第52話 無限大に広がる異なる世界
レオリカン王国。
レオリカンの兵士たちは早速、街の整備に取り掛かっていた。
ロードらは誰の邪魔にもならないところで、竜と一緒に話をすることにした。
「アカ?」
「そう、身体が赤いからアカ。名前がないと不便だろ、嫌なら変えてもいい」
「まぁ好きに呼ぶがいい」
「じゃあ、アカ、さっきの話で出た無限大世界ってなんだ?」
「……無限にある世界をひっくるめて呼ばれる集合した世界のことだ」
「何言ってんだチュウ?」「伝わらんチー」「難すぎるチャア」
「気にするな。お前たちには関係ない話――」
「国の向こうとかじゃなくて、この世界とは別の世界の話か」
「ん? こんな辺境の田舎世界で異世界の話に乗ってくる奴がいるとはな……」
「本当にこことは違う世界なんてあるのか?」
ルロウが訊いていた。
「異なる世界は存在する。現に我のような竜をこの世界で見たことがないだろう」
「は、ははははははははははっ、聞いたか! 竜が、あの竜が別の世界はあるんだって言ってるぞ」
「チュ、チュウ」「別の世界チー?」「あり得ないチャア」
「なぁ!! 別の世界ってどんなところなんだ? こことは違うのか」
ロードがうずうずするように訊いていた。
「同じような世界もあれば、まったく違う世界もある。例えば……」
「待った!!」
「ん?」
「じ、自分で確かめに行きたいから話さないでくれ……」
「確かめにってどうやって行くつもりだよ」
ルロウが口を挟む。
「それは……ア、アカはどうやって別の世界からこの世界に来たんだ?」
「我ら竜には特別な力が複数あり、その中の世渡りという力で自在に世界を渡っている」
「竜の力……それじゃあオレには出来ないか」
「けど、本当に竜がいたとはな。あながち、おとぎ話とやらも史実に基づいてるのかもしれないなぁ」
「けど、一般的には竜はいないとされてな、どうして実在しないなんて言われてたんだろ」
「証明できないからだろう。竜は基本的に一つの世界に留まることはなく、すぐに別の世界に行ってしまう。だから、例え見かけて絵にしても竜を証明できる世界は少ないようだ」
「そりゃ、実物がいなきゃただの空想の怪物だからな……」
(けど、竜はいたんだ。それと……)
「別の世界か。行ってみたいな~~」
「ロードが子供に戻っていくチュウ」「でも、行ってみたいチー別の世界」「なら、アカに連れてってもらうチャア」
「そ、そうか! アカに連れて行ってもらえばいいんだ!」
「お前ら本気か?」
「だって行ってみたいだろ! 無限だぞ! 無限大に世界があるんだぞ! ルロウだって行ってみたいだろ……?」
「そりゃ、行けるのならー」
「そんなに行きたいのなら連れて行ってもいい」
「「「「ホントか」チュー」」」
「だが、一度別の世界に行ってしまったらここへは二度と帰ってこられない」
「「「「 !!!? 」」」」
「か、帰れないのか?」
愕然とするロード。
「まず、前提として世界は無限にある。しかし、どこへ行こうかと選んで好きな世界へ移動するのは至難の業だ。逆もまたしかり、行った先から元の場所に戻ってこられない」
「よくわからないんだけど~~」
「難しい話だろうな。とにかく行きたい場所は選べず、戻ろうにも帰り道を辿ることは出来ない」
「戻ってこられないのは困る」
「それじゃダメチュウ」「あきらめるしかないチー」「残念チャア」
「それがいい、別の世界と言ってもいい所ばかりではない。争いの絶えぬ世界や穢れに満ちた世界もある。この平和な世界に住むお前たちにとっては想像もつかないような悲惨な光景も広がっている」
「夢が壊れる話だな。お前が暴れたこの惨状よりも悲惨な世界があるっていうのか?」
「ある。特に悪なる物たちの居る世界はな……」
「悪なる物?」
「この世界では聞きなれないだろうが、俗にいう魔物だ」




