の秘宝玉、それとも灰に身体を……いや灰の秘宝玉はカナミか……炎だ炎」


「残念はずれ、正解できなかったので兄さんは私をお姫様抱っこする罰ゲームを――――」


 その時、ロードは魔王の少女の首元を狙って剣を抜剣した。


 しかし、敵意に反応した魔王の少女は尾羽の剣でガキンと弾き返した。


 そして魔王の少女は宙に浮かび上がっていく。共にラジルバフアも……


「その魔物は一体何なんだ。9年前にも似たような魔物がこの色合界のも現れた!」


「この子はかつて極大魔王として数多の異世界を震撼させた魔王。名前をラジルバフアというの……暗雲の秘宝玉の使い手、今は訳あって私の眷属使魔に成り下がっているけどね」


「極大魔王が眷属使魔に……一体どういうことだ?」


「兄さん。そんな堅苦しい話しはなしにしよう? ここは兄さんの家なんだから……ゆっくり暮らしていくといい」


「あの~~~~そろそろ彼の名を聞いた方がよろしいのでは?」


 ヒソヒソとラジルバフアが魔王の少女に口を挟んだ。


「それもそう、兄さん。あなたの名前はなんていうの?」


「ロード・ストンヒュー」


「ロード……結構いい名前貰ったんだ」


 魔王の少女は城の門に腰掛ける。そしてロードを見下ろす。


「お前は?」


「大魔王アップ。それが私の名前……」


 魔王の少女は自らをアップと名乗った。

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