第542話 立ち向かう者たちは残らず死ぬ
最後の砦ホーウッド。
木材で組み立てられた街を召喚士シルベが走っていた。
この時、
(どこだーーどこにいるミハニーツさんは――)
懸命に彼女の姿を探すシルベだった。
◆ ◆ ◆ ◆
骨の根城・玄関広場。
「永遠の命に興味はないか? スカルソルジャーとして働けば生き残れるぞ」
ボランデスカールが心臓を突き刺され死を待つばかりのロードに提案して来る。
「だ、誰が魔物の味方になるものか……」
横たわり反抗的な態度を見せるロード。
「そうか、では骨と秘宝玉は貰っていくぞ」
ボランデスカールが足元にいるロードに骨の剣でとどめを刺そうとした。
その時、ボランデスカールは触手に絡めとられた。
「――――!!」
たかだか十本の触手だったがボランデスカールの強大な力は完全に止められなかった。
「ちから強い」
声を出した触手の持ち主の正体は宇宙人のグレイだった。
構わずロードにとどめの一撃を刺そうとするボランデスカール。
そこに横入りして来た者がいた。岩石人のゴンガだ。ゴンガの硬い岩の肌が、とどめを刺しに来た骨の剣を折った。
「ロードよ、最後まで戦うんだ。奴の言葉に耳を傾けてはいけない」
ゴンガが死を待つだけのロードに大魔王の言葉に耳を傾けてはならないことを言う。
「ああ、最後まで抵抗するさ」
ロードはにこやかに呟いた。
「おのれ、邪魔しおって――――!?」
その時ボランデスカールは引っ張られていた。グレイの触手を掴んだ昆虫人のビートルが強引に引き寄せていた。
「どうだ! このカブトムシの力を持ったこの腕力はーーーー!!」
ビートルはグレイの触手を引っ張り続けた。そしてボランデスカ―ルを引き寄せたが、
「フン、たかが虫の力よ」
ボランデスカールはグレイとビートルの元に飛び出した。正確には走っていく。
「「――――!?」」
「ふんぬーーーー!!」
ボランデスカールは手を手刀の形にしてビートルの腹を突く。
「ごはっ――――」
血反吐を吐くビートルは最後の力を振り搾って、ボランデスカールの腕を掴み折ろうとしたが、
「何がカブトムシの力だ。我が腕を折ることすらかなわんか」
もう一つのボランデスカールの手がビートルの顔を握り潰した。
ビートルは死んだ。
グレイはボランデスカールを絡めとっていた触手を解いた。だが、逃がしてはくれなかった。解かれた瞬間ボランデスカールは触手を掴み、グレイを引き寄せようとした。しかしグレイの触手はどこまでも伸びて引っ張る力を相殺した。
「動け!」
ボランデスカールがもう一方の手でクイクイとスカルソルジャーを呼び寄せると、グレイは後ろからの骨の剣の刺突で息絶えた。
「逃げろ……ゴンガ……殺されるぞ」
ロードが忠告する。
「お前は話すな。そこでじっとしていろ」
ゴンガが戦いの場に赴く。
その背中を掴もうとロードは手を伸ばしたが止められなかった。
その時、スカルソルジャーの一体がボランデスカールに襲い掛かる。
しかしその剣の攻撃もスカルソルジャーより硬い、ボランデスカールの骨は通用しなかった。
「――――何!?」
スカルソルジャーの身体を乗っ取った魂体のモエールが驚く。
「お前の力は眷属使魔をとおして見ていたぞ、確か別のものに憑りついて操る力だったな。ならばこうすればどうなる」
ボランデスカールはモエールの憑りついたスカルソルジャーをバラバラに分解した。
断末魔も上げずモエールは死亡した。
「うおおおおおおおおおおおお!!」
そこに突撃して行くゴンガ、体当たりでボランデスカールを吹っ飛ばした。
「ぐおっ!」
あばら骨がニ、三本折れたが、すぐにスカルソルジャーを使って再生する。だが、ゴンガはその再生時間を許さず続けて突撃して行く。
手で殴るそぶりを見せたボランデスカ―ルがゴンガを迎え撃つ。だがその拳は固いゴンガに激突することで折れた。
「――――!?」
「流石に岩の肌は厄介だろう!?」
体当たりしてボランデスカールを吹っ飛ばすゴンガ。
しかし、ゴンガの半身は今の一撃でえぐり取られた。
(バカな……岩をあばら骨が食べたのか?)
ロードが霞む意識の中、現場を目撃した。
「フン、何が岩の肌だ。こちらは鉄をも貫く眷属使魔を作り上げた。いまさら硬度の話をしてもこちらに軍配があるだけだ」
半身を無くしたゴンガが倒れる。
そして、ボランデスカールのあばら骨がゴンガの顔を食い破った。
岩石人のゴンガまでも死亡した。
(くっ――動かなければ――)
(人間が心臓停止しても動ける時間は数分程度)
(この命が尽きる前に奴を倒さないと)
事態の深刻さを理解したロードは立ち上がろうとするが、身体に力が入らず寝たきりだった。




