表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

565/942

第565話 迫り来る暗い本物の魔物

「モアーーーー!」




 一方魔物はその飛び出しに、正確に拳を当てさせようとロードの移動速度を考え、最適な位置を拳で狙う。


 が、ロードはその一歩前に行く寸前、かかとで進行を止め、まるで魔物の攻撃を読んでいたかのように、拳擦れ擦れの位置で回避、ついでに持っていた剣で魔物の腕を斬る。


 しかし魔物はその腕を斬られながらも、前に向かってロードに突進する。


 それをロードは上に飛んで躱し、魔物はロードの下を通り過ぎる。


 そう見えたが、その魔物は尻尾を使って頭上を通るロードを叩きつけようと逃げ場のない空中を狙う。


 なのでロードは剣を魔物の頭に突き刺し、それ以上の進行を止めて、ついでに足で思いっきり魔物を踏ふみつけて、地面に顔から倒れ伏せさせる。




 僅わずか、三秒ほどの出来ごとだった。




 頭を刺したロードが勝負を制したはずだった。あとは両手で力を加えるだけ、それだけで魔物の頭や顔を切り裂けるはずだった。




「――!?――」




 剣を突き刺したその魔物の傷口から、暗い煙が噴き出したのをロードが見た瞬間、その剣を抜いてその場から飛んで離なれた。




「 ! 」




 ロードの持っていた剣、その剣先が欠けていた。それは先程、魔物の頭部を突き刺した長さと丁度同じくらいだった。


 ムドウもその現象を見て、訝しむ。




「モアーーーー!」




 魔物がその大きな目でロードを見据えたまま殴りかかって行く。


 ロードは左からの拳を下がって、その後から――本命だったのだろう――右から大きく振るわれた拳を上に後転するように飛んで回避、魔物から離れた。




(いくらなんでもやり過ぎじゃないか? あの魔物……戦い方が今までの魔物と全然違う……それに剣が炭化したのか?……ロードの武器は一本だけ、あれがなくなったら戦えないぞ……)




 ムドウは、魔物の攻撃を躱し続けるロードを見ながら思考を巡らす。




(それで追撃までしてくるのは、流石に厳しすぎやしないか?)




 ムドウが冷静に、ヴィンセントが作り出したであろう、その魔物を放った意図を考える。


 すると、魔物の全身から何やら暗い蒸気に似た何かが噴き出すのが見える。




(ん? 煙が傷口から出て……!)




 ムドウは気付いて、そこから先は声に出す。




「ロード離れろ! 傷口から煙が来るぞ!」




 ムドウがそう言った瞬間、




「モアーーーーーーーーー!」




 その煙は一気に魔物の全身の傷口から放出される。




「――!?――」




 間近で戦っていたロードが遅れて知るが、放出された煙に包まれた。そしてロードの持っていた剣、その刀身が煙に触れると、剣は炭化するように崩れた。


 その剣が崩れていく様に気を取られたロードは、それが隙になった。魔物が一気に間合いを詰めてきて、正面からロードを殴りにかかる。


 それに気づいたロードが地面を軽く蹴って後ろへ飛ぼうとするが、間に合わない。




 魔物のハンマーのような拳が、ロードに直撃した。




 そのまま飛ばされ、数十メートル後ろの小さな高台に背中から激突する。




「ぐっ……!」




 ロードはダメージを受け倒れそうになるも、すぐさま魔物の居いた方を見る。


 案の定、こちらに向かって魔物がハンマーのような両手を振り被りながら、突撃して来るのが見える。


 ロードはその位置から動いて魔物の攻撃を避ける。魔物の両手の攻撃はロードの背後にあった高台に直撃し、その一部を砕くだいた。


 対してロードは避けたまでは良かったのだが、




「――!――」




 進行方向に高台があった為に、思いっきり頭を――ゴン!――とぶつけた。




「うっ!」




 ロードは額の痛みで出血したのが分かった。しかし休む暇はない。すぐ背後で魔物がハンマーのような拳を振り被っていたからだ。


 そのとき、ムドウが持ってきていた弓で矢を放ったが、その大きな目にはしっかりと見えていたのだろう、矢に視線を向けず避けた。




(視野も広い、まさかコイツ……!)




 ムドウはそれでも矢を放ちながらロードの方に向かうが、




「――ロード!――避け――」




 そして魔物のハンマーのような拳が、目の前に居たロードを背後の高台ごと殴りつけた。




「モアアアアアアアアァァァァァ!」




 魔物は拳が直撃したことを感じで叫さけんでいた。


 攻撃を受けたロードの方は流石にその場に座り込んだ。そして実感した。




(わかった……ぞ……コイツ……)




 息も絶え絶えに、頭から血を流すロードが思う。


 そして二人がその魔物を改めて見て、確信する。






((コイツは……本物の魔物だ……))






「モアアアアァァァァァ…………」




 魔物が叫ぶ中、その大きな目で  ロードを正確に認識した途端叫ぶのをやめた。




 その目が間近でロードを見つめる。


 その魔物は何度か目を動かして確認する。本当にそれなのか、よく顔を見て、考えるように、思い出すように、




「?」


(そうだ、この魔物憶えてる。こいつが現れてからめちゃくちゃになったんだ)


 青年のロードが思う。



 ロードの方も息を整えながら、その魔物が何をしているのか考えてみるが、その大きな一つ目の魔物はすぐにこう言った。










「………………ミツケタ………………」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ