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第547話 束ねる魂の剣道

 大魔王ボランデスカールは骨の根城と合体して巨人の姿に変貌した。


「グハハハハハハハハハハハハハハ!! これで万が一にも我が倒れることはなくなった!」


 禍々しい姿の髑髏の怪物。見る者を震え上がらせるだろう。


 だが、ロードにとってこういう状況は何度かあった。そのたびに逆境を奇跡の事象で乗り越えて来た。


 しかし、今回もそれに縋るつもりはない。何故なら彼は勇者なのだから。


「誰だーー!? 助けを求めるのは誰だーー!?」


 ロードにはある声が聞こえていた。タスケテタスケテとさっきから声がいくつも聞こえてくるのだ。


「グハハハハハハハ、この姿を見て現実逃避か? 無理もないが逃走しろ! 貴様は死ぬぞ」


 ボランデスカールの巨大な身体の一部分である腕が、バラけるように花が咲くように一本一本分離していった。


 数百の腕がロードに向かって伸びていく。ロードはそれを知って青い剣で空中に避難した。


(極体も最初の一撃も効かなかった)

(道の秘宝玉で出来ることは全てやった)

(あとはシルベに連れてくるように頼んだミハニーツを待てばオレは死なずに済む)

(また戦える。また生きられる。また強くなれる)


 その時、ロードは身体から力が抜けるのを感じた。そして空飛ぶ青い剣を手元から離してしまった。


(くっ――――急に頭痛が――)


 自由落下していくロード。今の頭痛に何らかの前兆、あるいは前触れを探る。


(何で急に頭が痛みだした?)

(さっきのハンマーの攻撃で当たり所が悪かったとか?)

(いや違う、それならその時に痛みが走るはず、今になって自覚症状が出るとは考えにくい)

(ならば何だ? どうしてこんなにも頭が痛い!?)


 ロードに迫る来る数百の腕。その一本がロードの足を掴む。


「極体蹴り!」


 掴まれた足を掴まれたない足の方で、骨の腕を折っていく。


 この時、

(フン、まだ力が残っていたか……あれだけ暴れたのにタフな奴だ)

 ボランデスカールはそう思った。


 青い剣ミチルがロードを迎えにやって来る。ロードは再び青い剣で空中を移動する。


「この手ならどうだ!」


 巨大な手がロードの進む軌道を遮った。そして、勝手とは言えミチルは刺突の撃を前に向けて飛ばす。


 ボランデスカールの手のひらに傷はつけられなかったが、爆風でロードの身体を後方へ吹き飛ばし、巨大な骨の手のひらを躱していく。


(どうしてこんなに頭が痛い)

(オレの身体はどうなっている)

(もう戦えないのか? ただ死を受け入れるしかないのか?)

(イヤだせっかく生き残ったんだ死んでたまるか!)


 その時ロードの頭痛は治った。


(――――!? 何だ頭が軽くなったぞ……さっきまで死ぬほど痛かった頭痛が消えた)


「閉じ込めよ!」


 ボランデスカールの数百の腕がロードを囲んで行く。ミチルは力を解除して落ちることで囲いの外へ出た。


 その時、ロードは耳にしたタスケテという声を、


(今の声はまさか――――そんなまさか――!?)

(だって相手は敵だぞ、そんなことがあり得るのか!?)


 その時、進撃してきた巨人ボランデスカールがスカルソルジャー軍を踏みつけた。


 タスケ――――多くの声が途切れた。そしてロードは違和感を覚えた。


(何故助けを求める。お前たちは話せもしないし、魔王の命令でしか動けないのに……さんざん人を殺めて来たのにどうして助けを求める)


 とにかくロードはスカルソルジャーの軍の元に降り立った。


 助ける為ではない確かめるために、


「オレはお前たちを助けない! ――――――つっ!!」


 その時ロードの死ぬほど痛い頭痛が起きた。


(そうか――オレが道を踏み外していることで道の秘宝玉が警告しているのか!)

(だったら今の逆のことを思えばいいじゃないか……)


「スカルソルジャー達、お前たちは何故助けを求める。さんざん人を殺めておいて、今更自分たちが助かろうと思ってるは何故だ!」


 その時、一体のスカルソルジャーから声が聞こえて来た。


 永遠の命に興味はないかと言われた。死にたくなかった。本当は不本意だった。


 確かに声を聞いたロード。


(どういうことだ? 永遠の命に興味? 死にたくなかった? 本当は不本意だった? まるで元は人間みたいな口ぶり――――)

(――――!? 元は人間なのか? まさか皆、大魔王に脅されてこの道を選んだのか?)


 ロードの予想は当たっていた。彼らスカルソルジャーの正体は元は人間で死の恐怖から逃げる為、永遠の命を授かったボランデスカールの配下だった。 


「だったらオレはお前たちを助ける! だから力を貸してくれ!」


 ロードの魂からの叫びだった。


 その魂の叫びにスカルソルジャー達は答えようとしていた。


 スカルソルジャー達は自壊していき。ロードに魂の生命力を渡していく。


(――――!? どういうことだ!? 我のスカルソルジャーの身体から核である魂が抜けて行き、あの勇者に向かって行く。それも一体や二体ではない。ここにいる50万以上のスカルソルジャー達の魂が集まっていく。これは不味い止めねば――――)


 ボランデスカールはスカルソルジャー達をその場の墓標に形を組み替えていった。しかし漏れる魂はどんどんロードに吸収されていく。


「極体も最初の一撃も通用しないかった。けれどこれだけの魂の力があれば大魔王、お前を倒せる」


 ロードは勝利宣言をした。


 青い剣に自分と受け取った魂の生命力の力を宿していく。そしてロードは青い剣によって飛んだ。


 それは魂に直接攻撃する刃。


「束ねる魂の剣道!」


 ロードの新しい技だった。


 数十万ものスカルソルジャーの魂が力となり、ボランデスカールの心臓部を突き抜けた。


「ぐおっ!!」


 ボランデスカールは巨大な骨の根城との合体を解いてしまうほど力を失った。


「行け! ミチル!」


 剣は飛んだ! その方向にはボランデスカールの本体がいた。


 そして剣がボランデスカールを貫いた。


「こんな攻撃また再生して――――!?」


 スカルソルジャー達はバラバラに崩れた。そしてボランデスカール自身も霧散化の煙を傷口から放出させていく。


「オレたちの勝ちだ!」


 ロードは堂々と宣言した。


「我が魔界化の悲願は虚構であったか……」


 その言葉を最後にボランデスカールは消えていった。


 そして、ありがとうとあらゆる魂に感謝されたロード。魂たちは本来あるべき場所に向かって行くのだった。


「終わった。やっと勝った」


 ふらつくロード。その身体を支えたのはシルベだった。


「よくやったよキミは……」


 シルベが賞賛の言葉をかけてくる。そして悟った。ロードの心臓はもう動いてはいなかった。


 それなりの極致の戦いだったのだ。


 そこでロードは深い眠りについた。


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