第580話 頼まれごと
ロード一行は自分たちの持ち場の建物の修繕を終えて、ある場所に向かっていた。
同行したのは召喚士シルベ、勇者ミハニーツ、シスター・クレアだった。
何もない丘、まるで腐敗そのものが通ったような荒野を進んで行く。
すると目の前に広がるのは辺り一面に広がるスカルソルジャーの骨の残骸だった。
(大魔王に利用された人たちの骨、これもしっかりと埋葬しなければな)
ここで戦っていたのはミハニーツとスカルサウザンドだった。
「召喚一式」
シルベの召喚陣が直径100メートルにも広がり黒い鏡のような陣へと落ちて行く。
「骨の根城までここにある骨を全部転移させるのか?」
ハズレが訊く。
「ロードたってのお願いだからね~~」
シルベは召喚陣に骨の残骸を吸い込ませては、遠くの骨の根城にスカルソルジャーの骨を移行していく。
「それにしても信じられない。ここまでの数に骨を利用して戦っていたっていうの?」
スワンがその脅威にゾッとする。
「相手は大魔王だった。ロードたちの話を聞く限り、相当強い方だったと思う。全てのスカルソルジャーと空間転移が出来るなんて厄介極まりない」
ミハニーツが言う。
「それでも勝てねーわけじゃねーんだろ……?」
グラスが訊く。
「うん。私だったらスカルソルジャーの10万、20万は蜜の中に閉じ込めて蜜針で一気に総攻撃する」
「ミハニーツ、ヴィンセント先生の授業を覚えているか?」
不意にロードが訊く。
「いずれ私たちが魔王の軍勢を相手に出来るって話? 正直当時の私は信じられなかったけど今はあれは秘宝玉の力のことを言っていたんだと思う」
「オレもそう思う」
「けれど凄いですよね~~秘宝玉、武闘大会でもそうでしたが、持っている持っていないで戦闘の幅が大きく広がってましたし」
ドノミが密かに憧れる。
「秘宝玉の手に入れ方はピキーンとくることだぞ。頭に衝撃を走らせるんだ」
ブケンが自慢げに言う。
「いいえ、秘宝玉の手に入れ方はそれぞれ違う。この私でさえ蜜の秘宝玉を手に入れるのに苦労した」
「ミハニーツはいつ秘宝玉を知ったんだ? オレがいる頃はまだヴィンセント先生に教えてもらえていなかったけど」
「ロードとガリョウ先生と別れた次の日、ヴィンセント先生が重い表情で伝えて来た」
「そうか……オレが知ったのはほんの数か月前だ」
「別に秘宝玉を持った年数で強さが変わるわけじゃない。ロードだったらもっと強くなる」
「……………………(今回の大魔王もそうだったが、オレは魔王に苦戦しすぎじゃないだろうか……? アグロ―ニもアカがいなければ、フォッテイルもスワンがいなければ、ゴワドーンもダンさんの犠牲無くしては、フリフライもアマノさんが居なければ、バグバニッシャーも一人では、シドウオガもブケンの技を見て新技を作らなければ、そして今回のボランデスカールも皆の魂が無ければ勝てなかった)」
「どうしたのロード?」
スワンが難しい顔をしたロード覗き込んでいた。
「あっ……ミハニーツに強くなる方法でも聞きたいなと思って……」
この時、
(またミハニーツさん)
スワンは不服そうだった。
「別に稽古ぐらいなら相手になってもいい。けど秘宝玉の力は自分で引き出さないと意味がない」
「稽古か~~キミどうやったら剣を振った余波だけで相手を吹っ飛ばせるんだ?」
ハズレが訊いていた。
「簡単。鍛えればいいだけ……」
「ロード! キミたちは一体どんな授業を受けて来たんだ……?」
「ガリョウ先生……厳しかったよな」
「うん……それでロード、あなたたち今回の魔王との戦いで自分たちの弱さを知ったはず……」
「ああ、オレたちは弱い」
「だから私が特訓してあげてもいいんだけど」
「嬉しいお誘いだけど。オレたちはまず秘宝玉の使い方を調べて来るよ」
「そう」
残念そうなミハニーツ。
この時、
(ミハニーツさんってもしかしてロードに片思い?)
スワンは思った。
黙々と召喚陣の中に骨の残骸を入れていくシルベ、そして遠く離れた骨の根城に召喚させている。
「ロードさん、この度は資金の提供ありがとうございました」
唐突にシスター・クレアがお礼を言い始めた。
「ああ、いいんだ別に……皆の了承も貰ってる。ハオストラ武闘大会の賞金の半分50枚金貨だがそれでも足りないだろ」
「で、金は何に使うんだ?」
グラスが訊いていた。
「異世界から復興の為の選りすぐりの木材や部品を調達しようと思います。あとロードさんにお願いがあります」
「ん? 何だ?」
「旅先でもし魔界化して住む当てもない人たちがいたら、この異世界に呼んでください。一から何かを始めるより、協力して一つの世界を作り上げた方が何かと復興も早いかと……」
「わかった。もしそういう人がいたら声を掛けてみる」
「よろしくお願いします」
シスター・クレアが深々とお辞儀する。
その時、不吉の序章が起きた。
「ロード! 裏切りの瞳が光ってるぞ!」
ハズレが声を張り上げた。
「何!?」
ロードが驚く。胸元に掛かった宝石を見ると確かに黒く輝いていた。
「魔物がまだいるのか!?」
ブケンが警戒して構える。
「辺りのスカルソルジャーに動きはないけど……それと周囲にも魔物は――――」
シルベが言うとその意見を遮る声があった。
「上――――」
ミハニーツが上空を見ていた。
そこにいたのは手のひらサイズの小さな暗雲。
「「「――――!?」」」
「ミツケタ」
暗雲に単眼、ロードにとってどこか見覚えのある魔物だった。
この魔物がこの異世界に不吉をもたらす者だとロード一行はすぐ知ることになる。




