第514話 死から目を背けてはいけない
スカルワイバーンを始め、スカルソルジャーが撤退したことでロード隊の戦いは終わった。
「ホーウッドへ転移!」
シルベが叫ぶとそこにいた死体を含めた総勢約500名の戦士たちが帰還する。
▼ ▼ ▼
ホーウッド・砦入り口前。
ロード隊は全員、最後の砦の入り口に召喚された。
「お帰りなさいませ」
出迎えてくれたのはシスター・クレアだった。
「いや~~皆のおかげで結構倒せたよ。ありがとう」
シルベが怪我をした戦士たちにお礼を言う。
そんな中、ネバーロングの死体を抱えたロードが足を進める。
「早く医務室へ、まだ助かるかもしれない」
ロードは涙を流していた。
「ロードさん、その人はもう亡くなっています」
シスター・クレアが冷徹に事実を突きつける。
「まだ分からないだろ! 急ごう! デモンという者もまだ助かるかもしれないんだ! 最後まで諦めたらだめだ」
「ロード、その人は死んだんだ。死んだ人はもう生き返らない」
その時背後からハズレが近づいて来て言った。
「くっ――――おのれ~~~~」
ロードが膝から崩れ落ちる。そしてネバーロングを改めて見る。
「ちょいと調べてみるよ……」
シルベがネバーロングの心臓の音を聞こうとしていた。しかし心臓は止まっていた。
「ロード受け入れて、これが魔物と人間の戦なの」
スワンも近づいて来て言う。
「あ~~~~残念なお知らせだ。この人死んでるよ」
シルベがロードの聞きたくなかったセリフを言う。
「こっちにデモンがいる。埋葬しよう」
言い出したのはヴァーエンだった。
「こっちにはシーリアンの死体。真っ二つに引き裂かれておる。水の身体のせいか液体が抜けてしおれておるが」
神官のホートスが言う。
「名前が分からないが目出し帽の男も死んでいるぞ」
ムサロウが言う。
「こっちもよ。セイジって聖法使いが死んだわ」
雪女のユキメが言う。
「――――!? セイジが死んだ!?」
ロードは急いでそちらへ向かった。そして見た安らかに眠るセイジの顔を、蒼白の顔を、
「セイジ、セイジ、目を覚ましてくれ、オレに聖法のことを話してくれるって約束したじゃないか……」
セイジは呼び声に答えない。ロードは自分の生命力をセイジに渡した。
(頼む、生き返ってくれ、もう誰も死ぬところなんて見たくないんだ)
ロードはディホース、グレイド、ダン、盗賊団の面々の顔を思い浮かべてセイジを治そうとするが、
セイジはいくら生命力を受け取って怪我を治そうが帰って来なかった。
(そんな、嘘だ。こんなの嘘だ)
ロードは生命力を渡すのを自然とやめる。
その時グラスが歩いてきた。そしてロードの襟をつかみ思いっきり殴りつけた。
「――――うっ!」
「グラスさん!」
ドノミが注意する。
「なんて顔だ。まるでこの世の終わりでも見てるかのような顔してるぜ」
「グラス、今はお前に構っている暇はないんだ。皆を治さないと」
「死んだんだよ!!」
「――――!?」
「現実を受け入れろ、そして次の戦いに活かせ、またあいつらと殺し合いをするんだから、この舞台のリーダーらしい顔をしろ!」
「リーダーらしい顔?」
「そうだ! 俺たちは今の戦いで命のやり取りを知った。これでも臆して帰らない奴らが集まってんだ。リーダーのお前がそんなんじゃこいつらに示しがつかない! しっかり気を持って怒りを奴らにぶつけろ!」
「怒っているさ、けどこの人たちを治さないと……オレのせいで」
「テメーを責めんな! こいつらは自分で望んでこの戦いに参加した! その思いを侮辱してるぞお前は!」
「――――!?」
「オレが言いたいのは死んだ連中を弔おうってだけだ」
グラスはロードの襟から手を離す。
「……………………わかった」
ロードは気を取り戻した。
「さぁ、他に死者はいないかい? 早速埋葬しよう……」
シルベが手をパンパンと叩きながら発言する。
「こっちにもいる」「こいつも死んでるぞ」「くっそ魔物共め!」
こうしてロードは皆の死を受け入れて行った。
◆ ◆ ◆ ◆
とある国の骨の城。
玉座に座るのは大魔王ボランデスカール。
「敵戦力はざっと500人そのうちの50人は始末できた。こちらのスカルソルジャーの損失と同じくらいだな。しかし妙な連中の集まりだった様々な能力を使い。我が兵を倒していくとは、もしや異世界からの住人か?」
ボランデスカールには眷属使魔の見ている景色が見えていた。
「まぁいい、スカルワイバーンよ、そのまま我が城まで戻れ、帰還したのち戦力を整えて第二波を送り込む」
ボランデスカールは命令した。
次の戦いがロードたちを待っている。




