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第579話 まず知るべきは秘宝玉の秘密

 トントントンと木片に釘打つ音が聞こえてくる。


 それは村の復興に貢献しているロードが奏でる音だった。


 最後の砦・ホーウッドの男たちが近場の村を復興させていたのだ。その手伝いをするロード、ハズレ、グラス、ブケン。その姿はすっかり作業着を着こなしていた。


「お~~~~い皆さ~~~~ん! ロード! ハズレ! グラス! ブケン! 差し入れに来たよ~~!」


 スワンの鳥が鳴くような声に誰もが注目した。


 スワンの手には水差しが、ドノミが荷船をひいて来ておにぎりの山を見せて来た。


「おっもう昼めしか?」「ありがて~~丁度腹空かしてたんだ」「作業中断、皆昼ごはんの時間だ!」


 男たちは組み立てていた家から降りてきたり、物件の一つ一つから出てくる。


 ロードもハズレもグラスもブケンの持ち場を離れ昼食にする。


 それぞれ汚れた手を清らかなスワンの水で洗い流し、ドノミからおにぎりを二つと水の入った紙コップを受け取っていく。


「どう? ロード……作業の手伝いは……?」


 スワンが訊く。


「もう終わりがけだ」


「勇者の使命、気になってますよね?」


 ドノミが訊く。


「ああ、早く復興作業を終わらせて、異世界にはびこる魔王たちを倒しに行くつもりだ」


「おい、使命使命とやりたいのはわかるがよ~~、そんなに急ぐもんか?」


 グラスがドノミからおにぎりを受け取ると丸のみにして完食する。


「今も異世界ではこの世界のように魔王たちによって侵略されているんだ。急いで助けに行かないと」


「まぁ、当面の目的が出来たのはいいが、肝心の最魔の元凶については何も分からなかったんだろ? それはどうするんだ?」


 ブケンがおにぎりを腹の足しにしながら訊く。


「魔王たちなら何か知っているかもしれない。一体一体しらみつぶしに訊いていくさ」


 ロードは木材の山の上に座り食事を始めた。


「…………ロード、中には大魔王もいるんだ……そう簡単に訊き出せるとは限らない……オレたちはまず秘宝玉の使い方を知るべきだ」


 ハズレが提案を出してきた。


「………………それもそうだが」


 ロードは黙々と食事を続けた。



 ▼ ▼ ▼



 スワンが水を配り終わり、ドノミもおにぎりを配り終わる。


 そしてホワイトポッポの従業員たちは話し合いを続ける。

 

「はい、配給終わり、で、ハズレずっと言いたそうにしてたことがあるみたいだけど何なの?」


「ああ、そうだ。大魔王の配下の魔王スカルクイーンがいただろ? 倒された時、奴の秘宝玉と思わしき宝石が炎に包まれて消えたんだ」


「秘宝玉が消えた? 見たのか?」


 グラスが訊く。


「見たからミハニーツさんとかシルベさんに訊いてみたんだ」


 ハズレは白い椅子に身体を預けていた。本来はお客さんの為の椅子だが、ハズレの休憩には丁度いい椅子になっていた。



「それで返答はどうだったんですか?」


 ドノミが詳しくとせがむように訊いていた。


「ミハニーツさんは見たことがあると言っていた。魔王が滅びる時には必ず目にしているとさ」


「そいえば、今まで倒して来た魔王の秘宝玉の行方考えたこともなかったけど……悪い人に使われてないといいけど」


 スワンが心配がる。


「シルベさんは元の持ち主に帰ったって説があった」


 ハズレが話を続ける。


「元の持ち主?」


 ロードが不審がる。


「何でも秘宝玉は所有者が望めばどこにあっても必ず帰って来るらしい」


「必ずか?」


「実際オレはシルベさんの秘宝玉が召喚陣の中に入って、別世界から手元に瞬間移動するところを見せてもらった」


「それって、危ないんじゃ……」


 ドノミが恐ろしいものを見たときのように声を震わせる。


「ああ、だから秘宝玉は売り物にならないし――――」


「相手を倒さないと手に入らない」


 ロードが口にする。


「そういうこと……だからオレの持っているこの秘宝玉はゴワドーンのものじゃないってことだ……多分グレイドさんかな? あの人あの異世界では最強だって言われてたし、秘宝玉の力を持っていたのなら頷ける」


「おい、かかしやろーオレも秘宝玉は持っている。使いこなせれば魔王と対等に戦える。まずはこっち優先で旅をしないか?」


「当初の予定ですとあなたたちは秘宝玉の使い方が知りたくて、管理局管轄のスライムの世界に来たとも言ってました。使うには磨いて探し出すしかない。使うにはそれ相応の態度を取って見せよ。つまり選ばれるしかない。ならば、残るは使うには何かを差し出すしかない。つまり覚悟するしかない、で使えるようにしなくては……」


 ドノミが答えを出す。


「ミハニーツとシルベは他に何か言ってたか?」


 ロードが訊く。


「二人共磨いて探し出した方だって、だから選ばれると決意は分からないだとさ」


 ハズレが答える。


「かかしヤローどうすんだ? オレたちも命をかけなきゃならねーのは今回の戦いで嫌というほどわかった。だからこそ使いこなさなきゃならねーと思うが?」


 グラスが言う。


「秘宝玉があるのとないのとでは命のやり取りは全く違ってくるぞ」


 ブケンが戦いを想定した発言をする。


「私も秘宝玉が欲しい。そうすれば自分の身も守れるもの」


 スワンも欲しがる。


「…………ふぅ~~~~わかった。まずは秘宝玉のことを調べる旅にしよう」


「最初からそうだったろ……焦りすぎなんだよ」


 ロードたちは昼食の会議を終わらせた。


「お~~~~い! おいお~~~~い!」


 遠方からシルベの声がした。どうやらこちらに用があるみたいだった。背後にはシスター・クレアとミハニーツがいた。


(魔王たちを倒すために秘宝玉の情報を集める。そうだな、相手は魔王に大魔王だ。甘く見てはいけない。オレ自身何度も死にかけた。危うく道を踏み外しそうになるところだった。そうだな皆の安全が第一条件だよな)


 ロードは指に付いたおにぎりの最後の米粒まで完食した。


 そして水を飲んで流し込むと木材の山から飛び降りた。


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