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第564話 モアアアアアアアアアア!!



 そして積台地帯では、ロードが崖の上から、ムドウが魔物と戦っているのを眺めている。


 ロードの側にいるスーエルさんの羽の模様もようの数は七二だった。つまりムドウはあれから三体の魔物を一人で倒していたのだった。


 そして今もムドウは魔物と戦っていた。その魔物は暗い影のようだとロードの目には映っていて、少し押されているようにも見える。


 そして、




(あの魔物と戦いだしてから長いなぁ……いつものムドウなら、とっくに倒してる時間だけど……やっぱりまだ疲れてるのかなぁ?)




 ロードはそう思って、崖に座っていた状態から立ち上がる。




(手を貸かした方がいいかなぁ……余計なお世話かなぁ)




 身体を動かすべきか、友人を見守るべきか考えて、立往生していると、




「――ロード! 手を貸かしてくれ!」




 崖の下で戦っていたムドウがかなり退さがって来て、ロードを呼んだ。




「――!?」




 その声をロードが聞くと、何の躊躇いもなく、立っていた崖から飛び降りた。高さ一○メートル程の崖の下、軽く片足で着地する。


 そしてロードはムドウの方に走って行く。




「気をつけろ! コイツてごわいぞ!」




 ムドウがその魔物の拳を避けてロードに注意を促した。




「モアアアアァァァァァーーー」




 その高い鳴き声を発した魔物をロードは見た。


 それは四メートルの大きさに青と紫を混まぜた暗い紺色の魔物。


 全体的に、袋に何か柔かいものを詰め込んで硬くなったかのような質感の身体は、前のめり。


 前に飛び出したように長い顔は大きな目が一つと裂さけた口。


 常に肘や膝を曲げて、四足歩行に近い状態で動いている。


 その手の拳はハンマーを連想させ、身体に見合った長さの尻尾しっぽがある。




「モアアァァーー」




 ムドウはその魔物から距離を取って、ロードの側に駆け寄る。




「……オレは右側から攻撃する。ムドウは左側からだ」


「わかった」




 二人がその通りに魔物の左右に分かれた。


 その大きな目をした魔物が、ムドウを視線だけで追っているのをロードが確認すると、魔物の手を剣で斬りつけた。




「モアアアァァァーー!」




 斬りつけられた魔物は今度はロードを見る。


 ――すると、ムドウは自分に向けられていた視線がロードに変わったと知ると、今度はムドウが魔物の足を剣で斬りつける。




「モアアー!?」




 魔物がムドウに視線を移すが、またもロードがその左足を斬りつける。




「モアア!?」




 魔物がロードに視線を移すが、またもムドウがその右手を斬りつける。


 それが連続して数回続く。




「モア、モアアア! モアッ! モアアアア! モアアア!? モアァ! モアアアァァァァァ!?」




 魔物は翻弄されていた。




(よし、この調子だムドウ)


(うん)




 ロードとムドウが目だけを合わせて会話した。




「モアアアアァァァァァ!!」




 怒ったのか魔物は斬りつけられた後に、その肩から跳とんで逃げたロードに、目を向け手を伸ばして追いかける。




(ムドウ今だ! コイツの首を斬きれ!)




 自分にだけ向かってきた魔物を見て、チャンスと踏ふんだロードはムドウに目だけで指示を出した。


 それに答えようとムドウが魔物の首に狙いを定め跳ぶ――――――が、


 魔物が突然ムドウに向き直り、今まさに攻撃を仕掛しかける寸前で、その魔物の腕が、振り向きざまに狙い澄ましたかのようにムドウに当たり、そのまま殴り落とされた。それをロードは驚いていた。




「――がはっ!」




 地面に叩き落とされたムドウは、声を吐いた。




「モア!」




 魔物は完全にムドウに狙いをつけそのハンマーのような拳で追い討ちをかける。


 しかしその魔物の頭を、ロードが飛び越えるついでに、思いっきり踏みつけ、




「モッ!?」




 魔物が地面に倒れ伏す。




「ムドウ! 大丈夫か……?」


「あ、ああ……」




 ムドウのダメージは大したことはなかった。




「モア~~~~」




 各所を斬りつけられたせいか、呻く魔物が伏せたまま起き上がって来ない。




「……ムドウ一旦アレから離はなれよう」


「すまない。仕留られなくて……」


「いいんだ。それよりオマエの身体の方が心配だ。歩けるか?」


「ああ、大したことはない」




 ロードとムドウは一旦、魔物から離れることにして歩く。




「ロード、あの魔物知ってるか?」


「……いや……わからない。図鑑はたくさん観てきたけど……その中にはいなかったと思う」




 ロードは少し考えたが、結局答えは出なかった。




「最近の先生は、よく知らない魔物出すよな」


「うん、さっきは驚いた。オレを見ていたはずなのに、急にムドウに振り向いて、まるで来ることがわかってたみたいな」




 二人はゆっくり話し合いながら歩く。背後の魔物は全く気にしない。魔討訓練の魔物は追撃はしないからだ。




「……学習してフェイントをかけてくる魔物か、どうりでやりにくかった訳だ」


「時間かかってたな……どうするムドウ作戦を立ててからもう一度……」




 ロードが話している途中、それは来た。大きな足音を立てて追って来た。




「モアアアアアァァァァァーーーーーー!!」




 その大きな目で正確に、ロードとムドウを捉えて間違いなく向かい、その立ち位置にハンマーのような両手を打ち込んでくる。




「「――!?――」」




 二人はとっさに前に出て、後ろから殴りかかって来た魔物の拳を避けた。その魔物の一撃が少し地面に衝撃を走らせた。






「えっ?」


 ロードが驚いた。




「追ってきた?」


 ムドウが不審を口にした。




 拳を避けられた魔物は構かまわず二人を追い、立て続けに殴りに行く。




「どういうことだ? 魔討訓練の魔物は、危険過ぎる世界だからいつでも逃げられるようにって安全を考えて、オレ達を追っては来ないはずじゃなかったのか?」




 ロードが後ろへ下がりながら魔物の攻撃を避けて隣に居るムドウに聞く。




「先生が調整を変えたんじゃ……いや、間違えたのか?…………どっちか分からないけど、あれだけ斬ったのによく動くな」




 ムドウが後ろへ下がりながら魔物の攻撃を避けて隣に居るロードと話す。




「わかった、オレが一気に片付けるよ」




 そう言うとロードは、後ろへ大きく飛び下がり、同時に膝を曲げ足に力を溜めて、勢いよく地面を蹴って、向かって来る魔物へと一気に間合いを詰ようと飛び出した。



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