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第563話 各グループの作戦

 色合界・ガークスボッデンの各地では、十人の子供達がそれぞれ武器を持って魔物を倒す訓練をしている。








 目霞地帯、そこは辺り一帯が目を掠ませるくらい濃い黄色の霧で覆われて、しかし、その地にいくつかある岩の柱を中心に霧が反発するように離されている。足場も荒れていて歩きにくそうな地である。




 今そこではレールとファンタが訓練していた。




 レールは岩の柱から少し離れて、黄色の霧に向けて両手で槍を回し、風を起こし、視界を広げる為に霧を吹き散らしている。


 すぐ近くで霧の向こうから両側に刃が付いた武器を持ったファンタが飛び出して来て、レールの側まで走り足場の悪い地を平然と行く。続いて霧からスーエルさんも出て来る。




「ファンタ、あいつは見つかったか?」




 レールが槍を回していた手を止めて聞いた。




「ダメだレール、途中で見つけて追いかけたけど、逃げられた」


「……三八体目だったが、いつまでもこだわってても仕方しかたない……次行くぞ次……」


「わかった」




 ファンタが了解すると二人は霧の中に突っ込んで走って行く。足場も視界も悪い中を走って行く。










 切森地帯、そこは刃のような草と葉っぱの茂みだけで森を作ったような不思議かつ危険な地だった。




 今そこではカイザルとヨルヤが訓練をしている。




 二人の身体は刃のような草や葉に少しばかり傷をつけられていた。しかし服の方にその影響は見られない特別な物なのがわかる。


 今は僅かな安全地帯で茂みの影から一体の魔物を見張っている。その魔物は崩くずれるような溶るような胴体、大きく短い腕、長い首に仮面のような顔を被せた魔物だ。




「……四五体目はあれでいいだろ……カイザル……あれは仮面の顔を割れば終わるんだ」




「スキを見て背後から奇襲なんて暇はない……オレが引きつける、そのスキを突けヨルヤ」




 言うとカイザルは走って魔物の前へ飛び出して行く。




「……あっ! 待っ!…………はぁ……この森でよくそんな作戦する気になるなぁ……まぁ……オレは楽だからいいけどさ……」




 ヨルヤは魔物に隙が出来るのを、腰を低くくする姿勢で、サーベルを逆手に構えて待つ。










 塗変地帯、そこは極彩色の橋のような柱とも見える不安定な物で幾重にも繋がれた巨大な迷路。なかに入ってしまえば、周りの色に惑わされ方向感覚を狂わせられる。しかしその中にいても勇卵の城からの灯し火がそれを迷わせることはない。




 今そこではサシャープとダイグランが訓練をしている。




二人は、斜めに架られていた大きな橋のような柱とも見える物の上に立っていた。そして直下、そこで蠢く魔物の様子を伺がっていた。




その魔物は巨大なムカデを丸く膨らませたような形をしていた。そして恐らく捕食型だったのだろう。周囲の魔物達を次々と丸呑みにしていた。


さらに至る所で身体をぶつけ、迷路を形作る極彩色の橋のような柱を崩していく。


しかし、その程度のことを続けても、ここは決して全壊しないだろう。何故なら崩れゆくそれは、別の橋のような柱と接触すると、それに溶け込むような形で結合され、新たな地形へと変貌したからだ。残骸も破片も、見分けが付かなくなったのだ。




「もう少しだな……サシャープ」




 長い柄えに大きな鉄球が付いた武器を肩に担ぎながらダイグランが呟く。




「うん……ヤオレインは食べた魔物を自分の一部として繋げるから、倒せれば、食べた魔物も連鎖的に倒せる……もう百は食べてるから、それがまとめて討伐数に加算されるんじゃないかな……」




 サシャープが大きな大剣を肩に担いで言う。




「アレを弱らせながら戦っていたせいで……まだ一三体で止まったままだからな……なんとしても――――ふん! ――――倒したい……最後が近いと暴れ始めるんだったな?」




 ダイグランが話してる途中に襲い掛かって来た虫の魔物を、持っていた武器を勢いよく振って叩き潰した。




「ああ、だからそろそろ頃合いだ……準備はいいね、ダイグラン」




 サシャープが冷静に魔物を分析して、知らせた。




「ああ……弱っていても油断はしない」




 そうダイグランが言って、二人ふたりは共に立っていた場所から下へ飛び降りて行く。その魔物を倒すときが来た。








 浮足地帯、そこは様々な大きさの岩盤が宙にいくつも浮いていて、空を歩く為の足場になっていた。


 地上から数百メートルまで岩盤の群が浮いているが、それ以外の物は重力の影響を受けている。




 今そこではミハニーツとクラッカが訓練をしている。




 二人は岩盤の群を上や下へと、右や左へと、縦横無尽に飛とび回って、その地にいる魔物達を次々と討伐して行く。


 別々の場所にいたミハニーツとクラッカは同時に岩盤から飛び、羽の生えた魔物をその手に持った武器で斬きる。そのあと二人は交差するような形になって、別々の岩盤に着地する。




「やった! 三六体目! ミハニーツそっち!?」




 ノコギリのような武器を持ったクラッカがはしゃぐような口調でミハニーツに向いて聞く。




「……今ので、四三体目……」




 自分の身長の倍はあるだろう薙刀を持っていたミハニーツは、可憐に立ち振る舞いながら静かに言う。




「もう七九体目か! やっぱり手分けすると効率がいいな!」




 後から追いついて来たスーエルさんの数字を見てクラッカが喜ぶ。




「単にここが狩場ってだけの気もするけど? クラッカ…………魔物の数も少なくなっているみたいだし」




 辺りに目を流しながらミハニーツは言う。




「まだまだいるって」


「……ここの魔物弱いから少し退屈」




「……まぁわかるけど、あたしはここで戦うの好きなんだよ。だからちょっと付き合えって」


「……まぁいいけど」




「じゃあ、あたしあっち行くから」




 言ってクラッカが別の岩盤へ飛んで行く。ミハニーツもクラッカとは逆方向の岩盤へ飛んで行く。


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