表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

570/942

第570話 ハイレベルな戦い

 先端の尖った岩山の頂上にガリョウが君臨する。スモルパフア達はガリョウに阻まれそれ以上進めず、仕方なく空中で待機する。




 ――すると、ラジルバフアの暗雲から空気の塊がガリョウに向けて発射された。その勢いは、ガリョウの居る岩山を押し潰すぐらいの迫力がある。




「オオオオオォォォォォォォォォ!」




 ガリョウが岩山から空気の塊に向かって飛ぶ、そして手にした赤い剣を振り、斬撃が空気の塊とぶつかり、砕かれて、岩山の地に降り注がれた。


 また別の岩山の頂上に降りたったガリョウはその声を耳にする。




「意表はつけないか」




 色合界に重くのしかかるラジルバフアの声が響く。




「ならば、我が自ら覆い潰してくれる」




 天を覆い尽くす暗雲が蠢めく。暗雲の中心部が膨張し、そこから一気に滝が流れるように暗雲が落ち、色合界の地に暗雲の雪崩となって覆い被かぶさって行く。暗雲の滝が天と地を繋ぐ。


 そして暗雲は次第にその形を変えていく。山の何倍もある遥かに大きな人のような輪郭が浮かび上がる。その大きく膨らんだ両肩に位置する部分から暗雲が膨れ上がって、それは大きな両腕となって伸びて色合界の各地帯を鷲掴み出来る程大きな手のひらに形を整えた。頭部に位置する部分には冠のように並ぶ暗雲の角が飛び出し、威厳を示す。先程の天からの滝とは打って変わって、今度は地に立った人の形をした暗雲の背中から、マントを逆立てたように暗雲が伸びて、天を覆い尽くす。そして、その顔を半分に裂くような横線が入り、このとき、線が上下に開かれる。その中からは顔全体を埋め尽くす程巨大な、青く血走った目が不吉を持ってに見開かれた。




「制空権は我にあり」




 その全体像はまさしく暗雲の巨人。それこそが魔王ラジルバフアの真の姿だった。




「――ヴィンセントォォォォォ!」




 岩山の頂上に立つガリョウは大きな声を出して叫ぶが、遥か彼方、勇卵の城にいる彼に聞こえる筈はない。










 それでもヴィンセントは山の何倍も大きな魔王ラジルバフアの出現を見ていたので、即座に攻撃準備に取り掛かる。




「――勇ましき城よ、あの悪しき暗雲を払いたまえ――」




 勇卵の城を囲んでいた金色の殻が光り出し、その殻の光はヴィンセントの錫杖が向けられた先で一点に集中し、ラジルバフアに向けて狙いを定め――盛大に発射――長大な光線が魔王を打ち滅ぼさんとばかりに色合界を突き進む。




 対してラジルバフアもその光線には直ぐに気付く。その対処方法は強引なもので、色合界のどこかの地帯をその大きな手のひらで地盤ごと鷲掴み引き上げ、自分の前に盾となるように構えて、ヴィンセントが発射した光線を受け止めた。盾となった地盤は木っ端ぱ微塵に破壊され、色合界の各地に降り注がれた。




「小賢しい」




 ラジルバフアの重い声が色合界にのしかかり、その大きな右手を振り上げ、近くにあった色合界の――宙を流れる川の立体的な芸術――を真横から、勇卵の城に向けて打ち払う。すると川の水は大きなしぶきとなって、間で空中戦をしていたスモルパフア達や城族の守兵団、最後に勇卵の城を包み込む金色の殻に降りかかり、水浸しになった。


 さらにラジルバフアは大きな左手で近くにあった色合界の――稲妻を固体にして作られた蒼い塔がある地――の塔を束にして鷲掴み、勇卵の城に向けて投射する。すると、蒼い塔は稲妻を撒き散らしながら突き進み、その進行ルートに居た水浸しのスモルパフア達や城族の守兵団は、両軍とも何百体か感電し消し炭みになって甚大な被害をもたらした。そして色合界の各地に槍となって進むいくつかの蒼い塔が突き立ちながらも、勇卵の城を包み込む水浸しになった金色の殻に激突する。


 しかし、激突した稲妻の塔は勇卵の城を守る金色の殻に感電するどころか傷一つ付けることは出来なかった。その稲妻の塔は逆に金色の殻の放った光の輝きによって消し去られた。




「…………ならば……」




 ラジルバフアが両手でそれぞれ色合界の地を掴つかむ。その暗雲の手は掴んだ地をそのまま握にぎり潰し、手の内側に取り込ませた。


 そしてラジルバフアは両腕を勇卵の城に向けて構え、




「入道砲」




 暗雲の両腕が大砲の形になって、砕かれた色合界の地が連射される。右手の大砲からは、緑の結晶の塊かたまりが、左手の大砲からは、捻られた大地の残骸が、次々と暗雲を引いて発射されていく。


 ラジルバフアの砲撃は、スモルパフア達と城族の守兵団も巻き込みながら勇卵の城に、


 ――激突! 


 だが、連続した砲撃の嵐を持ってしても、光り輝やく金色の殻が破られることはなく、砲弾となった色合界の地を否定するかのように消し去ってしまった。






(……無駄だ、この金色の湖で出来た黄金の卵殻は、決して色合界の地を通しはしない。そういう攻撃をいくら続けても光がそれを消し去る)




 砲撃の嵐にビクともしない金色の殻を見て、ヴィンセントがさも当然のことのように思う。






「……どうせ聖法だ、この手で覆い潰してくれる」




 砲撃を無駄と知ったラジルバフアが両腕に残った色合界の地を辺りにばら撒いて捨てる。と、右腕を勇卵の城に向けて膨らませるように伸ばして行く。




 しかし、その暗雲の腕は伸びて行く途中で一つの斬撃によって断たれ空中分解した。腕を切り崩す程の豪快な斬撃を放ったのは、やはりガリョウだった。熱風渦巻く山の頂上でラジルバフアをそれ以上進ませない為に君臨する。




「――邪魔をするか!」




 ラジルバフアは左の手のひらをガリョウに向けて、山ごと吹き飛ばす空気の塊を放つ。


 それに対してガリョウはあえて直撃しようとして山から飛んだ。そうして真っ向から挑むように赤い剣を豪快に振って、斬撃を生み、空気の塊を四方八方に弾き飛ばした。その隙にラジルバフアの左手が元の形を取り戻す。




「ハアァ! ハアァ! ハアァ! ハアァ!」




 ラジルバフアは構わず、更なる空気の塊を左手から放つ。しかしガリョウの斬撃で弾かれる。ラジルバフアは構わず、更なる空気の塊を右手から放つ。しかしガリョウに弾かれる。色合界の各地に弾かれた空気の塊が降り注ぐ。




 ――ダン! とガリョウが地面を強く蹴って、空気の塊が放たれる中を突き進み、暗雲の手を赤い剣で貫いて穴を開け、ラジルバフアの顔のある上空まで飛んだ。




「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」




 ガリョウが赤い剣を豪快に振り下ろし、それによって生まれた斬撃がラジルバフアの巨大な身体を断絶した。




「……ふん」




 しかしラジルバフアの身体は暗雲だ。多少の欠損はあるもののそれで倒すことは叶わない。


 両断され辺りに散った暗雲が、落下して行くガリョウを逃すまいと包み、更に左手を、右手を、と暗雲を重ね掛けて、最後に両断された本体を無理矢理動かして暗雲の中にあるガリョウを全身で取り込んだ。


 ガリョウがラジルバフアの暗雲の身体の中に閉じ込められ、




「暗覆入道」




 その暗雲の身体が鈍器となって、全方向からガリョウに襲いかかる。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ