第582話 ミハニーツVS魔王の少女
朱色の光がロードたちを照らした。
(この感覚――あの記憶を失った日と同じだ!)
ロードがはるか上空を見る。
そこには肉眼では捉えきれないが、朱色の光が放たれる円の中心に何かがいた。
それはかつて、ガリョウが戦った者。それはかつて、ヴィンセントを困らせた者。
キョロキョロと下界を見下ろしながら、何かを探す新たなる魔王。
「こちらにてお求めのものがございます!」
極大魔王のラジルバフアが新たなる魔王を呼んでいた。金色の髪に、紅の塗られたまぶた。華奢な身体を隠す朱色の衣と襟に金色の羽毛。その少女と出会うのは3回目であった。
目下ロードの姿を見た魔王の少女は、一気に砲弾以上のスピードで飛んで来る。
「シルベ――皆を安全地帯へアイツは私が倒す!」
「了解――召喚陣一式」
ロード、ハズレ、スワン、グラス、ドノミ、ブケン、シスター・クレア、シルベは召喚陣の中に入り、ミハニーツの言う通り遥か後方の見晴らしのいい丘に連れてこられた。
この時、
(これで秘宝玉の力が発揮できる)
ミハニーツは飛んで来る魔王の少女に剣を構えて迎え撃つ。
まずは殺気を送ることにした。かつてロードはこの殺気に当てられ恐怖したが、魔王の少女は顔色一つ変えずに飛んで来る。
次に剣による余波攻撃を行った。すると魔王の少女は減速したが赤模様の金色の尾羽が剣のように伸び、続く二撃目、三撃目、四撃目、五撃目の余波を切り裂いていく。そしてとうとうミハニーツと同じ目線に立つ魔王の少女。
「おお、我が主様。よくぞ参られました」
極大魔王ラジルバフアが出迎える。
「蜜の巣」
地面から少し浮いていた魔王の少女は直下のハチミツの湖に気が付いていなかった。それもそのはず蜜が場を支配したのは一瞬の出来事だったからだ。
「むっ! これは秘宝玉の力!?」
魔王ラジルバフアが警戒したときは遅い。蜜は魔王の少女の足首に絡みつき固まり捕らえる。
「――――!?」
この時、
(以前は何のダメージも与えられなかったけど……今度は確実にこの手で刺す)
まるで蜜を狙う外敵をその針で突き刺そうとするミハニーツだった。
魔王の少女は動けないでいた。皆わかっていたことだが魔王の少女はこれまで何の攻撃も通用しなかったどころか汚れすらなくしてしまうそういう者だった。
この時、
(確実に仕留めるには直接攻撃しかない)
ミハニーツが魔王の少女に向かうが、
魔王の少女はその攻撃を受け流しも防ぐこともしなかった。
ただただ、急所を刺された。
この時、
(――――!? どういうこと? 迎え撃とうとすれば出来たのに……それをしなかった? こいつ自分から攻撃を受け入れに来た!)
ミハニーツは魔王の少女の不自然さを見てそう思った。
その時、激しい炎が魔王の少女を包み込んだ。剣を引き抜いて、いったん後ろに下がるミハニーツはとんでもない光景を目にした。
まず魔王の少女は燃え尽きた。そして灰となりその灰が再び魔王の少女を形成した。
これによって蜜の汚れも急所に入った攻撃もなかったことになった。
(何――!? 何の秘宝玉だ!?)
ミハニーツは目の前で起きたことを理解した。しかし打開策が浮かばなかった。なにせ相手は急所を突いても霧散化の煙を出すこともなく。ただただ元通りに再生しただけなのだから。何をどうすれば勝てるか分からなかった。
この時、
(いや、再生するだけなら毒だ)
ミハニーツは次なる戦術を考えていた。
剣に塗られたのは紫色の蜜。その蜜は毒性で魔王の少女を突き刺した。
この時、
(これで内部から、蜜の毒がこの魔王を破壊していく)
ミハニーツは勝利を確信していた。
だが、またも炎が魔王の少女に纏い灰燼と帰して、灰が元の魔王の少女の形に戻っていく。
この時、
(まさか、毒蜜を殺した?)
ミハニーツはそう思えた。そう思う以外の発火現象ではなかった。
「これで終わりか? 人間め」
魔王ラジルバフアが魔王の少女の背後に隠れる。
「そう思う?」
それは蜜の巣の本当の姿、ドーム状に固められ、相手を閉じ込める蜜の牢獄。
ミハニーツのとっておきの技だった。
対する魔王の少女はまだ無傷で汚れ一つ見当たらなかった。




