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第57話 真っ黒い黒幕

 ストンヒュー宮殿・玉座の間。

 

 玉座に腰を下ろしたパレロット王にこれまでのことを皆で説明した。

 

「つまり悪しき竜は何者かに操られて暴れていたということか?」

 

「はい、ですからもう竜に怯える必要はありません。すぐに民たちにことの顛末てんまつを知らせ、安心させてあげましょう」


 ロードはそう進言した。

 

「しかし、私の立場からでもそうすぐには決められない。竜の存在はやはり民の不安をあおるだろう。竜の入国までは許可できん」

 

(入国までは、やっぱり通らないか~~)

 

「――父上、私としては問題なく入国させてもいいと思います。竜に凶暴性は一切なく、それでいて我々との友好的な関係を望んでいました。民を安心させるなら、いっそ入国させてしまい、偏見へんけんを持たれた竜のイメージを回復させるべきかと……」

 

「言いたいことはわかる。が、やはり私一人で決定できる話ではない。大臣たちを集めて会議をしてからだ」

 

「当然だ。この件に関しては然るべき手順を踏むべき必要はある」


 カリフ王が至極当然のことを言う。

 

「「………………」」

 

 二人の王に言われては、黙るほかない。

 

「なに少しの辛抱だ……お前たちの話通りなら一度の会議で入国は決まるだろう」

 

「わかりました。アカにはそう伝えます」

 

「では父上、せめて竜に会われてはどうですか? 印象がだいぶ変わると思います」

 

「ん~~そうだな、伝説の竜とやらの存在には私の心も動かされている。ぜひお目にかかりたい」

 

「意外と子供なんだな。この王様」


 ルロウが呟く。

 

「それとさっき話に上がった真っ黒い剣、これに何か心当たりはありますか? 伝承を知っているとか、関連する書籍を知っているとか……」

 

「……私は思い当たらないが、歴史家を呼んで訪ねてみるか?」

 

「お願いします」

(でも、竜のときもここでは何もわからなかったし、期待は出来ないよなぁ)

 

「カリフ王よまだお礼を言っていなかったな」

 

「ん? 礼?」

 

「そちらの送り出してくれた使いの者のことだ」

 

「ああ、我が国が誇る最速の兵士のことか」

 

(ああ、黒いチーターさんか……)

 

「あの報せのおかげで、こちらは色々な準備をする時間ができた。おかげで近隣の街や村の支援も滞りなく完了した。心から感謝している」

 

「そうか、彼は無事か?」

 

「多少の怪我と疲れがあるが、彼自身は大丈夫だと言っていた」

 

「彼にも早く竜の脅威はなくなったと伝えないと」


 ロードは切り出した。

 

「だな。パレロット王、彼は今どこに?」

 

「使用人長に連れてきてもらうよう頼んでおいた。じきに姿を見せるだろう」

 

「けど、黒いチーターとは珍しい。たしか遠い地にいる種でしたよね」


 シャルンス王子が何気なくいってみた。

 

「遠い地か~~一度行ってみたいな。ルロウは行ったことあるか?」

 

「黒いチーターのいる国か? ああ、行ったことある。海の向こうの国でかなり遠いが……」

 

「そうか……オレもいつか旅に出たら……」

 

「――待て、黒いチーターとは誰のことだ?」


 カリフ王の脳裏に疑問が浮かんだようだ。

 

「……えっ? 使いの方でしょう……?」

 

「我が国に黒いチーターはいない。普通の毛並みの者しか……」

 

「しかし、使いの者は黒の毛並みだったが……」


 パレロット王が宣言する。

 

「そんなはずはない」

 

(どういうことだ?)

 

「いえ、私も黒だと覚えがあります」


シャルンス王子も同じ意見だった。

 

「そうチュウ」「黒だチー」「どういうことチャア?」

 

(……あれ)

(そいえば……)

(黒いチーターは言ってた)

 

 そのとき、玉座の間の扉が開いて、使用人長ビッシィさんが顔を覗かせた。

 

「国王様、使いの方をお連れしました」

 

「おお、入れ」

 


(国の皆は命を落としてしまって、王様の最後の命令でここに来たって)

(でも、皆、生きていた)

(竜に追いかけられて逃げていた?)

(正気を失い暴れていたアカが……あれだけの街や村を巡るほど黒いチーターに執着して追いかけたのはのはどうしてだ?)

(真っ黒い剣に刺されてアカは黒くなっていた……)

(黒?)

(真っ黒い竜に黒いチーター)

(黒いチーターはレオリカンの兵士にはいない?)

(じゃあ……)

 

 

 玉座に入って来たのは黒いチーターだった。

 

 

「黒だチュウ」「やっぱりチー」「王様の間違いチャア」

 

「何……?」


 カリフ王が怪訝な表情を見せる。

 

(アカの戦っていた敵って――!?)

 

 黒いチーターと目が合った気がした。

 けど、その赤い目は違うものを見ていた。

 右手に持っていた真っ黒い剣、それを見ているようだった。

 

「――っ!!!?」

 

 そのとき、真っ黒い剣が突然チーターの元へ飛んで行った。

 

 黒いチーターが飛んで行った真っ黒い剣を口で取った。

 

(元凶はこいつだ!!)

 

「ビッシィさん! そいつから離れて!!」

 

「えっ?」

 

 その時、黒いチータに異変があった。

 

『『『!?』』』

 

 咥えていた真っ黒い剣から、黒い靄が煙のように立ち込めていた。

 黒い靄は意思のある生き物のようにその身にまとわりついていく。

 

 その場にいる誰もが動きを止めてと渦巻く黒い靄を眺めていた。

 渦巻く黒い靄はだんだん揺らめく黒い衣に変わって人の形になっていた。

 形はそう見えても、それは人ではない。

 

「クッハッハッハッハッハッハッハッハ」

 

 揺らめく黒い衣のマントが翻されて真っ黒い異形の怪物が姿を見せた。


(お、鬼?)

 

 その姿は絵本に描かれているような鎧武者と鬼を足しているように見えた。

 兜から伸びる2本の長い角と鎧の上からでも分かる屈強な肉体が見て取れた。

 

 手には竜に突き刺さっていた真っ黒い剣が握られている。

 その足元には普通の柄のチーターが倒れていた。

 

「雑魚共がぁ!! ようやく竜を倒して来たか!!」

 

「き、きゃーーーーーーーー」

 

 ビッシィさんが悲鳴を上げて、玉座の間から出て行った。

 

「――な、何者だ!!」

 

「下がってくださいカリフ王! たぶんそいつはアカの言ってた異なる世界の住人です!」


 ロードは確信を持って言う。

 

「何!?」

 

「アカは何者かに真っ黒い剣を刺されて、真っ黒い竜にされてしまっていた。あなたの国の使いもこいつに真っ黒にされたに違いありません」

 

「この者が事件の……」

 

 一同が改めて黒い鎧の鬼を見る。

 

「気づくのが遅いわ!! 真相を知るのも! 竜を倒してくるのも! 遅いわ!!」

 

「お前は何者だ……?」

 

(人間でも、動物でも、竜でもない)

(じゃあ、これが――)

 

「ふん! 田舎世界が!!」

 

「……魔物?」

 

「違うわぁ!! 雑魚が!!」

 

 怒りを表し真っ黒い剣を突き付けてくる。

 

「オレは魔王アグロ―ニ!! これを覚える頭のない雑魚共はオレが捌いてやる!!」

 

 

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