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第560話 家族同然の子供たち

 ガリョウの授業が終わると、子供達の昼食の時間だ。


 勇卵の城の中層、屋外に面した眺めのいい場所に机と椅子が並べられ、辺りでは色とりどりの花が咲いていた。


 そこにある机の上にパイトさん達が準備した豪華絢爛な食事が置いてある。




 今そこでは、十人全員が椅子に着いて食事をしている。




 周りではパイトさん達が様々な楽器で癒しの音楽を弾いていたり、花に水をやっていたり、追加の食事を持っていたりする。




 席の並ならび順じゅんは、


 ヨルヤ、レール、ファンタ、ロード、ムドウ。


 その対面には、ミハニーツ、クラッカ、カイザル、ダイグラン、サシャープがいる。




「あーー、しんどかったぁ」




 心底疲れた声を上げるのは、ヨルヤ。




「二時間ずっと動き続けるからなー、効率悪いような気がする」




 ファンタがスープを口に運びながら呟く。




「オマエ達の鍛え方が足りないだけだ……ガリョウ先生の考えに従したがっていれば間違いはない」




 カイザルが断言した。




「まぁ厳しいが、オレ達の為になっているのは、よくわかる」




 ダイグランが同意した。




「ロード、オマエまた怒られてたな……いい加減打ち込めないのか?」


「………………」




 レールの問いかけに、ロードは何も言わなかった。




「そうそう、昔はフツーに、あたしらとやり合えただろ?」




 クラッカも何気なく問いかける。




「人と戦いたくないだっけ? ボクらに遠慮は無用だよ」




 サシャープも淡々と言う。




「ロードォ……ちゃんと戦った方がいいぞ……ガリョウ先生、怖すぎだし」




 ヨルヤが先程のことを思い出して、震えながら言う。






「……ねぇ、皆……人と戦えないからって、何かいけないことでもある?…………私達の敵は結局、魔物と魔王でしょ? 先生はああ言うけど、私はロードが人と戦えなくてもいいと思う……」






 ミハニーツが自分の考かんがえを述のべた。




「ミハニーツ、敵は魔物だけではないとガリョウ先生も仰っていただろう!」




 カイザルが声を張り上げて言った。




「食事中に大声はやめてくれカイザル」




 溜め息混じりにダイグランが言う。




「カイザルが正しいな、ミハニーツ……人は敵じゃないけど、バカなヤツはケンカ売ってくる……だったら、そういう時の為に戦い方は身につけた方がいいだろ」




 クラッカがミハニーツに補足説明した。




「ロードがやりたくないって言ってるの! そんな人達が現れたら、私が一人残らず追い払えばいい! 私がロードをずっと守ればいい!」




 ミハニーツが堂々と宣言した。




「オマエが一番いちばんロードのこと考えてねーなぁ」




 レールがボソッと言ったことに対し、




「……今なんて言った? ……レール」




 ミハニーツが声の主を鋭く睨みつけた。




「そんな顔しても怖くねーぞ、ミハニーツ」




 冷めているレールは気にせず食事を続ける。




「ケンカするな!……食事中だぞ」




 ダイグランが注意した。


 ムドウとロードはその場に、少し気まずさを感じる。




「け、けどロードって魔討訓練だと、いつも一番成績いいだろ! 人って言っても、その辺のヤツだったらロードの相手にもならないだろ」




 ファンタが何とか場の雰囲気を変えようとする。




「たしかに、ロードはボクらの誰よりも強いかもね」




 サシャープが淡々と食事をしながら言う。




「魔物と人は違うだろ……それにロードが人と戦えたとしても、どれくらいが手加減かも覚えなきゃ相手が死んじまうだろ……やっぱ練習はいるって」




 クラッカが自分達が普通の人間より強いことを自覚したうえで言う。




「いっそ、勇者の道を今からでも考え直なおしたらどうだ? ……正直そんな心構えでは向いてるとは思えん」




 カイザルは助言のつもりだが、とてもそう聞こえるようなセリフではなかった。




「言い過ぎだぞ……カイザル……」




 案の定、食事をしていたダイグランが注意した。




「まぁ、人型の魔物にまで手が出せないとなったら、ジョーダンじゃ済まないしなー」




 レールが冷めた声で言う。




「そうだ! ロードは生命力を他人に分けて傷を治せるんだろ!? だったらいっそ医者みたいなの目指したらどーよ!」




 クラッカが明るく、閃いた! と言わんばかりの答えを出した。




「確たしかに、ロードには向いてそうだ」




 ダイグランが食事をしながら同意した。


(この時からすでにオレは傷や怪我を治せていたのか……)


 青年ロードが思う。




「だったらオレ、怪我したらロードのところ行こー」




 軽い調子でファンタが言う。




「神様なんて崇られて、ロードの村が出来たりして……」




 珍しく場を和ませようとサシャープが話に乗ってきた。




「なんか平和そうだぁ、ロードがいれば魔物も近寄れないだろーしねぇ」




 ヨルヤがジュースを飲みながら柔らかく言う。




「………………」




 話の中心たるロードは浮かない顔のまま食事を続けている。




「ちょっと、貴方た……」




 その様子を見たミハニーツが黙り込んだロードに変って口を出そうとすると、




「――いい加減にしてくれ!――」




 席を立ったムドウが、はっきりした声を出して言った。


 普段の彼は考えにくい立ち振る舞いだった為、子供達は少し驚いた。


 パイトさん達もびっくりして、あわあわしたり、固まったり、何も無いところでひっくり返ったりした。




「ロードは勇者になるんだ! ――その為にここにいるだ! ……皆知ってるだろ! ――ロードが人と戦えなくなった理由を!」




 その言葉を受けた子供達は静まり返り、ロードの立場になって思い改めた。




 ファンタが、


「ごめんロード……」


 レールが、


「言い過すぎた……」


 ヨルヤが、


「オレも……」


 ミハニーツが、


「ロードごめんなさい、嫌な気分にさせて……」


 クラッカが、


「悪い……」


 カイザルが、


「失言だった……」


 ダイグランが、


「すまん……」


 サシャープが、


「謝るよ……」










「……いいよ……」




 ロードは皆に優しい笑顔を向むけた。




 その一連のやりとりを聞いて、ムドウも座り直した。


 パイトさん達も仕事を再開する。






「早く食べよう……午後はまだ、魔討訓練がある」




 ロードがそう言うと、皆が、――だね――おう――ああ――うん――とそれぞれ相槌を打つ。


 ロードは気にしていなかった訳ではなかったが、今は暗くはならない。皆がいれば何も怖くわない。




「ロード! このケーキどうだ! おいしいぞー」


「またお菓子系、っおい! 砂糖乗せるのはなしだ! クラッカさん!」


「言ってやれファンタ……ロードにはこの見たこともない黒い肉を食す許可を……」


「カイザル……ここはロードの好きな物をあげるところだ」


「ダイグラン、ロードの好きな物って?」


「健康食品、だからヨルヤこれ回してあげて……」


「さすがミハニーツ用意が……うげっ! スゲー色の葉っぱ、これ食い物か?」


「レール、パイトさんが食べられない物持って来る訳ないだろ……」


「と言いつつ、サシャープその残りの軟体生物も食べ物だろ?」


 とムドウが言うと隣のロードのところに物凄い健康食品が回って来た。




「苦業打勝薬葉……いただこう」




 そのどこの世界の葉っぱか知らないが、ロードは臆することなく、むしろ歓迎するように頬張って食べた。本当なら口に入れた瞬間不味さが何日も残るが、ロードだけは平気なのだ。もっと凄い物を日頃から食べていることもあって。


健康になること、生命力が上がること間違いない。




「これ食べやすくて好きなんだ……ミハニーツ覚えててくれてありがとう」




 子供達はあり得ない物を見るような顔になるも、ミハニーツだけ照れたように顔を背けた。それでも、皆はロードが笑顔で食べる姿に満足した。


 そして、また楽しく会話をしながら食事を続ける。ロードを元気づけようと明るい話に切り替えてだ。




 ロードにとって、その心遣いが何よりの励みだった。


(これがミハニーツの言っていたオレたち家族の在り方か)


 青年ロードはそう思った。










 彼等の居る、色合界・ガークスボッデンのいずこかに、その暗い影が忍び寄る。


 不吉をもたらす暗い影が。



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